第7話
二人が歩いていると、美味しそうな匂いが前方から漂ってきた。
「……この匂い、ラーメンか?」
道なりを進むと一際明るい空間が見えてくる。匂いは段々強くなり空間に出ると、そこには屋台があった。
「は?」
「おお? お客さんか? ここに来れたのか! どうだ! 食ってくか?」
屋台から店主と思わしき人が現れる。一見比普通の人に見える店主の体には所々鱗がついており、更に目が縦長だった。
「は? いや、君は誰……」
「ダンジョンラーメン屋だ! とは言っても客はあんたが初めてだがな! らっしゃい! 俺は蛇人間のラッシュだ!」
「は、はぁ……」
ラッシュはお辞儀をして廣谷を飯に誘う。
「君は、モンスターでいいのか?」
「ああ、そうとも言う。だけど知能のない奴らとは違うから一緒にしてくれるなよ? ほら、お客さん、ラーメン食べてって!」
ラッシュはケラケラと笑いながら廣谷を招く。どうしようかと廣谷が考えていると、ぐうと廣谷とシロのお腹が鳴った。
シロは欲しそうに屋台と廣谷をうるうると見つめ、廣谷は「……分かった、食べるか」と少し項垂れながら頷いた。
椅子に座るとラッシュがドンッとラーメンを出した。
「ラッシュの一番飯、ダンジョン豚骨だ!! わんちゃんはこっち食べような!」
「……いただきます」
見た目はチャーシュー、煮卵、ネギ、メンマなどのごく普通の豚骨ラーメン。廣谷は箸を取り恐る恐る一口食べてみる。
「……んっ、美味い……!」
食べた瞬間広がる旨さに食べる手を早める。普通の豚骨だと感じるのに食べる手が止められない。あっという間にラーメンを食べきってしまった。
「ご馳走様でした」
「お粗末様でした! いい食べっぷりだねえ青年! それにこんな珍しい白ウルフなんて連れて」
「わんっ!」
「お! わんちゃんも美味かったか! そりゃあよかった!! 作ったかいがあったもんだ!」
ラッシュはシロを撫でた後、廣谷は向かって笑う。
「俺は暫くここで商売する予定だから気軽によってきな! 金はあいつらが落とすやつでいいぜ!」
「それは助かる」
小銭カードを取り出し、小銭にしてから支払いを済ませる。
それが終わった後ラッシュは「ありがとうございやした!」とニカッと笑った。
「わんっ」
「シロ、美味かったな。戻るか」
「わんっ!!」
シロに跨ってラッシュに頭を下げてから二人は来た道を引き返す。
二人は大量に穴の空いた部屋まで戻ってきてから道なりに進む。
すると階段が現れ近くに看板が立てかけてあった。
「『ここから先、地下10階』……何階まであるんだか」
そう呟いてから二人は階段を降りていった。
階段を降りると雰囲気がガラッと変わり、草が生い茂るダンジョンになっていた。
廣谷は戻ってくるのが面倒だからテレポート的なやつ作るかと、シロから降りて壁に手を当てる。
「『宣言。部屋までの転送扉が出来る。僕とシロは自由に出入りできる』」
その宣言と共に壁が薄くなり先に扉ができた。その扉を開けると分かれ道。左を見ると扉、右を見ると薄い壁。廣谷は左の扉を開ける。一階で作った部屋。
「おお……」
部屋から出てシロの元に戻り跨る。そして草の道を進んでいった。
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