第24話 オヤナ村2

 三日三晩寝込んでいた娘は、窓からの入り込む日差しを眩しく感じながら目を覚ました。

「あれ?」

 城の石造りではない木造の家?

娘は上半身を起こすと自分の物ではない服が着せられていることに気づいた。たしか私はパーティドレスを着ていた。

 ベットを出て、少しふらつきながら日が差す窓に向かって歩いた。二階から外を見るといくつもの家が建っており、人が歩いているのが見えた。

 ここは人間の居住地?

 階段を見つけ慎重に降りていく。キッチンで老人が料理しているのが見えた。

「あのー」

 村長は振り向き、娘の魔族の右手に目が行くと少し緊張した。

「ああ目が覚めたんだね。よかった。気分はどうだ?」

「ここはどこなんでしょうか?」

「ここはオヤナ村だ。お前さんは村の入り口で倒れていたんだよ。来た時の事は覚えているかね?」

 娘は思い出そうとする。そうだ自分は塔の上から真っ逆さまに落ちてそこから記憶が全くない。

「おそらく誰かに運ばれてきたんです」

「運ばれてきた?どこから?」

「えーと、魔王城かな」

「魔王城?」ギョッとする村長。

「お、お前は魔族なのか?」

「え?なんで私が?」

 村長は娘の右手を指さす。

 娘は自分の右手を見て「なんなのこの手は?どういうこと?」

長袖をまくってみると魔族の右腕がある。

「あ、あれ?私の右腕はたしか無くなったはずだけど。なんで?」

 パーティで魔王に右腕を斬り落とされたことを思い出して、立ち眩みがする。

「ああ、まだ治ったばかりなのだ。無理をしてはいかん。今料理を作っている所だから、そこの椅子に掛けて待っていてくれ」

 調理が終わると村長はテーブルに料理を運ぶ。


 すると外から大きな声が聞こえる。

「おーい村長食い物を獲ってきたぞ」

 村長は娘に食事をするように言って外に出る。

「やかましいわ勇者」

 大きな熊を背負い引きずって運んでくる勇者。紐で縛った猪や兎を肩にかけて運んでくる守。山菜の入った籠を背中から降ろす小夜。

「えらいでかいのが獲れたな勇者」

 熊を降ろす勇者。

「早く解体しようぜ村長。熊の胆嚢を潰して寝込んでる姉ちゃんに飲ませたら目を覚ますかもな」

「いやいや、ついさっき目を覚ましたんだ」

「えー」

 驚く三人。

「姉ちゃん魔族だったのか?」

「いやよくわからん。お前達が直接聞け。あの娘、自分でも右手に驚いとったけどな」

「どういうことだ?」

 家の中の駆け込む勇者達。

 すごい勢いで料理を食べている娘。

「ああ私ってこんなにお腹が空いていたのね」

「おい姉ちゃんお前は魔族なのか?」

 直球で聞く勇者。

「こんなかわいい魔族がどこにいるのよ」

「なんだそれ?」

 うんうんと頷く守。

「ていうか君たち誰なの?」

「お姉さんよかった」

 抱き着く小夜。

「ああ、あなた。私が弱ってる時、あなたの癒しの力が私に元気をくれた。暖かくてとても心地よい光だった」


 その時、村長が家の中に入ってくる。

「結局その腕は何なのか説明してもらえないかね娘さん?それに魔王城から来たと言ってたね」

「ええっ」と子供達は驚く。

「あなたたちは私を助けてくれたし、とても悪い人達には見えない。私の事を話すけど、信じるか信じないかはあなた達次第です」


 今までの自分の事を全て話した。

「スゲー魔王城で暮らしてたのか姉ちゃん」

「お姉さんお姫様だったんですね素敵です」小夜は感激してる。

「人間の姫が魔王に育てられて、殺されそうになった?それは本当なのか?」

 村長は胡散臭そうに娘を見る。

「私もよく分からないんだけど本当の事なの。魔族の腕がどうしてくっついたのか、この村に誰が運んできたのかも私にも全然分からない」


「でも魔族と暮らせるなんて、お姉さんはよっぽど強いんだね」と守が言う。

「そんなことないよ。私のパパ、魔王ファザリスに守られていたから今まで生きてこられただけ。それに魔族の多くは私を嫌ってたんじゃないかな。いや、ほとんどの魔族は私を嫌ってた。理解してくれる友達も死んでしまったし、私はあの日、魔族の本性を知ったんだ」

 下を向いて悲しそうな顔をするプリシラ。

 手を握って娘をじっと見る小夜。

「お姉ちゃん元気出してください」

「ありがとう」


 プリシラはこんな年下の女の子に気を使わせてはいけないと気持ちを切り替えて

「私はプリシラ。あなた達のことも教えてくれない?」

「私は小夜ですお姉ちゃん。こっちが勇者くんと守くん」

 にっこりピースする勇者と、ぺこりと会釈する守。

「勇者?もう大陸には勇者は居ないんじゃないの?」

「いや名前だから」

「え?勇者ってあだ名じゃ無いのか?」

「今更何言ってるんだ守。俺の母ちゃんが勇者みたいになるように付けてくれたんだぞ。俺はよく知らないけどな」

「そんな名前つけるか普通?」

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