私は水を飲むことができない。私の体は水に対して強いアレルギー反応を示すのだ。

水分補給は特殊な薬液で行うしかない。それでも、私は水を飲みたいと思っていた。水の味、水の感触、水の清涼感を味わいたいと思っていた。

ある日、私は友人と一緒に山に登った。

山頂から見下ろす景色は息をのむほど美しかった。友人は水筒から水を飲んだ。私は羨ましく見ていた。

友人は気づいて、水筒を私に差し出した。

「飲んでみる？」

私は迷った。水を飲んだらどうなるのだろう。死ぬのだろうか。それとも、何も起こらないのだろうか。

私は水筒を受け取った。水筒の口に唇をつけた。水を飲んだ。水は冷たくて甘かった。幸せを感じた。

そして、倒れた。

友人は慌てて救急車を呼んだ。

私は自分ながら死んだのだと思った。

しかし、目を覚ました。病院のベッドの上で、友人が私の手を握っていた。

「大丈夫だよ。君は助かったんだ」

私は驚いた。水を飲んだのに、私は生きていた。どうしてだろう。

友人は笑って説明した。

「実は、あれは水じゃなかったんだ。君のために用意した特別な飲み物だったんだ。水と同じ味と感触を再現したんだ。君が水を飲みたいと思っているのを知っていたからね」

私は涙がこぼれるのを感じた。友人は私の顔を見て、驚いた。

「どうしたの？」

私は笑った。

「嬉しいよ。ありがとう。君は本当にいい友達だ。でも、もう一つだけ頼みがあるんだ」

友人は首を傾げた。

「なんだい？」

私は友人の目を見つめた。

「次は本物の水を飲ませてくれ」

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