4.気にしてらしたんですかっ!?②
しゃがみ込みでもしない限り棚の陰に頭が入ることもないし、何ならずっと首から上が見えている。
私は155cmだから頭の先っちょが棚から覗くか覗かないか、なんだけど……こうしてみると背が高い人っていうのも常にどこにいるか監視されて可哀想ね。
って、私が追跡するのをやめればいいだけなんだけど。
だってだって! 何となく気になってしまうんだもんっ。
「あ……」
結局自力で探すことを早々に諦めてしまったみたい。
店員さんに何か話して、割とレジに近い棚の一角に連れて行かれてる。
あの棚は――。
***
「待たせたね」
ややして集中ドアロックが解除されたと同時に運転席側のドアが開いて、
彼が乗ったと同時に、行きがけにも感じた爽やかな香りが鼻腔をくすぐって。
何だろ、この匂い。
香水?
男性でも香水とかつけるものなの?
そんなことをふと考えながら、無意識にじっと
さ、寂しっ!?……いわけないじゃないですかっ!
どうやったらそんなおめでたい思考回路になれるんでしょうね?
思いながらフィッとそっぽを向いたら、「まだ口をきかないつもりか? なぁ、コレやるから機嫌直せよ」とか。
コレ。
分かってます。
〝飴玉〟ですよね!? さっき店員さんに飴のコーナーに連れて行ってもらってるの、私、一部始終見てました。
わざわざ寄り道してまで買ってくれるとか。
この人、私のことをどれだけお子ちゃまだと思ってるんでしょうね?
「で、花々里は右と左、どっちがいい?」
2種類も買ったんですか。お金持ちは違いますねっ。
彼が片手ずつにささげ持った、ピンク系統と黄色系統のパッケージを横目に見てそう思う。
思いながら、ムスッとした声音で「左……っ」と――。「ピンク色の方がいいのだ」と答えてしまう私って一体。
***
「はい、どうぞ」
ガサガサとパッケージを開ける乾いた音を聞きながら、何となくそっちを見るのがはばかられてうつむいていたら、再度促すように「どうぞ」と声をかけられた。
その声に顔を上げたら……。
「な、んっ……!?」
で口移しっ!?
私が顔を背けられないようにしっかりと両手で頬を挟み込んでるの、用意周到すぎてっ。
そんなこんなに思わず抗議の声をあげようと口を開いたら、チャンスとばかりに桃味の飴玉が口の中に押し込まれた。
そうしてそのまま飴を押し進めつつ彼の舌も一緒に侵入してきて……。
私の舌の上で飴玉を転がすように
「あ、っはぁ、……んっ」
執拗に擦り合わされるベロの動きに、口の端からトロリと甘い桃の香りの唾液が伝い落ちる。
やだ、ベトベトになっちゃうっ。
とか咄嗟に思いながら
と、ようやくそれで唇が解放されて。
っていうかここ、コンビニの駐車場!
店内からの明かりでめちゃくちゃ車内も明るいのにっ。
何考えてるの、この人!
そう思って口をパクパクさせながら固まっていたら。
「
とか。
嘘っ。
私が言ったこと、そんなに気にしてらしたんですかっ!?
っていうかその解釈の仕方、すごくズレてると思うの!
私、うなぎ味のキスを桃味の飴玉で甘く上書きして欲しいだなんて、
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