174日目 異世界-7

バッコオォォォーーン!!

渾身の【フレアバースト】が人面の脇腹にめり込む。


「あで?」


マジかよ!!


人面は少しよろけた程度で、それほどダメージが無いように見える。


ヒュンッ!!

一瞬で触手が近づいてくる。

しまった!!


「狭間様!!」


ドガッ!!


「ありがとうございます!!」


間一髪ローシュさんが僕を抱えて回避する。


ビュンッ!!

ビュンッ!!

ビュンッ!!


追撃が!!


【転移】!!


僕は【転移】の入った魔石を使用し、騎士団付近に移動する。

通常なら数キロメートル移動できる【転移】だが、特殊な結界の中だ。

数メートルしか移動できない。

しかし、回避には有効だ。


「耐えろ!!」

トロゲンさんが叫ぶ。


クソ!!


ビュンッ!!

ビュンッ!!

ビュンッ!!


ドガ!!

バゴッ!!


触手による連撃の速さが異常だ。

【転移】無しで回避しながら近づくなんて不可能だぞ。


『狭間様の攻撃が効いています!!』

ローシュさんが【コール】で言う。

『いや、あれでは致命傷にはなってません』


『しかし、我々の攻撃ではやつに届きません。

 狭間様に先程の技を使っていただくしか……』

トロゲンさんだ。


ダメだ。

【フレアバースト】は有効打になっていない。

ならば斬撃……【狂乱の舞】で攻めるしかない。


『ローシュさん、剣を貸してください!!』

『承知しました!!』


ビュンッ!!

ビュンッ!!

ビュンッ!!


ドガ!!

バゴッ!!


僕はローシュさんから剣を受け取る。

その間も触手から激しい攻撃がくるが、ローシュさんがダメージをもらいながらも盾で受け流している。


「スゥー……」

僕は深く、深く深呼吸をする。

【魔影装】で全身にMPを行き渡らせる。


ビュンッ!!

ビュンッ!!

ビュンッ!!


ドガ!!

バゴッ!!


もう少し、もう少し耐えてくれ。


腰を低くかがめ、左足と右手を後ろに大きく引く。


【狂乱の舞】!!


僕は大きく引いた左足を思い切り前に踏み出す。


ザッ!!


【転移】!!


踏み出すと同時に【転移】の魔石を発動。

目の前には人面がいる。


僕は体を思い切りひねり、斬撃を繰り出す。


ガキンッ!!


「あで?」


人面は驚きつつも、僕の斬撃を触手でガードする。

しかし、それは想定内だ。


僕はガードされた反動で身体を逆に回転させつつ、斬撃を繰り出す。


ガキンッ!!


僕は宙に浮いたまま、左右に身体をひねり、斬撃を繰り返していく。


ガキンッ!!

ガキンッ!!

ガキンッ!!


「いで、いででで」

効いてる!!


ガキンッ!!

ガキンッ!!

ガキンッ!!


「おめ、いで」


ガキンッ!!

ガキンッ!!

ガキンッ!!


『は、狭間様……』

「狭間様が奮闘している!!

 大勢を立て直せ!!

 回復しろ!!」


ガキンッ!!

ガキンッ!!

ガキンッ!!


身体がミシミシと軋む。

そろそろダメージがくる。


ガキンッ!!

ガキンッ!!

ガキンッ!!


景色がぐるぐると回り、気分が高揚してくる。


ガキンッ!!

ガキンッ!!

ガキンッ!!


「いで、いでで、あんだ!!」

効いてる。

まだまだ!!


ガキンッ!!

ガキンッ!!

ガキンッ!!


僕はさらに速度、威力を上げていく。


『押してます!!』


ガキンッ!!

ガキンッ!!

ガキンッ!!


ゴキッ!!


身体に限界が来る。

【クイックヒール】と【グレイトヒール】、【ハイヒール】を自分に連発する。


「まだまだぁ!!」


ガキンッ!!ゴキッ!!

ガキンッ!!ゴキッ!!

ガキンッ!!ゴキッ!!


「おめ、いでよぉ!!」


ブンッ!!


触手が飛んでくる。

しまった!!


バコッ!!


僕は剣で咄嗟にガードするが、吹っ飛ばされる。


ズサァー!!


地面を転がりつつ回復をしていく。


『クソ!! ダメです。

 あの技は自分にダメージがきます!!

 身体へのダメージで攻撃が鈍りました』

鈍ったといっても一瞬だ。

しかし、その一瞬の隙すら許されない。


『いけます!!

 狭間様!!

 全ての【回復魔法】を我々に任せてください!!』

!!

そうか!!

全て攻撃に集中し、【回復魔法】の負担を減らせれば、もっといける!!


『なるほど!! わかりました!!

 僕は全てを攻撃に集中します!!

 回復はお願いします!!』


『はっはっは!!

 ローシュいい提案だ!!

 狭間様、狩りのときとは役割が逆ですな!!』


「スゥー……」

僕は再び深く、深く深呼吸し、大勢を低くする。


次で仕留める!!

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