2-12 恋人ごっこ、其の6

1月18日、日曜日

 私はテリアで午前11時からシフトに入り働いていた。

 昨日、佐野さんとはいい感じの雰囲気と呼べるのかは分からないが晴れて恋人関係という形になり、解散した。

 私の目的は順調に達成してはいるけれど、不安は付き纏う。

 私の精神は目的が順調に行けば行くほど、少しずつ蝕んでいるように感じていた。


「茉莉花ちゃん、大丈夫? ちょっと暗いけども……」

 花さんは私の表情を見て、少し心配そうに声をかけてくれる。

「大丈夫です。昨日、少し遊びすぎたかもしれません。すいません」

「そうなの、よかったわね。でも、お仕事は集中しなきゃダメよ」

「はい、頑張ります」

 私はしばらく仕事に集中した。


午後7時、バーバラさんが入店した。

「グッモーニン、みなさん」

「あら、バーバラさん。こんばんわ、今日は少し遅いわね」

「お疲れ様です!」

 閉店際で人もまばらなころ、バーバラさんが入店した。

「今日は残業です〜」

 バーバラさんは肩をすくませ、疲れた顔をしていた。

 ブレンドコーヒーをオーダーしてくれたので、私はコーヒーを淹れ始めた。

「お疲れ様です。バーバラさん」

 そっと机に置き、サービスのケーキも差し出した。

「オー、ありがとうございます!」

「あまりものですが、よければ……」

「サンキューです!いただかせていただきます!」

 少々、日本語がおかしいが突っ込まずにスルーした。

「そういえば、今日は勝己さんいないのですね」

「そうですね。私は最近、見ていないですね」

「そーなのですね」

 バーバラさんは少しがっかりしたような感じであった。


 午後8時、私は仕事を終えて帰宅の準備をしていた。

 店長さんが何かいいたげな表情でこちらを見てきた。

「茉莉花ちゃん、あのドリンクの正体が判明した」

「え、そうなんですね」

「聞きたくなければ無理にとは言わないが、聞くか?」

「え、まあ、はい」

「あれはMDMAが少量ではあるが含まれている。おそらく今は影響がないだろうと思われるが、もう手を出すのはやめた方がいい」

 あまり聞き馴染みのない単語であったが、麻薬の類であると説明を受けた。

「わかりました。ありがとうございます」

 私は店長さんと花さんと一緒に帰りながら、そのドリンクについての説明を受けながら帰った。

 あのドリンクには麻薬成分を含ませ、依存させ購入させる手口だということだ。

 勝己さんもドリンクを入手し、調べてもらっていたみたいだ。

 店長さんは一体、何者なんだろうか。聞くには聞けなかった。

 新宿までの道中で幸信仰界こうしんこうかいの現状について、勝己さんが把握した程度は教えてもらった。もちろん、私の知っている情報はある程度、提供をしていた。


 1月23日、金曜日

 私は佐野さんとデートに来ていた。

 今日はランチを食べに行くことになった。

 

「ここ予約してるんだけど、いいかな?」

「いいですよぉ」

 フレンチのお店に入った。

「ここ、かなり高そうですけど、本当にいいんですかぁ?」

 コースメニューを見る限りでは、かなり高そうではあるが、ここは支払うからと言われ、押し切られてしまった。

 

 お洒落な食事が、次々と出てきた。

「わぁー、すごいお洒落ですね。こんなところ来たことないですぅ」

「茉莉啞ちゃんにお礼してもお礼しきれないからさ」

「いえいえ、そんなことないですよ」

「そういえば、あの団体のこと、考えてくださいました?」

 私は佐野さんに幸信仰会こうしんこうかいについて説明し、おすすめをしていた。というのも同じ目に合わせてやりたいからです。

 

「うん、おすすめされたからね。考えてはみたよ。でも少し怖いからさ」

「大丈夫だと思いますよぉ。紹介したショップで購入してくれるだけでいいですから」

 私は危険を承知で、会員になり広めようとしていた。

「茉莉啞ちゃんが、どうして持っていうなら俺もやろうかな」

「本当に?ありがとうございます」

 食事を摂りながら私は説明をしていた。


 食後、デートの最中に途中で通りかかったので、エアローショップへと入った。

 ドリンクを何本か購入させ、会員にも入らせようと思ったが、すでに会員に入っているため、ややこしくなりそうなので会員に入会させるのはやめようと思った。

 

「これ、飲んでみてくださいね。結構、いいらしいですよぉ」

「そうなんだ」

 佐野さんは一本空けて、少し口に含んだ。

「おいしいね。いい味だね。」

 佐野さんに飲ませることに成功した。

 私は良心が痛んだが、元々あってないようなものなので、さして気にはならなかった。

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