014:ピエロからのヒント

 ジャンケンに負けた処刑人Xは機械のように元の位置に戻って行った。


「ぅ……ぁ……ぁ……ぉ……」


 唸りながら戻る後ろ姿はどこか寂しげに感じた。その様子を見届けたキンタロウはホッとしたように息を吐いた。


「やったなモリゾウ! 凄かったぞ!」

「キンちゃん。ありがとうございます」


 キンタロウとモリゾウは手のひらを出しハイタッチをした。打ち合わせなしタイミングピッタリのハイタッチだ。


「モリゾウくんすごかったよぉ」とイチゴもモリゾウに近付き褒めた。

 ノリはマッチョポーズをモリゾウに向けてとった。


「あはは。2人もありがとうございます」


 ノリのマッチョポーズに愛想笑いで答えながらもしっかりと感謝を告げるモリゾウ。


 3人がモリゾウを褒めているところにピエロもゆっくりとステップを踏みながら近付いて来た。

 当たり前だがボドゲ部の4人は警戒した。しかしピエロはその警戒を解こうと優しく微笑んだ。

 逆にその微笑みが恐怖心を煽ったが、そのあとのピエロの言葉に警戒が解かれた。


「面白い勝負ができたので優しい♦︎優しい♠︎優しい♣︎私からヒントをあげちゃうよ~ん❤︎」


「ヒント?」とノリ以外の3人が首を傾げた。ノリはマッチョポーズを続けている。


「第6層でゲームに負けると死ぬのよ~ん❤︎だから赤いサイコロは6を出さないことをお勧めするわ~ん❤︎」


 ピエロの口から出たヒントはキンタロウたちに衝撃を与えるものだった。第6層のマスで敗北すると死ぬというものだ。

 衝撃で声が出ない状態の4人にピエロは狂気的な笑みを浮かべながら言葉を続ける。


「無事にゴール♦︎ゴール♠︎ゴール♣︎するのを楽しみに待ってるわね~ん❤︎」


 バイバイと手を振りながらマジシャンのようにピンク色の煙と共に一瞬で姿を消した。


 ピエロが消えたことを確認してからキンタロウは肩を下ろし口を開いた。


「ヒントというか……恐怖心を与えられた感じなんだが……第6層マジで危険すぎるだろ……」

「そうですね。他の層の情報も聞きたかったですが……赤いサイコロで6を出さないように祈りましょう」


 ピエロのヒントのせいでサイコロを振るのが怖くなる4人。このまま振らずにいれば死ななくて済む。

 しかし現実世界には戻れず、このマスからも移動できない。だからこそボドゲ部の4人は前に進むしか道はないのだ。


 そこでキンタロウが何かを思い出したかのようにノリに話しかけた。


「なぁノリ。またノリがサイコロ振ってくれよ! さっき赤も青も6だったろ? それなら確率的に6の目が出なそうだからさ。第6層だけはマジで行きたくねぇ。死にたくねぇ」

「おう。俺が振ろう。モリゾウもう少し休むか?」


 ノリは座り込んでいるモリゾウを気にかけた。しかしモリゾウは「次にいきましょう」と言いながら立ち上がる。


 ノリはその様子を見て『ダイス』と唱えた。

 ノリの目の前にはサッカーボールほどの大きさの赤いサイコロと青いサイコロが現れた。


「振るぞー!」と叫びながら右手で赤いサイコロ、左手で青いサイコロを持った。

 そしてテントのような天井に向かって思いっきり投げ飛ばした。サイコロはテントの天井に打ち当たりそのまま跳ね返るように落ちてくる。

 落ちたサイコロはコロコロと転がり重力に逆らえきれずに止まる。


 サイコロが止まる瞬間まで全員は祈った。


『赤いサイコロは6の目が出るな』と……。


 6面ダイスで6の目が出る確率は6分の1だ。先ほど6の目を出しているノリなら6の目が出ないはずだと全員が期待している。

 しかしその期待を無情にも裏切るのが人生だ。


 キンタロウは止まった目を見て「嘘だろ……」と絶望の一言をこぼした。

 イチゴも青ざめた表情をしている。


 ノリが投げたサイコロ。青いサイコロは6の目。そして赤サイコロも6の目が出ている。

 ノリも信じられない様子で6の目が出ている赤いサイコロを見続けた。


 するとボドゲ部の4人は赤と青の光に包まれた。


『第6層8マス』死のジャンケンバトルを勝利し次にワープするのは『第6層14マス』。

 第6層は死のゲームが待ち受ける層だ。


 瞬きほどの刹那の一瞬、キンタロウ率いるボドゲ部は『第6層14マス』にワープした。

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