第51話
「これは……?」
「あー……多分押して回すんだと思います」
俺は棒の一本を押してみる。
ゴリゴリゴリ……
奴隷が回す謎の棒は音を立てて回る。
俺一人だと結構な力が必要だな。
棒は何本もついているから、複数人で回すものだよな。
「そうやって回せばいいのか?」
「はい……多分……」
しかし、これを回したところで何か意味があるのだろうか……
ん?
あ、台座だ。
拠点化したことで、スクシン村に台座が出現している。
俺は台座に近寄ってみる。
【人間が回す必要があります】
ん?
人間て?
俺も人間ですが?
「あの、みなさん!! その棒、回していただけませんか?」
「わかった!!」
エイハンが指示を出し、自らも棒を回し始める。
ゴリゴリゴリ……
あの棒はなんの意味があるんだ?
電力を発電できるわけじゃないだろうし……
「あ!!」
魂 3518
魂 3519
魂 3520
増えてる!!
魂が増えてるぞ!!
「どうした?」
エイハンがこちらに駆け寄ってくる。
「これです!! これを回すことで食料を生産できますよ!!」
「なに!!」
魂を増やすことができれば食料を生産できる。
彼らには食糧生産のためと言っておこう。
「どういうことだ?」
「俺はゲートを破壊したエネルギーで食料を生産しています」
「そうだな」
「あの棒を回すことでエネルギーが蓄えられるんです」
「なるほど!! これならば我々も役に立てるということだな!!」
「はい!!」
エイハンの目が輝きだす。
「おいみんな!! あれを回せば食料が生産できるそうだ!!」
「おぉ!!」
すごいな。
疲れもあるだろうに、みんなやる気に満ちている。
ここにいる人間は、下民と元奴隷だ。
彼らは頑張ることに慣れているのだろう。
俺はやれることを確認しないとな。
再び台座を見る。
拠点 Lv2 : 30000
井戸 Lv1 : 500
畑 Lv1 : 100
小屋 Lv1 : 500
おぉ……
拠点化すげぇ……
この村にいろいろ作成できるってことだよな。
「エイハンさん!! 来てください!!」
「どうした!?」
エイハンはすぐに駆け寄ってくる。
「あの棒を回すと、食料だけでなくこの村に井戸や畑などを作成できるようです」
「なに!?」
「それは素晴らしいが……」
「どうします?」
俺はちょっと微妙だと思う。
「これからすぐに拠点を移す予定だ……やめた方がいいな」
「俺もそう思います」
井戸や畑を作ってしまった場合、メージス軍の拠点となってしまう。
廃村を中継地点にされてしまうと、不利になるだろうからな。
「とりあえず、食料や水を生産し、しばらくここで生活をしてもらいます。
そして、ある程度兵力が整ったらどんどん東に向かい、最終的には東の村を拠点化しましょう」
「そうだな」
しかし、こんなかたちで魂を得られるとは……
メージスの身分制度には不満を持つ人間は多いはず。
多くの人間を仲間にできれば、魂の獲得量も爆発的に増えるだろう。
□□□
俺は遺跡に戻ってきた。
あれ?
おかしい……
遺跡に戻ってくると、いつも最初にやることがある。
『帰還魔法陣』の設置だ。
忘れると大変だからな。
しかし、『帰還魔法陣』が設置できないのである。
【帰還魔法陣は設置済みです】
マジか。
拠点化したことで、俺一人なら魂の消費なしに行き来できるようだ。
「どうでした?」
「拠点化はすごいですよ……」
俺はフェリスさんとトヨワさんに説明をする。
「素晴らしいですね」
「なるほど。伝説通り、勇者様が多くのものを導くということですね」
まぁ結果的にはそうなるな。
魂の獲得量が上がるのは歓迎だが、多くのものを導くって言われてもピンとこないな。
□□□
3日後。
「なにやら騒がしいですね」
トヨワさんが言う。
「そうですか?」
遺跡には分厚く大きな扉がある。
向こうから大声で起こされたことはあるが、結構大きな音でなければ聞こえない。
「トヨワさんには何か聞こえるんですね?」
おそらくトヨワさんは、普通の人間よりも感覚器官が鋭いのだろう。
そして身体能力も高い。
「はい。内容まではわかりませんが、話し声もしています」
「こちらがいなくなったのを認識した可能性が高いですよね」
「だと思います」
いよいよ村の移動を考えなければならない時期になってしまったようだ。
「では移動の準備ですね」
フェリスさんが言う。
「………………」
「勇者様?」
「そうですね……エイハンに確認したいことがあります」
□□□
俺は単独でスクシン村にきた。
少し離れた廃墟でエイハンと話をする。
「どうした? 何か動きがあったか?」
「単刀直入に聞きます。
エイハンさん……あなたは、メージスと戦う意志がありますか?
彼らを……殺すことができますか?」
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