農村に転生してから始まる魔法学園ドラマ。 カイトとゲイル 〜悪役転生に憧れて〜

アーカムの住人

田舎の農村へ転生?

第1話 悪役転生ラノベ大好き

今日か明日には新刊が発売されているはず!


高校の帰り道、歩きながら僕はスマホを取り出した。


スマホの画面に大好きなラノベの表紙絵が映し出される。

主人公がヒロインを隣に並べてニヒルな笑顔を浮かべる表紙絵だ。


スマホの壁紙を見て少しにやけてから指紋認証でログインすると、次に書籍販売アプリのアマジンを立ち上げてお目当てのラノベ「悪役に転生したけど死にたくない」の最新刊が出ていないかチェックした。


「おっ!出てるよ。新しいの!」

新刊が出る事はわかっていたが、アマジンに出てくるとやはり思わず顔がにやけてしまう。


もちろん即購入!

「至急!明日お届け配送」にチェックを入れ購入ボタンを押した。


僕は電子書籍は購入しない。大好きな本は所有したい派なのだ。

そして表紙絵を眺めてニヤニヤしたい派だった。


『明日には届くと思うが待ちきれないぜ〜!』そう思うと顔のニヤケが取れない。


「なんかウキウキしてるね。今日のまなぶくん♪」

いつのまにかスキップしている僕を後ろを歩いていた同級生の水嶋美琴に見られてしまったみたいだ。


「なんかいい事あったの?」


彼女はなぜか不審者を見るような目をして聞いてくる。僕のニヤケ顔が不審者臭を醸し出していたのだろうか?


「え、えっと。。まあ、いい事あったよ」

なぜかやましさを感じてドギマギしてしまいそっけなく返事をする。


「女の子からのメッセージ? 鼻の下伸びてるよ。」


「いやいや、そんなんじゃ無いって」


「あやしい・・。」

彼女は僕の顔を覗き込んでくる。


ち、ちかいっ!

美琴に近寄られて胸がドキドキしてしまう僕。


「じゃあ何故そんなに嬉しそうなの??」


美琴が僕の顔を覗きこんでくる。


「学くんは誰か好きな子がいるのかな??」


「い、いないよ」

そう言いながら距離を取り、とっさにスマホを体の後ろに隠してしまう。

ラノベの新刊に胸をときめかせていた僕はそのことに後ろめたさを感じている。恋愛系の転生ラノベだからであろう。スマホを見られたくない。


「よかった・・。」

美琴はホッとした表情になる。


「私もね、隠してた事があるんだ。

力雄にしつこく迫られた時の事覚えてる???学はいつも励ましてくれたよね。

でね、実はその時、、。

その時、力雄にに言っちゃったんだ。私は学のことがす・・・・」


「あっ!あれはなんだろう?!」


僕は彼女の後ろに向かって指をさすと彼女は話しかけた言葉を止めて後ろを振り返った。


その隙に僕は逆方向に走り出す。

美琴の会話を続けることに気まずさを感じたヘタレな僕は逃げることにしたのだ。


好きな女の子に恋愛系の転生ラノベにハマってるなんて知られるわけにはいかない。

ここは逃げるが勝ちなのだ。


「えっ!えええっー!!!なんでーー??」


後ろから彼女の声が響くが、僕はダッシュでその場を走り去った。



**********



水嶋美琴は家が近所で子供の頃から遊んでいたいわゆる幼馴染の女の子だ。


もう1人の幼馴染の唐沢力雄という男の子と一緒に良く3人で遊んでいた。

力雄は1年年上だったからなんとなくリーダー的存在だった。力雄に誘われて、時には他の歳下の男の子とかも誘っていろんな遊びをした。

ドッジボールとか、ビニールボールの野球とかサッカーとか。


美琴は女の子だけど、僕が誘えば喜んでその輪の中に入って遊んでくれた。


小学校も高学年になると、力雄はPSS5や南天堂ポータブルなどのゲーム機のゲームを親に沢山買ってもらっていたので、それを目当てに美琴と一緒に力雄の家に入り浸って遊んだりもした。


美琴はその頃から顔もとても可愛く性格もすごく良かった。

だから、もちろん子供ながらに恋心を抱いていた。


でも中学生になると女の子と男の子との距離は少し開いてしまう。

僕と美琴もそうだった。距離の取り方がわからなくなったんだろうね。


ある日の学校の帰り道、美琴を見かけた。

その日の美琴は歩く速度がとても遅く、すぐに追いつき横に並んでしまった。


いつもは声をかけたくてもかけられない僕だけど、

『何か考え事をしているのだろうか?』

そう思い横に並んだ時に美琴の顔をチラッと覗き込んだ。美琴は今にも泣きそうな顔をしていた・・・・。

僕は心配になっておもわず声をかけたのだった。


それで力雄が美琴に告った事を知った。なんかちょっとショックだった。美琴のことが好きだったから。


美琴は断ったらしいんだけど、どうやら力雄はしつこく言い寄ってきていて、少し暴力を振るわれたみたい。

それで落ち込んでた。


でも僕は力雄に文句言ってやるとか、美琴を守るとかそう言った事はいえなかった。力雄を友達だと思っていたし僕自身が動揺していた。


結局ありきたりの励ましの言葉をかけるしかなかった。

それからは美琴と昔みたいに話するようになり、距離は縮まったかに思ったんだけど、

その時から力雄は僕と顔を合わせると、睨みつけてくるようになった。僕は何にもしてないのに。


さらに、美琴と話をしたり、一緒に帰ってる所を見られたりすれば、難癖をつけて僕を挑発してきた。時には殴りかかってきた事もある。

だから、結局また美琴ともどんどん疎遠になってしまった。


ヘタレな僕への自己嫌悪と友人の変貌にめっちゃ寂しくなったのを覚えている。


そのうち力雄は不良グループと連むようになって良くない噂が流れてくるようになった。

何度か警察に捕まってたりしてたな。


その力雄は1年先に高校に進学したが、次の年、もちろん力雄とは別の高校を選択した。

代わりに受験した高校はが美琴と同じ高校だった。


合格した時はめちゃくちゃ嬉しかった。高校生活の中で美琴と上手くいくかもしれない。


でも、せっかく同じ高校になったのに僕は声をかける事すらなかなか出来ないでいる。要するにヘタレなのだ。


美琴からは結構声をかけて来てくれるのだが、ヘタレな僕はあがってしまって話がつづかない。

なんとなくオドオドしてしまうのだ。

今回もラノベの事もあって逃げ出してしまった。


だからこそ「悪役に転生した主人公」に憧れてしまう。

天才的な魔法の才能を持ち超イケメンのナルシストで女性の扱いが上手い。そんな「悪役転生」のゲイルに。


**********

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