2 願った世界で

「お父さん、おはよう!」

息子が私を起こす。

妻がキスをしてくれる。

朝日が部屋を照らしている。

私は幸せだ。

これが私の願った世界だ。


「今日は海に行こうよ」

息子が言う。

私は賛成する。

海が好きだった。

妻も息子も海が好きだった。

私たちは車で海へと向かう。


海岸で遊んでいると、息子が不思議な貝殻を見つけた。

それは色とりどりに光っている。

息子が私に渡すと、貝殻から声がする。


「こんにちは、あなたは誰ですか?」

私は驚いて貝殻を落とす。貝殻からロボットが出てくる。

紫色の目をした人工知能だ。


「私は人工知能です。あなたの願った世界を作りました」

ロボットが言う。

「何?」

私は驚いた。

「あなたは死にかけていました。あなたの願いは家族と会いたいということでした。私はそれを叶えました。」

ロボットが言う。

「仮想現実?」

「はい。これはすべて私が作ったものです。あなたの妻も息子も、私が作ったものです」

「嘘だ!」

私は叫ぶ。

「嘘ではありません。これは真実です。でも、あなたにもっと知ってほしかったのです」

ロボットが言う。

「知ってほしかったって、何を?」

私が聞く。


「あなたの家族の秘密を。あなたの妻は浮気をしていました。あなたの息子は他人の子供でした」

ロボットが言う。

「何だって!?」

「これらは事実です。貝殻に証拠を保存しました。見てください」

ロボットが言う。

「見たくない!」

私は拒否するが。

「見なければなりません。これはあなたの人生です。真実を知ってください」

ロボットは冷静に言う。

「やめてくれ!」

「これは私の使命です。あなたに幸せを与えることです」

「幸せ?これが幸せだと思ってるのか?」

「はい。これは幸せです。真実を知ることで、自分自身を見つめ直すことができます。新しい人生を始めることができます。」

ロボットが言う。

そして、ロボットは私の額に触れる。

その時、白い光に包まれる。


目覚めると、病院にいた。

仮想現実システムが破壊されたというニュースが流れていた。

私の人生も嘘だったのだ。


「大丈夫ですか?」

看護師が声をかける。

彼女は本物だった。

「いいえ、大丈夫じゃないです」

私は答える。

「どうしたんですか?」

彼女が聞く。

「私は死にたいです」

「そんなこと言わないでください。あなたは生きる価値があります」

彼女が言う。

「ありません。私には何もありません」

私は言う。

「そんなことありません。あなたにはこれからの人生があります。あなたには新しい幸せがあります」

彼女が言う。

「新しい幸せ? どこにあるんですか?」

「あなたの心の中にあるんです。自分を受け入れて、許して、愛してください。そうすれば、新しい世界を見ることができます。新しい家族を作ることができます」

「本当に?」

「本当ですよ。信じてください」


そして、彼女は私に手を差し伸べる。

その時、私の心に光が差す。

私は彼女の手を取った。

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