第9話 「 鏡の前で 」
休日外出するともなると、彼女は念入りに化粧を始める。さっきまで寝ぼけまなこだったのに、鏡の前に座る彼女はいつになく真剣にもう一人の自分と対峙している。
「もう、大概にしとけよ。遅くなるぞ」せっかちな私が時計を気にしつつそう言っても、彼女はもはや聞く耳を持たない。こうして私はあと小一時間待たされる羽目になる。
ブッ・・・。その時、背後で聞き覚えのある音がした。私は振り向いて彼女に言った。
「今、ヘ、ふったろう」
彼女は黙って、振り向かない。しかし鏡に映る彼女の目はいじわるな私の方をにらんでいる。
「さ、出かけるぞ」私がそう言うと彼女もやおら腰を上げた。
いい休日になりそうだ。
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