27.武士の子

 ビュッと音を立てて、ヨシトシの拳が風を切る。

 一人を殴り、一人を投げ飛ばし、もう一人を蹴り上げた。


「ち、ちくしょうっ」

「覚えてろよー!」

「えーん、おかあちゃーん!」


 悪者どもは情けない声を上げて、逃げるように去っていく。


「すげーな、ヨシトシ!!」

「武者小路くん、すごーい!! 何か習ってたの?」

「幼少のみぎりより、武士である父の手解きを受けただけだ」

「え?」


 なんっだそのキメ顔……今、明らかに空手と柔道だったろ!!

 その設定はもう良いから!!


「ほ、惚れたか?」


 チラチラと俺を見てくるヨシトシ。

 だからなんでそこで照れんだ。


「ハァ、ハァ……ああんっ」


 え? なんかこっちが惚れちゃってね!?

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