1-2 初日
優子と履修を組んだ日から5日経った4月10日木曜日、今日は講義初日だった。予め決められている授業を2コマ受けた。高校と違って90分はとても長く感じた。集中力が後半は途切れ途切れで頭に入ってこなかった。
そして、お昼の時間、授業は90分なのにお昼時間は40分だ。もう少し余裕が欲しいなあと思いつつ食堂に向かうもすごい行列で待ってたら時間がなくなってしまいそうだった。
「ねえ茉莉花」
いきなりでびっくりした、後ろから優子に声をかけられた。
「この時間は混むよ。今日は仕方ないけど明日とかは空きコマに食べよ」
優子はとても慣れているような印象だった。情報入手がうまかった。
優子に案内され2階の少し空いているカフェで軽食を食べる事になった。
「そっちはどうだった。面白い?」
優子とは午後は比較的、同じ授業にしたが午前は学部の関係で授業が異なっていた。
「う、うん、面白いよ」
どうしても緊張で素っ気ない感じになってしまう。
「そうなんだ、こっちは全然よ」
優子の愚痴を聞きながら食べているとあっという間にお昼時間が終わってしまった。
午後からは一緒の授業だったので優子と2コマ続けて受けて、夕方になった。今日の授業はここまでだ。疲れたな、家に帰りたいそう思いながら教室棟から出る。
「茉莉花はさ、サークルとか入るの?」
優子が尋ねてくる、サークル、気になるけど一歩が踏み出せない、てかそもそも何があるのか把握もしていなかった。
「私はテニスかサッカー部のマネージャーかな、イケメン多そうだし」
優子はこういうタイプだ。彼氏募集中だと前もお茶した時に言っていた。
「私は見学に行くけど、茉莉花はタイプじゃなさそうよね、また明日ね」
「う、うん、また明日」
優子は足早にさっていった。
どうしようかな、でもやる事ないしと思い帰る事にした。
家に帰りゴロゴロとしていた。食事を取らなきゃとも思うが億劫になりつつあった。今まではお母さんが作ってくれていたからだ。
とりあえず冷蔵庫を覗くが、買い物をあまりしておらず買い出しにいく事にした。
少し歩いたスーパーに向かった。とりあえず食べやすそうなもの、料理はあまりしたことないので、簡単に食べれるインスタント系と惣菜を購入し帰ろうとした時だった。
一瞬、電撃が走るような感覚に襲われる。一目惚れするようなタイプではないがレジ番の男性、同い年くらいだろうか、茶髪のマッシュで眼鏡男子、私のタイプだった。少し緊張しながらレジを打ってもらい、挙動不審になってないか心配しつつスーパーを出る。
あんなイケメンが彼氏だったらなあ、そう少し妄想し家に着く。
夕食とシャワーを済ませ、明日に備え寝る事にした。
4月11日、金曜日
授業が始まって2日目。
優子から連絡が入っていた。「教室棟で待ってるよ」とのことだった。今日は午前で授業終わりで、その2コマは優子と被っていた。
教室棟までくると優子がわかりやすく手を振ってくれた。
「おはよー、今日は一緒だね、それに午後からは休みだし」
「お、おはよう」
まだ上手く距離感が掴めずにいた。優子はあまり私のぎこちなさを気にする素振りなく2人で一緒に授業を受けた。
午後12時30分、授業が終わった。優子はサークルの先輩たちと出かけるんだと言い、また足早に去っていった。
私もサークル、探したほうがいいかな。そう思いながら昨日のカフェでお昼をとる事にした。食べながら初日にもらった冊子を思い出した。これにはサークル表なるものがありスポーツ系から文化系まで色々と載っている。スポーツの所は飛ばし文化系に目を通す。麻雀、将棋、囲碁などボードゲームのようなものから、バンドや吹奏楽など様々あった。
麻雀か、少し惹かれた。私はボードゲームが好きで暇な時は家でずっと麻雀や将棋のアプリをしていたからだ。将棋は1局が長くなりがちだが、麻雀は程よく終わるため暇つぶしには丁度よかった。昔はよく家族でしていたものだ。でも対面で知らない人と打つのは気が引けてしまった。
そんなことを考えていた時だった。
「君、昨日、買い物してたよね、サークル探してるの?」
突然、知らない人に声をかけられた。怖い。そっと声の方を見ると驚いた。昨日?一瞬何のことか理解できなかったが、そこには昨日のイケメン君がいた。
え、なんで私に声かけてくれたの。てかフレンドリーすぎない、疑問が尽きない。
「ああ、ごめんね急に。びっくりしたよね」
彼は少し謝る素振りを見せた。
「もしサークル探してたらうちのとこ、興味あったらきてよ、見学だけでも」
そういい名刺のようなものを手渡してきた。思わず受け取ってしまう。
そして彼はどこかへ言ってしまった。
渡されたものにはサークル名と活動日だけが書いてあった。
慈愛の会と表に書いてあり、裏には活動日は月に2回、不定期と書いてあり後ろには代表者の名前と連絡先が書いてあった。これが彼の名前だろうか。
とりあえず鞄にしまった。急な展開で思考が追いつかない。何だか落ち着かなくなり今日は帰る事にした。
4月14日 月曜
土日、優子はサークル活動があるみたいで他に友達と呼べる人もまだ出来ていない私は1人で家にいた。ずっと麻雀アプリなどをして推しのBチューブを見ていたら気づいたら日曜の夜だった。時間が過ぎるのはあっという間だ。
身支度を整え家を出ようとした時、優子から連絡だった。
お昼は一緒に食べようね。とのことだった。
午前の授業が終わり、優子と合流した。
「おはよ、土日は何してたの?」
「げ、ゲーム?」
「何で疑問系?まあ茉莉花っぽいね!」
そんな会話をしつつ、今日は食堂が空いていたのでそこで食べる事にした。
茉莉花にこの前のイケメンのことを話した。
「え、何それ、ドラマチック。抜け駆けは許さないよ」
冗談まじりに優子は答えた。もらった名刺のようなものを見せた。
「慈愛の会?なんか怪しいわね」
私もそう思った。でもとりあえずいってみたら。何かあったら変えればいいしと優子は楽観的に言う。
「大丈夫かな?」
「茉莉花、勢いも必要よ。でも危なかったら帰りなさいね」
優子はそう優しく忠告してくれた。食事を終え午後の授業を終えた後、いってみる事にした。
サークル棟と呼ばれる建物があり、その3階の一室にあった。ドアに慈愛の会、サークル室と書いてある。間違いなさそうだ。
「この前の子だよね、来てくれたんだ」
また後ろから声をかけられた、声で今回は気づいた。あのイケメンだ。
「せっかくだし見学していってよ、今日は滅多に来ない、OBの人が来てるんだ。君、運がいいね」
そう言われ、中へ入ってしまった。中は比較的広めな会議室のような感じだった。中央の机に案内されお茶を出してくれた。
「よかったら飲んで。まだ肌寒いし暖まるよ」
いい匂いの紅茶だった。私の前に彼が座る。ドキドキしてお茶どころではなく直視できない。そのままうつ伏せ気味に話を聞いた。
「僕たちは表向きはボランティアサークルで悩みを抱えた人だったり、病気持ちの人を助けたり、町の為にボランティアをしているんだ。」
表向きはってところに引っかかるが彼は続けた。
「でもね、それだけじゃ人は幸せにはなれない。お金に困った事ない?ないならいいんだけどね。僕もアルバイトしないと生活できないし」
私もそうだ。彼も確かにスーパーで働いていた。
「後はパーティーに行けたり、交友関係が広がったり、投資について学べる会もあるんだ」
そういいタブレットの画面を見せてきた。そこにはグラフのようなものが書いてあった。そしてある程度のざっくりとした説明を聞いたところで誰か入ってきた。他の部員かと思ったが少し年配の人だった。
「ご無沙汰しております、先生」
イケメン君がそう呼ぶ人は先ほど言っていたOBのようだった。
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