第56話
「ホッセイ……スイセンのところへ?」
『ホッセイ』は現在メージスと戦争中の国の一つだ。
「はい。スイセンの動きから、彼はホッセイの間者であった可能性が高いです。
であれば、ホッセイは勇者様のことをすでに知っているはず。
協力関係は向こうにとってメリットです」
「確かに……スイセンの話が本当だとすれば、待遇も良いらしいしな」
「人間ですからね……そのあたりはあまり信用しない方がよろしかと」
トヨワさん、もしかして人間嫌い?
「待ってくれ。
メージス本国が動く可能性はかなり低いぞ」
エイハンが言う。
「そうなんですか?」
「あぁ。エフラン、それからボーダーもそうだが、非常に貪欲だ。
彼らが自分の手札を本国にすぐ連絡するとは思えない。
もちろん100%とは言えないが……」
あ、様がない。
どうやらエイハンの愛国心も無くなってきたようだ。
「それでも、エフランの軍は確実にこちらを追ってきます」
「どちらにしろ、ホッセイに協力を仰ぐのは良さそうですね。
ここからどれくらいの距離なんですか?」
「1週間もかからないだろう」
「え!? そんなに近いんですか?」
たしかに、スイセンもここからなら逃げ切れるとか言ってたからな。
「あぁ。そもそもゲート周辺は基本的に国境だ。
だれも住めないからゲートが国境線になっている場合が多い。
だから、エフランの軍隊がくるとしても、ギリギリ間に合うと思う」
なるほどな。
そういうことか。
「決まりですね。
ゲートを破壊しながら北へ進む。
廃村があれば拠点かしながらホッセイを目指しましょう」
□□□
「ではそちらは頼みました」
「あぁ、任せてくれ」
俺はエイハンと二手に別れる。
エイハンたちは魂兵10体を連れて、新しくきた兵士や元奴隷の家族をスクシン村に連れてくる。
そして、俺とトヨワさん、残りの魂兵は北へ向かう。
スクシン村の兵士たちも手伝いたいとのことだったが、正直戦力としてはそれほど期待できない。
それよりも、村で奴隷が回す謎の棒を回してもらっていた方が、魂効率が良い。
悪いが村で待機してもらおうと思っていた。
「あの、私たちはホッセイ出身でございます。
もう十年以上前のことで、街の様子などは変わっていると思いますが、それでもお役に立てると思います」
元奴隷の人だ。
「それは心強いですね。
案内をお願いできますか?」
「もちろんです」
「お、俺も……」
ホッセイ出身の元奴隷二人に同行してもらうことになる。
□□□
ズシャッ!!
ほどなくしてゲートを発見する。
久しぶりにゲートを破壊できる。
やっとだ。
20体以上の魂兵がいるので、ゲート周辺の魔物は余裕だ。
魂兵が不眠不休で倒してくれる。
いずれもレベル2であるため、メージスの一般的は兵士より強い。
そして、剣兵、槍兵のレベル2が次々に魔物を倒していく。
魔法兵(炎)は待機だ。
大物が出てこない限り炎魔法を使う必要もない。
「こっちで合ってますかね?」
「はい……おそらくですが、あの丘を登れば付近が見渡せます。
そうすれば位置関係がはっきりすると思います」
ここから登っていけばいいんだな。
「よし、どんどん進もう」
俺は魔物を倒しながら進む。
俺やトヨワさん、魂兵たちが魔物を倒し進むスピードと、元奴隷の人が進むスピードはほぼ同じだ。
「ホ!! ホホー!!」
再びゲートだ。
魂効率が上がるのは嬉しいところだな。
□□□
「やっぱりだ。思った通りです。ここから北に向かってください。
山間を少し西にそれると、村だったところがあります」
「おぉ、それはありがたいですね」
廃村があれば『帰還魔法陣』が設置できる。
中継地点としてありがたい。
「さらに山間部を北に進みます。
道が悪くなるんですが、ひらけたところに関所があるんです」
「関所……ですか」
関所の扱いはどうなるのだろう。
廃村と同じならいいのだが。
「それから、ホッセイからは離れますが、少し東に逸れると古城があったと思います」
「本当ですか!?」
「はい、俺たちが奴隷になる前から廃墟になってました。
国境は戦争が多くあったし、魔物も出るようになって何十年も前に破棄されたようです」
「行きましょう!!」
古城が拠点化できるのであれば、最優先で押さえる必要があるな。
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