第31話
シュトルヴァ領とスフェールとの国境付近。
「やっぱりサビアの軍は数が多いぜ」
遠くを見回しながらリアンは、隣にいるブレイブに話し掛けた。
「雑魚でも何千、何万と数を重ねて来られたらさすがのオレ達も厳しいよなぁ」
ブレイブもリアンが見つめている方向に視線をやる。黒い甲冑を着たサビア軍がずらりと並んでいた。
「サビアはそこを狙っているからな。俺達の体力を消耗させた所を一気に畳み掛けるつもりだ」
「……あいつらの誤算はエゲリアの兵士もここにいるって事だろうな」
リアンが視線を横にやる。シュトルツ族の兵士達の隣には、銀色の鎧を被ったエゲリア軍がいた。彼等の鎧には、帝都ユノの紋様が刻み込まれている。
「エゲリア兵とシュトルツ兵を合わせて1万5千……やっとサビアと互角という所か」
ブレイブは頷いた。ミネルヴァは皇帝直属の軍で応戦してくれた。戦えるシュトルツ族が30程しかいないにも関わらず、かなりの数を割いてくれたのだ。エゲリアの助太刀により、1万を超えたのはブレイブにとって大きな意味を持つ。
「ところでお姫さんは? エゲリアから帰ってきたらすぐにどこかに出掛けたけど、まだ帰って来ないのか?」
リアンは辺りを見渡しながらブレイブに問う。サーラらしき人物はこの戦場には居なかった。
「まだ帰って来ていない」
「逃げたとか?」
挑発的に言うリアンに、ブレイブは怒りを宿した瞳でリアンを見やる。あまりの迫力にさすがのリアンも不味いと思ったのだろう、口を閉じた。
「彼女は決して逃げはしない」
サーラは逃げない。彼女はきっと帰ってくる。
ブレイブは心の底から信じていた。
「すっかり懐いていますねぇ、我らが族長さんよ」
からかうようなリアンの声。ブレイブは無表情でリアンを見つめる。
「そろそろ来るぞ」
ブレイブの忠告にリアンもいつになく真面目になる。戦いの時が近付いているのだ。
そして、サビア軍の方から進撃を告げる銅鑼が鳴り響いた。
銅鑼が鳴ったのと同時にブレイブがシュトルツ族の兵士達に向かって叫ぶ。
「我ら誇り高きシュトルツの兵! 偉大なる獣の血を受け継いだ我らの力を見せつけるぞ!」
ブレイブの言葉に呼応するように、大地を震わす程の雄叫びが上がった。
隣で聞いていたミネルヴァも馬から自身の兵達に呼び掛ける。
「我がエゲリアを狙う姑息なサビア王にお灸を据えてやらねばな。世界に認められるその知力を使い、この戦を勝利という幕で閉じるぞ!」
「ミネルヴァ皇帝陛下! 万歳!」
シュトルツ族とエゲリアの連合軍がサビア軍を真正面から受け止める。
ブレイブは身体能力の高さを活かし、次から次へと襲いかかってくるサビア軍の兵を倒していくが、数があまりにも多い。
倒しても倒しても次からやって来る。終わりなき襲撃にブレイブの体力は確実に削られていった。
(これは骨が折れる……)
さすがのブレイブも息が上がり始めた。
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