異世界現代、ダンジョンがある世界に転生した

第41話日常

　ルシフェル達、堕天使達は悪魔と罵られようとも絶対的全能神の元に戻りたかったのだ、赦してほしかった、代わりの効かないかけがえのないものとして扱ってほしかったのだ。　

　父と見まがう輝きを放つ、一輝が天照を大事そうにしている事で起こった拉致事件、こうして終わった。　

　今現在はルシフェルは一輝の家で一緒に過ごすようになった。　

　聖王国の七翼天を追い払って以来、聖人になってほしいなどの声は次第に収まっていった。　

　そして今は色々な事が落ち着いている。　

　源氏も魔王も英雄も神を自称する団体からも、今はぱったり声がかからなくなった。　

　問題は治癒の方である。　

　体の欠損まで治せる聖人は世界にも三人しかいなかった。　

　それも高い寄付を払っても完全に治してくれるかわからない人たちばかり、そこに一輝が現れ、そこそこの値段で治してしまう。　

　これに声を上げたいがあげれなくなってしまった集団、ひとまずは一輝たちの勝ちである。　

　一日にくる患者の数は軽く１００件を超える。　

　貧乏な家にはむしろ金を与え、生活的支援をし、中流の家庭からは無理のない格安で治し、財力のある人間からは無理のない高額報酬を得ると言う方式だ。　

　霊的治療や魔力的治療が必要な人間も何人もいた。　

　他にも武術の方面でも一輝は面倒を見た。　

　伸び悩んでいる初心者、中級者の動きの癖や効率の悪い動きを修正して、健全な底上げを施した。　

　その結果はすぐでた。　

　冒険者達は今まで無理だった階層をなんなく潜り、冒険者協会の売り上げは大幅に増え、いままでスタンピードに怯えていたダンジョンはまさに宝の山、冒険者達の安全な収入源となった。　

　これにより日本国はダンジョン後進国から中級国までのし上がり、色々な税金での国民への還元を可能としまさに上り調子になり始めた。　

　一時期は治安の悪くなった、外国人冒険者達を一掃し、日本人による地盤固めがしっかりし始めたのである。　

　今日も海外から来たセレブの治療が入っている。　

　仙術的な治療で、悪い所を治し、塞ぎ、時には異物を取り除くなど簡単で容易な事だ。　

　だが今回の患者は潰れた足に、体の半分以上が火傷でただれ髪は抜け、顔もひどく損傷していた。　

　若くして娘がこんな目にあってしまった事に、両親はとても悲しみ、他の聖人にも頼んだらしいが忙しいと断られたと言う。　

　アリア・ギブソンにはもう生きたいと言う目をしていなかったことを今でも覚えてる。　

　そんな彼女の火傷を、もう大丈夫といい　

　「痛かったねぇ、辛かっただろう。だがもう大丈夫、俺が治療しますよ」　

　「それは！？見た目も元にもどるんですか！？この子は本当はロングヘアーの似合う可愛い子だったんだ。そこまで治せるんですか！？」　

　「ええ、問題ありませんよ」　

　「まずは肌から治療し、次に髪、顔、最後に足を治療しよう」　

　そういうと瞬く間に治療していく様に、両親か神に祈るかのように泣き崩れてしまった。　

　鏡をみせると虚ろだった目に生気が宿り始めた。　

　「これ・・・・私・・・もとの私」　

　「体の治療はできても、心に追ってしまった傷までは治療はできません。でも希望はみえたんじゃないかな？」　

　抱きしめあう家族、よかったとほっと一息つき、ふと考える。　

　学校にもう行きたくないと・・・・。　

　このまま夏も終わって、休みも終わればまた天武館行きになる。　

　高校から大学部までつながってる天武館、中退はよくない。　

　しかも聖人として名が広まっておきながら、一学年を地獄の底に叩き落したのだから、どんな顔して通えばいいのかもうわけがわからん。　

　知り合いと言えば西園寺姉妹くらいしかいない・・・。　

　干支十二神のみんなや毘沙門天、風林火山のみんなは若！若！ってしたってくれてるけど、俺って今クラスにどんな目でみられているのだろうか？　

　正直源氏の名はもう捨ててもいいのではないないだろうかと思っているが、それを決めるのは俺じゃなく親父だし。　

　これから俺はどんな方向に進めばいいのかがわからない。　

　もちろんかかってくるのなら、七翼天みたいに叩き潰してもいい。　

　今のところ、最近では襲撃もなく平穏な毎日を送っている。　

　六条家は無事名家として再興したとも言っていい。　

　治癒の方も今は１００件とかきているが、それも落ち着くことだろう。　

　実際冒険者の怪我、死亡率は格段に減った。　

　これからは海外の大きなけがのお客さんばかりになるんじゃないかと思われる。　

　俺の様な人間にまかせるのは怖いと医者にかかる人間だって、数億人単位でいるだろう。　

　いっそダンジョンに籠ってみるか？神域ダンジョンとかいう、一階層ごとがボスフロアになっているとかいう面白いダンジョンもあると言う。　

　そもそも冒険者になって食っていくはずが、なにかが変わって、治癒で食べていくことになってしまっている。　

　俺は今将来、というかこれから何を目標に生きていけばいいか見失いつつある。　

　六条家の復興はかなった。　

　俺の次にしたいことってなんだ？学校にかよってゆっくり考えてみるか？　

　世界の悪人を率先的に殺していくなんて柄でもないし、自分の修行に力をいれるか。　

　まず剣や槍、手甲がほしいな。　

　そんなことを考えていた。