トット

oira

0話

「くそ、くそ、くそぉぉぉぉ」

眼前には、黒い羽を広げた悪魔っぽい、いかにもそれっぽいラスボスが、

これまた、かなりテンプレな最後のおたけびを上げている。


「いやいやいや、これ以上くそは止めてくれ、、、。せっかくいい気分でステージクリアできそうだったのに。」

僕は忘れかけていた腹痛を思い出し、お腹を抱える。

― ぎゅるぎゅるぎゅる ―


「最終ステージクリアだスクン!みんなおめでとうだスクン!」

ゲームのイメージキャラクター『しずく』がいつも通りの笑顔で出迎えてくれる。


「元の世界に戻るんだスクンッ。

戻ってからも10分間は、グループでオープンチャットできるから、是非交流を深めるんだスクン。

IDの交換をするのもおススメだスクン。

それでは、しずくはここでバイバイだスクンッ。」

しずくが立ち上がり前足で手を振っている。


「もう限界だ。。。」

しずくの可愛さをもってしても、腹痛は緩和されないのだ。


ゲーム専用のゴーグルを外し、我に返ると、そこはトイレの中。

しっかりと諸々脱いで、座っている。

そして、いつも通り足が痺れている。


「ふうー。すっきりした。風呂に入って、ゆっくり寝よう。」


いつ頃かは分からないが、何故かこのゲームにログインして待機していると、たまにこのような異世界転生の現象が起きている。

最初の頃は夢かと思っていたが、気付いたらゲームの内容をしっかりと覚えているようになっていた。


風呂に入る男を背に、テレビ画面には、

『ステージクリア。後2トリートでレベル7に昇格』の表記。

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