第6話

ドンドンドン!!

分厚い石の扉から大きな音がする。


「おい!! さっさと起きろ!!」

そうだ。

俺は異世界に召喚されたんだ。


ここが異世界であることに気づくまで、数秒かかる。

ヤツらはここに入ることができないので、大声を出してこちらに呼びかけている。


「おい!! さっさとしろ!!」

「は、はい! ただいま」

フェリスが答え、俺たちは扉を開ける。


「グズが!!」

ドゴッ!!

俺は兵士に頭を打たれる。


「今日はボーダー兵士長が来るまでに、ゲートを四つは破壊するぞ」

マジか。

だいたい今何時なんだ?

どれくらい寝れたのだろうか。


「返事ぃ!!」

バシッ!!

今度は平手で頬を打たれる。


「はい!!」

クソが……ボーダーだけではなく、兵士たちもクソだな。

見てろよ……魂さえ集まれば……


ガッ!!

兵士に髪の毛を掴まれる。

「おい、次から一度の呼び出しで応じろ」

「はい」



▫︎▫︎▫︎


ズシャッ……

本日一つ目のゲートを破壊する。

昨日よりもかなり身体が軽い。

『肉体強化』のおかげだ。


「次に行くぞ」

「はい」

休憩無しで次々にゲートを破壊させるつもりだろう。


▫︎▫︎▫︎


ズシャッ……

本日4つ目のゲート破壊だ。

疲労が溜まってきたが、順調に破壊できている。

この兵士たちはクソだが、周囲の魔物を殲滅してくれるのはありがたい。

1人で全ての魔物を殲滅しつつゲート破壊をするのは、今の『肉体強化』レベルでも厳しいだろう。

そして、昨日よりも兵士の動きが把握できる。

俺自身の強さが、兵士に近付いているためだ。

予想ではあるが、『肉体強化』レベルを10程度にすれば、一般兵くらいの強さになりそうだ。


「よし、ボーダー兵士長に報告だ」

あのクソ野郎のところへ行くのか……


▫︎▫︎▫︎


昨日いくつかゲート破壊した周辺までやってきた。

遺跡付近だ。

なにやら、人が多くいる。

兵士ではないな……


「来い!!」

首の鎖を兵士に引かれる。


ボーダーの前に行くと、兵士がビシッと直立する。

「おい、貴様は跪け」

「はい……」

ボーダーを前に、俺だけが跪く。


「報告いたします!! 本日4つのゲートを破壊しました!!」

「でかした」


「ボーダー様、まさかその者たちは……?」

「そうだ。ここを領地として住まわせることになった」

領地として住まわせる?


「おぉ!! おめでとうございます!!」

「おい、エルフよ。お前にも褒美をとらせてやろう。何か必要なものはあるか?」

「ありがとうございます」

フェリスはボーダーにお辞儀をする。

ここの領地をボーダーが任されたってことか?


「では、移動用の馬車をお願いします。

 この調子でゲート破壊ができれば、数日で周囲のゲートは無くなります。

 馬車での移動が可能になれば、さらに遠方のゲートが破壊でき、ボーダー様の領地を拡大できます」

「なるほど……悪くない案だ。しかし、まずはこの領地で安定をはかるべきだな」

ボーダーは顎に手を当て考えている。


なるほどな。

領地の獲得か。


そして俺としても、今後の移動用に馬車があったほうがありがたい。

すでに8つのゲートを破壊している。

移動がスムーズにできた方が効率が上がる。


「発言の許可をいただけますでしょうか」

俺は跪きながら言う。

殴られる覚悟だ。


「なんだ?」

「ボーダー様のご指示でゲートを破壊した結果、小麦の他にイモを収穫することが可能になりました。

 領地経営に必要がございましたら、ご指示いただけると幸いでございます」

嘘だ。

イモは最初から獲得できる。

しかし、ゲート破壊が進むとボーダーにとってもメリットが大きいと理解してもらう必要がある。


「ほぉ……貴様、どうやら1日で自分の立場を理解したようだな。

 良いだろう。

 ゲート破壊の効率が上がれば、我が領地の利益も上がりそうだ。

 よかろう。では馬車をよういしてやろう」

よし、馬車ゲットか!?


▫︎▫︎▫︎


遺跡の扉へとやってくる。

「勇者様、本日は素晴らしい対応力でした」

フェリスが褒めてくれる。

「いえ。フェリスさんが馬車についてボーダーに言ってくれたからです」


「このままこちらが有利になるように話を進めましょう」

「ですね。魂さえ上手く使いこなすことができれば、この状況を打開できそうです。

 まずはイモですね」


俺は『食糧』の『イモ 5』をタップする。

16回ほどタップし、魂を80ほど消費する。


『魂 1494 / 毎時魂 80 / ゲート破壊数 8』

4つのゲート破壊、それから時間も経過しているので魂が溜まっている。


魂80分の種イモだが、一度で運べないくらいの量がある。

とりあえず扉の外に俺とフェリスで持てる分を持っていいく。


「もう一度生産しますので、しばらくお待ちください」

俺は兵士に生産まで時間がかかると言う。

これも嘘だ。

すでに生産してあるが、魂の使い方についていろいろと試す時間が欲しい。

そして、さっさと部屋に戻る。


「よし、一日でかなりの魂を獲得することができたな。

 時間稼ぎもできたし、いろいろと試してみようと思う」

「はい!!」

フェリスもやる気満々である。


「まずは、調理室ですね。カピカピのパンひとつじゃやってられません」

「調理室!? そのようなことができるのですか?」


「みたいですね。まずはやってみましょう」

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