第13話 魔草の可能性

 ロアムが内を訪ねてきた翌日。

 寝起きの悪い俺だが、ここでは自然と早朝に目が開いてしまう。しかし、眠気やダルさはないので寝不足というわけじゃない。すべてはこの森の穏やかな空気がそうさせているのだ。


「今日もいい天気だな!」


 深呼吸を挟んでからそう言って、俺は小屋の外へ出た。昨日と同様に、アルラウネは静かに寝息を立てながら気持ちよさそうに眠っている。

 そのすぐ近くには三つの大きなテントがあった。

 

 最初は驚いたけど、すぐにロアムたちの物だと思い出し、起こして悪いと静かに川の方へと移動するが、その前に農場の様子が気になって確認してみる。


「お? もうかなり成長しているな」


 アルラウネの能力もあって、かなりの速度で成長している。中には魔草としての役目を果たせそうなほど成長している


「少し試してみるか」


 さまざまな可能性を秘めた魔草。

 その効果を試してみたくなった俺は、赤い色をした葉っぱを一枚だけちぎって手の平に乗せる。そこへ魔力を込めていくと、途端に葉っぱは炎に包まれた。


「バッチリだな」


 魔草によって生みだされた炎は、魔力を注ぎ込んだ者に害を与えない。これは魔法と同じ原理だ。つまり、この魔草は魔法を扱えない者にも同等の効果をもたらすのである。


 ――ただし、諸々劣る面は出てくる。

 もっとも大きな点は、応用力のなさだろう。魔法のごとく自由自在に操れるというわけではないので、状況変化への対応が難しくなる。


 けど、俺みたいに魔法使いとしての才能が欠片もないヤツでもある程度は同じ効果を得られると知れただけで嬉しい。

 とはいえ、こいつは持ち主を選ぶというか、誰にでも気軽にやれる物ではない。そもそも俺は治療に使うための魔草栽培をメインにしたいと思っているのだ。第一、こっちは大量に栽培するのは不可能に近いのでひっそりと所持し、いざという時にのみ使うとしよう――と思っていたのだが、


「凄いです!」


 いきなりの叫び声にビックリして振り返ると、そこには目を輝かせているロアムがいた。


「ロ、ロアム……」


 まずい。

 この魔草がロアムの商売魂に火をつけてしまったようだ。


「それも魔草の効果なんですか! ぜひともうちで取り扱いたいです!」

「い、いや、こいつは――うん?」


 なんとかして誤魔化そうとしたその時、遠くからこちらへと走ってくる人影を発見する。


「あれは……」


 興奮するロアムを落ち着かせつつ、次第に近づいてくるその人物をジッと見つめる。

 どうやら、ラッセル村長のようだ。


「ハリス! 大変だ!」


 血相を変えて駆け寄るラッセル村長。

 何か異変が起きたらしい。


「どうかしたんですか!?」

「じ、実は、ついさっき、ここから少し離れた位置にあるダンジョンで超大型のモンスターが出現したらしく、怪我人が続出しているようなんだ!」

「ほ、本当ですか!?」


 これは想像していたよりも厄介な状況みたいだな。

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