おあずけ勇者 〜未熟な勇者はエルフの秘部に触れると死ぬらしいです〜

橋下悟

第1話 ★

「あ、あの……」

金髪の美少女はスカートをたくし上げる。

今、俺の目の前には、純白のパンツがある。


「こ、これで良いでしょうか」

少女は片手でスカートをたくし上げたまま、もう片方の手で恥ずかしそうに顔を覆う。

「いや、ダメです。顔は隠さないでください」


「え……でも……」

彼女は顔を手で覆ったままだ。

「ダメです」

ここは俺も引かない。

絶対に引いてはならないのだ。


「わかりました……」

少女を顔を覆っていた手をどけ、ぎゅっと握りしめる。

特徴的な尖った耳、エルフの耳の先まで顔を真っ赤にし、目を伏せる。


「あの、ちょっとこっち見てくれません?」

俺は彼女の目をまっすぐ見たまま言う。

「えぇ!?」

彼女は相変わらず顔を真っ赤にしたまま、少し大きな声を出す。


「むりむりむり!! 無理です!!」

しかし、彼女は俺に目を合わせてくれない。

「なんで?」


「な、なんでって恥ずかしいじゃないですか!?」

彼女は目を逸らしたまま言う。

「いやだって、さっき協力しないとこの状況を打開できないって言ってたじゃないですか」

俺は彼女に協力しているだけだ。

決してやましい気持ちなど……がっつりあるな……


「だけど……」

「さ、早く!」


「うぅ……」

彼女は観念したように、俺と目を合わせる。

美しく整った顔。

彼女のおおきな目は猫目というのだろうか、少しだけ釣り上がっている。

その猫目が、恥ずかしさのあまり潤んでいる。

そして、俺と彼女の見つめ合う間には、大きな膨らみがある。

「おぉ……素晴らしい……」

俺は彼女と目を合わせた後、再びスカートの中を見る。


「あの、それ以上近づくと危険です」

「くっ……」

目の前には絶景がある。

しかし、触れることはできない。

異世界人である俺が、彼女に触れると死んでしまう。


クッソォ!!!!

生殺しではないかぁ!!!!

触らせてくれぃ!!!!

触らせてくれぇえぃ!!!!


俺は自らの手でことを納めようとする。


「あ! あの魔法陣を狙ってください!!」

「わかってます!!」

せめて目の前のパンツに意識を集中させてくれよ。


俺は魔法陣へ向かってフィニッシュする。

魔法陣へ向かってだすと、魔法陣が光を放つ。


「出ます! 最初の兵士です!」


魔法陣から1mくらい戦士が出現する。

ハニワのような顔だ。

「こいつ?」

「はい!」


すっげぇ弱そうなんだが……

こんなんであいつら倒せるのか?


▫︎▫︎▫︎


数日前


朝起きると、おかしな景色が広がっていた。

古めかしいレンガ造りの壁に、薄暗く高い天井。

光る魔法陣の上にいる俺。

銀ピカの鎧兵士に豪華な服を着たおっさん。

そして、金髪のエルフ。

そう、あの特徴的な耳はエルフだ。


「おぉ!! 出現したぞ!!」

豪華な服を着たおっさんが偉そうに言う。


「ほぉ……」

銀ピカの鎧を着たデカイ男が言う。


「……………」

金髪の少女はこちらを見て沈黙している。


「へ?」

俺はわけもわからず、変な声が出る。


「召喚は成功しました」

金髪の少女は豪華な服を着たおっさんに言う。


「そうか、でかしたな。では、兵士長よ」

豪華な服を着たおっさんが、銀ピカの鎧に言う。


「はい。まずはこのエルフの言っていることが本当なのか、確かめて参ります」

銀ピカの鎧は、豪華な服のおっさんに頭を下げるとこちらに来る。


「ちょっと、なんですかこれ?」

俺は当然の質問をする。


バシンッ!!


頬がジンジンとする。

いたっ!!

打たれたのか!?


「誰が口を開いて良いと言った!」


口の中が切れたのだろう。

血の味がする。


ガチャッ!!


俺はデカイ鎧に鉄製の首輪をつけられる。


「来い!!」

鉄製の首輪には鎖がついており、グイっと引っ張られる。


「返事ぃ!!」

「は、はい!!」

クソ!!

なんてこった!!

これ、異世界転移だよな……?

多分、ハズレのやつだ。

最悪だ……


▫︎▫︎▫︎


俺は裸足のまま、鎖に引っ張られて歩いていく。

さっきの建物は遺跡だったのだろうか。

古い建物を後にすると、豪華な服を着たおっさんたちはどこかへ帰って行った。


「………………」

俺は、このクソ鎧と数人の兵士と思われる連中、それから金髪エルフと一緒に荒野を進む。

裸足で外など歩いたことがないので、すでに足が痛い。

しかし、こいつらは有無も言わさず俺を連れ回す。

状況がわからず質問しただけでぶっ飛ばされたのだ。

足が痛いなどと言ったら、ぶん殴られてもおかしくはない。

黙って歩くしかないのだ。


できるだけ現状を把握しよう。

おそらく豪華な服を着ていたおっさんが一番偉いやつだろう。

そして、この鎧がその部下、兵士長ってところか。

あのエルフは兵士って感じではないな。

どちらかというと、魔道士だ。

ローブを着ている。


状況だけで判断すると、俺はあのエルフに召喚されたっぽいな。

さっきまでいた遺跡は、召喚に必要な場所だったのか?


ザシュッ!!


そして、さっきから黒紫色をした獣がこちらを襲ってくる。

モンスターだろうか。

それを兵士長の部下っぽい兵士たちが片付けていく。

モンスターは兵士に切られると、霧のように消えていく。


「あったな……おい!」

兵士長が俺の鎖をグイっと引っ張る。


「はい」

ガラン……

俺が返事をすると、地面に剣が投げられる。


「それを使って、あのゲートを切ってみろ」

「ゲート?」


ガシッ!

俺は頭を鷲掴みにされる。


「あれだ、見えるだろ?」

強引に向けられた視点の先には、直径50cm程度の黒紫の球体のようなものが宙に浮いている。

「はい……」


「いけ!」


ガスッ!!


俺は尻を蹴られ、前に出る。


とりあえず言われた通りにしないと、何をされるかわからない。

俺は剣を握り、持ち上げる。

結構重い……


「グズグズするな!!」

「は、はい!」


俺は黒紫色の球体に向かって剣を振り下ろす。


ブンッ!!


ザシュッ!!

切れた感覚がある……


「おぉ!!」

兵士たちがざわつく。


「おい、続けろ」

「はい」


ザシュッ!!ザシュッ!!ザシュッ!!


俺は何度も何度も球体を切り付ける。

剣が重い……


ザシュッ!!ザシュッ!!


「何をグズグズしている!! もっと切りつけろ!!」

兵士長に怒鳴りつけられる。

クソ……

いきなり連れてこられてこれかよ。

「は、はい!!」


ザシュッ!!ザシュッ!!


「はぁ……はぁ……」

「何をしている!! 誰が休んで良いと言ったぁ!?」


ザシュッ!!ザシュッ!!


クソ……体力が……


ザシュッ!!ザシュッ!!


なんなんだよ一体……


ザシュッ!!ザシュッ!!


ブワン……


何度も切り付けると、黒紫色の球体が消える。


「おぉ!! 消えたぞ!!」

兵士長が大きな声を出す。

これで解放されるのか?


「おい、フェリスとか言ったな」

「はい……」

兵士長がエルフに言う。

あのエルフはフェリスというのか。


「お前の言ったこと、本当だったな。それで、この後はどうすれば良い?」

「はい、ボーダー様。先ほどの遺跡で、この者だけが扱える部屋があります」

フェリスが兵士長に言う。

どうやら、あの銀ピカ鎧のクソ野郎はボーダーというようだ。

それにしても、さっきの遺跡に戻るってことか?


「なるほど。よし、戻るぞ!!」

再び鎖をグイっと引っ張られる。

あのボーダーとかいう鎧野郎、すごい力だ。


▫︎▫︎▫︎


「はぁ……はぁ……」

「おい!! さっさと歩け!!」

クソ……

さっき剣を振り回したばかりだろ。

すでにヘトヘトだ。

さらに素足で硬い地面を歩き続けている。

ジンジンと足の裏が痛む。


こいつらは鎧を着込んでいるのにもかかわらず、ほぼ疲れていない。

モンスターがいるような世界だ。

おそらくこいつらは現代日本人より身体能力が高いのだろう。


俺はヘロヘロになりながらも、先ほどの遺跡に到着する。

「この扉です」

フェリスが大きな扉の前で止まる。


「ここに手をかざしてください」

俺に言ってんのか?

他の兵士たちとは違い、フェリスは俺に敬語を使う。


「おい! 聞いているのか!? さっさとしろ!!」

ボーダーが怒鳴る。

やばい……またぶん殴られそうだ。


「はい……」

俺はフェリスの言うとおり、扉の前に手をかざす。


ガガガ……


扉は淡い光を放ち、ゆっくりと開き出す。


「こちらは、我らエルフ族とこの者しか入ることができません」

「何ぃ!?」

ボーダーがフェリスを睨みつける。


「本当か……?」

ボーダーが扉の向こうへと手を伸ばす。


バチンッ!!


大きな音が鳴り、ボーダーの指先が光る。

ボーダーは顔を歪め、手を引っ込める。

「どうやらそのようだな……」


「はい。では、この者を連れ、中へ入ってまいります」

「いいだろう。行け」


「こちらへどうぞ」

フェリスは俺の方を向き、扉の中へ入るように促す。

さっきすげぇ音したけど、俺は大丈夫なんだよな?


俺は恐る恐る中へと入る。

大丈夫だ。

本当に俺は入ることができるようだ。


ガガガ……


フェリスも入ると、扉が閉まる。

扉が閉まると、中に10畳くらいの部屋になっている。


「勇者様!! 申し訳ございませんでした!!」

振り返ると、フェリスが土下座をしている。


へ?

勇者?

どういうこと?

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