166日目 異世界-1

「問題ないだろう?」

「そ、そうでしょうか……」

シトン様とトロゲンさんが話す。


僕とシトン様、そして聖騎士のトップであるトロゲンさんがシトン様の部屋にいる。

この部屋は強力な【結界魔法】が使われており、中の会話は基本的に聞かれることがない。


昨日の外界での狩りを見て、トロゲンさんが心配している。

というのも、既に統率がとれており、僕が陣形に入る混む余地がないのだ。


「確かに騎士団の狩りは特殊だ。

 カウンタースキル無しで役に立つことは難しい」

「そうなのです」

確かに……


「しかし、狭間くん(の気色悪さ)は例外だ。

 彼を普通の枠に当てはめて考えるのは辞めた方がいい」

「そ、それはやはりサワナ様のお弟子様だから……ということでしょうか?」

「え?」

なんかそれ、嫌なんだよな……


「いや、そうだな……

 狭間くん、君のスキルについて、トロゲンに多少は開示する。

 いいかな?」

「はい。必要なことであれば」

これまでの話からすると、僕のMPが多すぎること、【ホーリービジュア】で欠損部位の再生が可能であることが周囲にバレるとよろしくないということだった。


「詳しくは話せないのだが、補給要員として扱って欲しい。

 狭間くん、その意味はわかるか?」

「えっと、例えば【エリアヒール】の魔石を大量に【ストレージ】に入れて、毎日補充するとかですかね?」


「そうだ(やはり物分かりはいいな)」

「毎日補充?

 それならばその場で使用していただければよろしいかと」

まぁ普通に考えればそうだろう。

魔石に魔法を入れると、回復力は落ちるだろうし。

ただ、補充をしておけば、クールタイムが必要ないというのはメリットではあるが。


「詳しくは話せないと言っただろう?(このデクの棒が……)」

「失礼しました……

 しかし、そんなことが可能なのですか?」

トロゲンさんが僕に確認する。

「はい。条件がいくつかありますが……」


「条件ですか」

「はい。まず僕の場合、夜に8時間程度確実に睡眠が必要になります。

 そして、無事に睡眠ができれば、使い切った魔石全てに魔法が補充できます」


「な!! そんなことが!?」

トロゲンさんがシトン様を見る。

シトン様は無言でうなずく。


「【回復魔法】についてはお役に立てると思います」

「それがもし可能であれば、外界への遠征が大きく進展します……」

トロゲンさんが顎に手を当てて考えている。

遠征先を思考しているのだろうか。


その隙に僕はシトン様に【コール】を使用する。

『あの、シトン様。

 おそらく【補助魔法】についてもお役に立てると思うのですが、それは言ってもよろしいでしょうか?』

『ほぉ、これは便利な【空間魔法】だな。

 【コール】といったか。

 【補助魔法】については、今は辞めておいた方がいいだろう。

 既に騎士団に【補助魔法】要員は組み込まれている。

 【回復魔法】については、常に補給が必要であるから、とりあえず【回復魔法】の情報だけを騎士団に与えるべきだ。

 (おいおい、この魔法は伝えたい言葉だけが伝わるんだよな……思考が読み取られるとやっかいだぞ……)』


『わかりました。では【回復魔法】、特に【エリアヒール】で騎士団の遠征に加入したいと思います』

『ふむ……(このクソが……焦らせおって)』





「では一度狭間くんを外界へと連れて行き、彼の【エリアヒール】のみでどの程度遠征できるか試してみるといい」

「はい。承知しました」

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