第17話 致命的なのだ


「ましゅさ~ん?開けてくだせぇ」


開かずのドア。語らぬインターフォン。

かれこれ3度呼びかけているがあちらからの反応はない。

こりゃいきなり家を飛び出して行った挙句、朝帰りしてきたことに相当お怒りらしい。

でも、何度でも、何度でも、押すこのインターフォン。

すると、プッシュ回数が2桁を超えた辺りでようやくましゅが反応を示す。


『なんすか?』

「なんすかって…開けてくれ」

『………チッ…………へいへぇ~い、遅いお帰りで』


いま舌打ちした?


「…ありがとう」


なんだか胃が痛くなってきたな…。




█████████████████████




だだっ広いリビングで正座で向き合う男女が2人。


「………………で?どこほっつき歩いてたのかな?かな?」


目が怖いですよましゅさん。


「え~………と」

「浮気?」

「いや、まだお前と付き合ってねぇから。浮気もクソもねぇだろ」

「えっ!??」


やべっ慌てて言い間違えた。


「あっ、いやっ!違う。言い間違えだ」

「ふぅ~ん言い間違えねぇ…実は深層心理に私と付き合いたい欲望があるからそんな言い間違えをするんじゃない?」

「あ~うるせぇうるせぇ。と・も・か・く、やましいことは何もねぇよ。友達の家に行ってたんだ。ここで寝たら何されるかわからないからよ」

「え~ひどい~……………ぐすん」


実際、ここで寝てる間にこの女に襲われる可能性が決して低くないと思うとおちおち眠れなさそうではあるし、何か対策を考えないとなと思っていると、ましゅが突如として顔を両手で覆って泣き始めた。


「おい……………どうした?」


とは一応言ってみるけど。

どうせ演技だろう。


「ぐすん……ぐすん」

「ましゅさ~ん?」


そうしてそのまましばらくましゅの鼻水をすする音だけが聞こえてくると、俺は次第にほんのちょっとだけだが不安になってくる。


「え?マジで泣いてる?」


そうして俺が思わずましゅに近寄ろうとした時、ましゅはここぞとばかりにとんでもない勢いで顔を覆っていた両手を鳥が羽ばたくように広げ、俺に抱きつこうとクワガタの角のごとく両手を交差させる。


「うおっ!」

「…チッ」


こいつっ…!油断も隙もねぇ!


「あっぶね!」

「避けないでよ」

「いや避けるわ」

「むぅ~~~…………………はぁ………私、けっこう心配したんだから」


よく見るとましゅの目は赤く腫れていた。

ましゅ、いや秋田綾音であれば嘘の涙の一つや二つ簡単に流せそうなもんだが、何となくましゅは本気で俺のことを心配して涙を流してくれているような気がする。たぶん。

…………………………いや、実はそう思いたいだけかも。なんだかんだあの秋田綾音に心配してもらえるって男冥利に尽きるしな。そうあって欲しいという俺の勝手な願望なのかもしれない。

何となくバツが悪くなった俺は、ましゅに対して素直に謝罪をする。


「…悪かったよ。せめてどこに行くのかは言っておくべきだった。次からは気をつける」

「…うん。もう私を置いていかないでね。まろくんが危ない目に遭うのは嫌だよ?」


「いや、お前が一番俺を危険な目に遭わせかねないのよ」というツッコミは我慢して飲み込む。

そして、目の端に水晶を溜めたましゅの、あどけない少女のようなその微笑みに、一瞬俺の心は完璧に撃ち抜かれそうになるがギリギリで耐えた。


マジであふねぇ……。


面の良い女のその表情は反則だってばよ…。


「…わかった。善処はするよ」

「うん!ありがとうね!まろくん大好き♡」

「……お、おう」


ふぅ、これで何とか有耶無耶にできたな。

実は女と会ってましたそれも朝までずっとなんて言おうものなら第2回ゲームの終了日時を待たずして目の前のサイコ女に死よりも恐ろしい恐怖を味合わせられるに違いない。

ただ追求は回避できた。思ったよりすんなり終わって良きかな良きかな。あとは別の話題を振れば─────「……よ~し、それじゃあ、まろくんと仲直りもできたことだし、



稲見いなみ凛夏りんか



を、殺しに行こっか!」








…………

………………………

…………………………………

…………………………………………………

………………………………………………………へ?




to be continued...

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