第60話 【過去】女神の清算
勇者大樹達は、結局エルドマインで貴族になる道を選びました。
他の生き残った異世界人も同じでした。
女王となったマリンから地位と褒賞を貰い、エルドマインでの生活を選びました。
結果的に帰るかどうかの選択で『帰る』方を選んだのは理人という少年一人のみという事です。
死んでしまった異世界人の魂は、面談をし、それぞれの理想の世界へ旅立ちました。
元の世界に戻り、好きな神の元、輪廻転生の輪に加わる選択をした者はいませんでした。
希望で男女比1対5の世界や、獣人族しか居ない世界に旅立った魂もいます。
かなり要望を聞きましたし、先方の世界の神へ私から推薦状を送りましたから、きっと生まれ変わった先、幸せな人生を送れる事でしょう。
◆◆◆
私は、この世界に残った者に慈悲をかける事にしました。
神託を下し、勇者パーティに、この世界に残った異世界人、そしてマリン王女に王城の教会に来て貰いました。
そして、顕現しました。
『皆さん、お揃いのようですね! 勇者パーティの皆さんや異世界人の皆さんは、皆、素晴らしいジョブやスキルを私が与えました。ですが、魔王討伐が済んだ今、それらは必要ないと思います! 回収させて頂こうと思います』
「そんな……」
『これは神託です! 黙りなさい!』
私は神力を使い黙らせました。
『よいですか!? ただ、取り上げる訳ではありません! そのジョブやスキルと引き換えに、貴方達の体の治療を行います……その体では折角のジョブもスキルも宝の持ち腐れですからね……ジョブやスキルが平凡になったとしても五体満足で生活出来る方が幸せでしょう? それとマリン女王にも奪った寿命を御戻ししましょう』
これは五職全員と沢山の異世界人がこの世界に残ったからこそ、起こせる奇跡です。
全部のジョブとスキルを一般的な物に変えれば、差額の神力でこれが出来ます。
『続けます。王を蘇らせる事は出来ませんが、彼には次の人生が良い物になるように配慮します。これは、あくまで提案です。一人でも反対すれば今のままです……さぁどうしますか?』
結局、彼等はジョブやスキルと交換に体の治療を選びました。
『約束は守りました……それでは……』
私は再び神界に戻りました。
10年という月日、戦い続け傷ついたのですから、この位の慈悲は良いでしょう。
残りの人生は普通の人間として人生を全うすれば良いのです。
◆◆◆
大樹達勇者や異世界人の物語は多くは語られていない。
大いなるジョブやスキルを失った彼らはその後、大きな活躍をする事は無かった……そう言われている。
【過去 異世界篇 終わり】
※現代の理人の話、数話で完結予定です。
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