第29話 200億円
「俺が猛獣と戦う所が見たい!ふざけているのか?」
「亀岡流は非力なる人間が獣に勝つために出来た武道なんだろう?我々はそれが見たいんだ!」
馬鹿なのか?
そんな馬鹿な事やら無いよ?
時也と戦ってから1週間が経った。
本当に払われるか心配だったが、しっかりと俺の口座には5億円が入っていた。
税金を考えると半額以上はとっておかないとな…
だけど、これで一生分のお金は稼げた。
まぁ翔子と一緒に多少の贅沢をする位は出来る筈だ。
「俺になんのメリットも無い…やらないよ! それに師匠が出来なかった事を俺が出来る訳ないだろう」
確かに一緒に入院していたお爺ちゃんは亀岡象将だった。
だから、この際利用させて貰う事にした。
ネットによると身内も弟子も居ないのだから…問題無い。
僅かな期間とはいえ手ほどきを受けたんだ。
完全に嘘とは言えないだろう。
「それなら、南条財閥がファイトマネーを払いますから、お願いできないでしょうか?」
「払えるんですか?200億円!」
「200億円?!なんで、そんな金額になるんですか!」
「いや、ボクシングについて調べたんだけど、ヘビー級の最高のギャラがその位だったから…確かに興行という意味じゃ稼げないけど…ライオンや白熊の攻撃がマクドダイソンより弱い訳ないよね? こちらのリスクから考えてその位は欲しい」
「いや、幾らなんでも…それは」
「だったら諦めてくれるかな? 大体我が師匠である亀岡仙人が出来ない事を俺が出来る訳ないだろう? これは命の値段だよ!ライオンや白熊と戦ったら死を覚悟しなくちゃ戦えない…この金額が払えないなら諦めてくれ」
「そうですか…解りました」
この位言っておけば、もうこんな馬鹿な事は言い出さないだろう…
◆◆◆
「しかし、凄い話だね、まさかボクシングの世界王者の次はよりによって猛獣なんて…それでどうするの?」
「200億って吹っ掛けたからもう来ないんじゃないかな? この間5億円も手に入ったし、このまま翔子と爛れた生活を送っていくだけで充分だよ!」
「爛れたって…」
「翔子は俺にとって理想の彼女だし、毎日こうして抱き合って過ごしているだけで充分幸せだよ!」
ちゃんと高校には行っているが、帰ってきたら…まぁ、皆が思っている通りだ。
バンパイアとインキュバス…そのせいか『血』と『精』以外の関心が少なくなった。
異世界のバンパイアは此方とかってが違い、十字架もニンニクも関係ない。
ただ、昼間に比べて夜、大まかに5時過ぎると能力が上がる気がする。
「理人…うん、そう言われちゃうとね…私も、その好きだし、幸せだよ!」
そう言いながら、裸の翔子に押し倒された。
最近になって思う事がある。
インキュバスの愛や恋愛はイミテーションじゃない気がする。
最大の快楽と幸福感を相手に与えているようだ。
恐らく、普通の人間が努力の末手に入れる『モテる』という事を最初から完璧に持っている存在。
それがインキュバスやサキュバスなのかも知れない。
ただ困った事に…少し、いやかなり病んで来た。
部屋にあった『アダルトな本やDVD』は何時の間にか処分され無くなっていた。
代わりにその場所に最新型のスマホが置いてあり…
『処分して置いたよ!見たければ、同じ事私がしてあげるから、写真でも動画でも撮って良いからね! 』
そういうメモがあった。
一生遊んで暮らせるお金はある。
親には対面を保てるように学校へ通い…
あとは翔子とだらだら暮らすのも悪くない。
◆◆◆
「ハァハァ…200億円出せば、戦ってくれるんですよね!」
「まぁ…」
「孝蔵さまがそのファイトマネーを出すそうです!さぁ日時を決めましょうか?」
マジか…南条財閥…頭が可笑しいんじゃないのか?
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