005:目の前には道化師
目を開けるとそこには『神様が作った
「あいつは箱にいた可愛くないピエロ……」
キンタロウの第一声だ。何が起きたか理解できない様子で辺りを見渡している。
ピエロの肌は白く塗られ鼻は丸く赤い。大きなピンク色の靴を履いている。さらにはピンク色の髪の毛にピンク色の衣装。
くるくる回りながら手にした帽子からウサギを何匹も出している。マジシャンみたいだ。さすが道化師と言ったところだ。
そして金色の光に包まれて移動してきた場所は壁があるのかないのかわからない真っ白な空間だった。まるで印刷ミスのゲーム盤のように真っ白だ。
現実世界のどこかなのか、バーチャル空間なのか、異世界なのか、檸檬色の髪の少年たちはまだわからない。
ただわかるのは『ピンク色が際立っているピエロ』と『真っ白な空間』と……
「何だ、ここは」
「おい、説明しろよ!」
「ふざけるな帰せ!」
「降りてこいピエロ!」
「帰りたいよ」
『大量に集められた人間』だけだ。
老若男女問わず集められている。その全員がステージの上に立つピエロに野次を飛ばしている。泣いている人や怯えている人もいる。
そんな大勢の中、キンタロウはボドゲ部の仲間たちを探そうと振り返った。
なぜ振り返ったのかと言うとキンタロウの背後から甘い音色のロリボイスが聞こえたからだ。
「いててぇ……」
「イチゴ大丈夫か?」
キンタロウの後ろでしりもちをついているのはイチゴだ。イチゴに優しく手を差し伸べるキンタロウ。
その後ろでモリゾウが驚いた様子で立っている。倒れていたノリも同様に驚いた様子で立ち上がった。
幸いボドゲ部の仲間たちは全員離れる事なくここに移動してきたらしい。
「ここは……?」とモリゾウが疑問を口にしたのと同時にマジックを披露していたピエロが咳払いをした。
「これで全員♦︎全員♠︎全員♣︎揃いましたよ~ん❤︎ 私待ちくたびれちゃったよ~ん❤︎」
ピエロが持っていたシルクハットが一瞬でマイクに変わった。そのマイクを使いピエロは大勢いる人前で意気揚々と話を始めた。
全員が静かに耳を傾ける。野次を飛ばしていた人たちも怯えていた人たちも全員だ。
「『神様が作った
拍手を要求したが誰も拍手をしない。シーンとした冷たい空気が流れていく。
「は~い。パチパチパチパチ!」
この空気に耐えられなくなったピエロは自ら拍手をした。そして口でも拍手音を出した。
「そして『神様が作った
ステージを歩き回りながら慣れたように喋るピエロ。
どうやらキンタロウたちと同じく『神様が作った
「人数も揃ったと言う事で『神様が作った
と次の瞬間、全員の脳に大量のデータが光の速度で流れ込んだ。情報処理しきれずに頭がパンクしそうになる。否、何人かは耐えきれずに倒れ、何人かは嘔吐。人がバタバタと倒れていく。
嘔吐した吐瀉物は不思議と白い床に吸い込まれるように消えていった。
そしてキンタロウも嘔吐し倒れている。完全に意識は闇の中だ。
筋肉男のノリは頭を押さえながら膝をついた。何とか耐えようとするが光の速度で流れてくる情報は自慢の筋肉ではどうすることもできない。ただ堪えるだけしかできないのだ。
小柄の美少女イチゴと頭脳派のモリゾウは耐えられずに倒れてしまっている。だが2人の意識はある。
そんな2人にノリは声をかける。声をかけなければ意識を失ってしまうほどギリギリの状態だからだ。
「だ、大丈夫か……? しっかり意識を……」
「うぅ……」
弱々しい声でイチゴが答えた。か弱いイチゴはもう限界だろう。
「なんなんですか……いったい……なにが……どうなって……」
モリゾウは必死に情報を整理しようとしている。だが頭脳派のモリゾウですら理解できない状況に苦しんでいる。
「あららら~。ほとんどの参加者が倒れちゃったわね~ん❤︎ピエロの私は優しいから1時間待ってあげるわ~ん。1時間後♦︎1時間後♠︎1時間後♣︎ゲームをスタートするよーん❤︎みんな頑張ってちょ~だいね~ん! ルールは頭の中に入ってるから大丈夫だよね~ん。理解できなかったらそれまでね~ん。ゴールをするの楽しみに待ってるわよ~ん❤︎」
ピエロは説明を終え丁寧にお辞儀をした。そんな終わりを感じさせるお辞儀をした後にマジシャンのように一瞬でピンク色の煙と共に姿を消した。
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