烏とマリア

あしゃる

プロローグ

 わたしの記憶の一番底にあるのは、お父さんの泣き声と、ざく、ざく、という何かを埋めている音だった。わたしはお父さんの背に抱かれ、身動きもできず、何も見ることもできなくて、ただその音を聞いているだけだった。やがて、何かを埋め終えた後、お父さんは私を背からおろして、

 「ごめんね」

と一言だけ言った。そして、その何かを埋めた跡の、小さな山に花を置いて、お父さんはわたしを抱き上げた。

 二度とわたし達は、そこに訪れることがなかった。

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