第42話 ダルトンの復讐
宿酒場に帰った三人は、二階、奥の部屋に戻る。
「全くなんですかあの人は」
「もういいから小夜ちゃん」
小夜はまだ怒っていた。
「でも一泊だと言ったのに結局三拍になっちゃったね」
急に村の事を思い出して頭を抱える小夜。
「村に帰ったらおじいちゃんに私はしこたま怒られるでしょう」
「でも私たちは皇女ミリア様を救ったんだから、村長さんも許してくれるし、きっと褒めてくれるよ小夜ちゃん」
「そ、そうですよね」
主人が扉をノックし入ってくる。
「ここに居るのも今日が最後だし夕食は一階で食べていきなさい。酒場の喧噪を楽しんでくるといい」
一階に行った一同は奥のテーブルを案内される。もう料理がテーブルに並んでいた。
「うわチキンが丸ごと一匹そのままだよ」
守はももの部分をちぎってかぶりつく。酒を目当てに来ている大人達も席を埋め始めていた。
「町に辿り着いた時はどうなることかと思ったけど、毎日美味しいものが食べれて楽しかったね」
「そうですね。腹の立つこともありましたが、終わり良ければ全て良しです」
三人とも最後の日を噛みしめながら楽しく食事をした。テーブルの皿に乗った料理も少なくなり、周りを見ると酒場はほぼ満席になっていた。
そして酒場がどよめきだす。
盗賊のお頭だったダルトンが酒場に入ってきたのだ。皆の注目を浴びたダルトンは、酒場の皆に聞こえる声で「俺はもう盗賊は辞めたんだ。今は武器を持っていない。酒を飲みに来ただけだから気にしないで楽しくやってくれ」
客が帰ったばかりの四人テーブル席にドカッと座った。
そこはプリシラたちの隣のテーブルだった。
プリシラは小夜の方に椅子を寄せ、耳元で「ねえ小夜ちゃん。あの人誰なの?有名人?」
「あれは極悪人のダルトンです。盗賊の頭で人殺しは日常茶飯事です。ミリア様をさらったのもあの人らしいです」
「へーえ。見たまんまの悪党なんだね」
ダルトンはウェイターに強い酒とつまみを注文していた。
「おう。お前達まだ村に帰ってなかったのか?」
声の方を見ると鍛冶場のガトー親方が立っていた。
「ガトーさん。私達は明日帰るんです」
「そうか、村長によろしく伝えて置いてくれ」
「わかりました」
「俺は今日は久しぶりに酒場に来たんだよ」
「剣を打つのが忙しかったんですか?」
「いや。陛下に頼まれて、今度はドラゴンの炎に耐えられる盾を制作しなくちゃいけないんだ。だから俺の代わりに新型剣を打つ奴が必要になるだろ。ビトーに新しい剣の製法、打ち方を教えていたらもう深夜になって酒場が終わっちまうんだ」
「大変ですねガトーさん」
「まあ俺ほど優秀な奴がもう一人ぐらい居てくれたら俺の仕事も楽になるんだけどな」
ガトーは愉快そうに笑う。
「ああ、そういえばお前達、皇女ミリア様を救ったんだってな、俺のとこに来た兵士が話してたぞ」
酒を飲んでいたダルトンのグラスの手が止まる。
「やっぱり俺の見込んだとおりだったよ。お前たちは凄い奴らだ。どうやったら酷い化け物を人間に戻せるんだ?」
「うまく説明できないけど、あれはドゲムという嫌な奴の呪いだったんです。まあ、それを小夜ちゃんと頑張って何とかしました」
「俺は頑張ったところが聞きたいんだけどな。まあお前達にしかわからないこともあるだろう。それじゃあ俺は久々の酒を飲みに戻るわ。またな」
手を上げて自分のテーブルに戻るガトー。
すると隣のテーブルから「知っているのか?」
「は?」
「あの魔族の事を知っているのか?」
小夜とプリシラは極悪人ダルトンが話しかけてきたので身構える。
「おい固くなるなよ。別に取って食おうってんじゃないんだ。質問しているだけだ」
小夜はダルトンを指さして「いいえ。あなたは女の人にも酷い事をする人です」
ダルトンは肩をすくめて「それだけはデマだ。俺はたくさんの人間を殺してきたが女、子供に手を上げた事は無い」
小夜とプリシラは顔を見合わせる。
「とにかく俺はその魔族の話が聞きたいだけだ。黒い体で派手な法衣を着ている魔族だ」
「それはドゲムで間違いないわ。けれど、ドゲムに何の用があるんですか?」
「俺はそいつに酷い目に合った。俺は復讐がしたいのだ」
プリシラは野菜スティックを食べながら
「あなたなんか全く相手にならないと思いますよ。彼は特級魔族で魔王の参謀です。捕まって拷問されて、ミリア様の様に肉人形になりますよ」
プリシラは復讐を諦めて欲しくてダルトンを脅かしたのだが、ダルトンは身を乗り出して「俺には秘策がある。とにかく奴の居場所が知りたい。奴はどこに居るんだ?」
「私邸で人間を拷問しているか魔王城にいます」
「なんでお前がそんな事を知ってるんだよ?」
「私はあの辺りで暮らしていたので」
「なんで人間が魔界で暮らせるんだ?」
「お姉さんは魔王に育てられていたから魔界にいたのです」
ダルトンは呆れ顔をして「もういいや。奴は人間界にまた来る事は無いのか?」
「それはわからないわ」
「そうか」
プリシラは少し考えて「でも、私を生きたまま捕らえる事に彼は執着してたみたいだから、私が死んでいないことを知ったら私の前に現れるかも」
「お前達はどこに住んでいるんだ?」
小夜はプリシラが余計な事を言う前に「それは私たちのプライバシーで極悪人には教えられません」
「ああ、まあそれはそうだな。名前くらいは教えてくれ姉さん」
「私はプリシラです」
「よくわかった。あんたらとはまた会う事もあるかもしれねえな」
ダルトンは席を立ち去って行く。
小夜は「絶対ありません」
皆が話している最中、守は何回もウェイターを呼んで注文し、ずっと食べ続けていたのだった。
部屋に戻った三人は明日の早朝出発に備えて、早めに就寝した。
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