第8話 殺害計画

あれから由香と男の家庭には二人の子供が産まれていた。

男は学もあって頭も良いのか投資などでも儲けている様で、由香は優雅な専業主婦に納まって、何不自由無く幸せそうに暮らしている。


片や俺の方は一回りも上の女房を貰ったが子供は出来ておらず、一度二人して病院で検査してみたところ、双方共に問題があって子供は望めないだろうという事だった。

子供が出来ないストレスからか俺も妻も散財を繰り返した結果、借金もして店の経営は火の車になっていた。


全く、神様は凄く不公平だろ!


あの男は若くして美しい由香を手に入れ長身イケメンでお金にも困らない。

その上に子供が二人も産まれて家庭も上手くいっている。

俺はと言えば一回りも年上の妻で子供も望めないときた。

俺自身も醜男で低身長で頭も良くない、この店が潰れるような事があればきっと生活は出来ないだろう。


俺は落胆して酒を飲む毎日だったが、ある日妻がこう呟いた。

「由香さん達、死んでくれないかしら……」


とんでも無い事を言う奴だと思ったが、それを聞いて俺の中に封印していたドス黒い想いが蘇ってきた。



ーーーーー



あれから話し合って、俺と妻は共謀して由香達の一家を殺す事に決めた。


奴らには俺の他に身寄りがない。

殺して奴らの金融資産を俺が奪えれば、きっと店の経営を立て直せるだろう。


俺達は数ヶ月前から入念に準備を行なった。

事前に安い中古車を手に入れ、庭に重機を借りて穴を掘っておく。

穴を埋めた後に建てる、組み立て式の物置小屋も発注済みだ。


全ての準備を終え、妻が奴らを待ち合わせ場所に呼び付けた。

そしてアリバイを作ってある俺は、アクセル全開で奴らを予定通り轢き殺した。

俺の女房になるはずだった由香を奪った罰だ! ざまあみろ!

由香の奴も俺以外の男に靡きやがって!


一つ誤算だったのは、奴らは寸前で子供二人を突き飛ばして逃がしたんだ。

俺は仕方なく他に身寄りの無い二人の子供を引き取る事になった。


傍から見れば、俺は孤児になった甥姪を引き取る善人に見えるだろう。

俺は奴らの金融資産を全て売却し預貯金も含めて全部いただく事が出来た。

これで俺の店も立て直せるはずだ。


何も知らない子供達は適当に生かさず殺さずで飼い殺しにすれば良いだろう。

もうすぐ入学もあるらしいが絶対にランドセルなんか買ってやらないぜ!


しかし由香の母親も由香自身も随分と不幸な死に方をしたもんだ。

こりゃあ真由子も同じ様に不幸になるだろうな。

ふははは!



ーーーーー



俺が引き取った餓鬼共はまだ小さいが父母に似て容姿も頭も良いようだ。

大きくなったらさぞや美男美女になるだろう。

全く憎たらしい奴らだ。


特に兄の方は妹を叩こうとすると小さいくせに絶対に身体を張って助けに来る。

この歳でもう騎士ナイト気取りかよ!

どんだけ殴っても泣かねえで根性もあるみたいだし、全くイライラするぜ!


へへっ! だがお前らは知らないだろう?

お前らの住んでいるその物置小屋には、親を轢き殺した車が眠っているんだ!

誰にも話せないが、こんなに痛快な事は無いぜ!


兄の方は毎日の様に掃除や店の手伝いをさせて、こき使ってやった。

そして俺は事あるごとに奴らの飯を抜いたり、蹴飛ばしたりして鬱憤を晴らし続けたんだ。

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