78日目 異世界
今日は朝食後、カルディさんと教会の応接室へ来ている。
イヴォンさんに、MP回復の件を伝えるためだ。
「今日は2人揃ってどうしました?」
「実は僕、MP回復がちょっと特殊でして……」
イヴォンさんが眉をピクリと動かす。
今まで見せなかった表情だ。
「特殊……」
「狭間さん、私から説明しましょう」
「ありがとうございます。
お願いします」
それはありがたい。
僕は何処まで話していいか迷っていたところだからだ。
「狭間さんは特殊な体質でして、一晩寝るとMPがほぼ全快になるんです」
「?
一晩でMPが全快?
そんなスキルは聞いたこともありませんよ……」
「しかし事実なんですよ、イヴォン」
「………………」
イヴォンさんはしばらく考え込む。
「まぁカルディが言うことですから、確かなことなのでしょう」
「ですから、魔石の補充や狩りへの同行で彼のMPと食い違うことがあるでしょうがその辺りはあなたがフォローしてあげてください」
「…………ふむ。
まぁ疑うわけではありませんが、今日と明日、MPが無くなるまで全て魔石に魔法を補充していただいてもいいですかな?」
「はい、もちろんです」
そうだな、MPが枯れるまで魔法を補充すればわかることだ。
「それから、それが事実だった場合いくつか考えがあるのでよければ付き合ってください」
「わかりました」
考えってなんだろうか。
「イヴォン、もうお金につながる考えをしていますね?」
「ははは、私は常に教会職員のことを考えていますからね。
私が頑張れば、ここのみんながいい生活をできるんですよ」
おぉ!
これまた見たこと無い表情だ。
今までは優しい教会の司祭だったのに、一気に金にがめついおっさんに見えてきた。
「では早速、魔石販売所へ行きましょう」
「はい!」
「では私はこれで。
狭間さん、ポーションができたら持ってきてくださいね」
ということで、カルディさんは道具屋へ帰り、僕とイヴォンさんで魔石販売所へ向かう。
そして、まずは昨日家で補充しておいた【ヒール】の魔石を5個渡す。
「まずはこれで【ヒール】50回分ですね。
ではわかりやすいように、今日は全て【ヒール】を使っていただきましょう」
「はい、わかりました」
僕は全てのMPを【ヒール】の魔石の補充に使う。
100回を越えたあたりから、イヴォンさんの表情が変わる。
「ほほぉ……これは素晴らしい」
トータルで115回ほど【ヒール】を使った。
魔石と合わせて165回にもなる。
「MPが切れました。
夕方には少し回復していると思います」
「わかりました。
では夕方また補充していただきましょう」
僕は部屋へ戻る。
……やることが無い。
MPも無いし、回復したところで今日はそれを使うことができない。
マジで暇だ。
とりあえず【ポーション生成】でSPを0にしておく。
……やることが無い。
マジで暇だ。
ということで魔石販売所に来た。
理由は、ある程度の魔法と魔石の需要を知っておきたいからだ。
販売所のシスターが説明をしてくれる。
最も需要が高い魔石が【ヒール】で次が【ハイヒール】だ。
魔石はやっぱりここぞというときに使うらしい。
そのため、【ヒール】を買っていく冒険者が多い。
【ハイヒール】だと値段が割高になってしまうようだ。
全て緑色に光っており、僕には区別がつかない。
「【ハイヒール】のさらに上位の【回復魔法】は無いんですか?
例えば部位欠損が治るような……」
「そうですね。
こちらでは扱っていません。
それに部位欠損まで回復というのは、王家が所有しているレベルのものになると思います」
そりゃそうか。
カルディさんでも知らないって言ってたしな。
「他にはどんな魔石がありますか?」
「こちらは【リカバリー】ですね。
SPを回復させますので、回復魔法に分類されます」
おぉ!
SP回復の魔法なんてあるのか!
「ただし、それほど需要は有りません。
SPよりもMPのほうが貴重ですから」
「なるほど」
確かに普通はそうなんだろうな。
「それから状態回復の魔法がこちらです。
毒を回復する【アンチポイズン】。
麻痺を回復する【アンチパラライズ】。
睡眠を回復する【アンチスリープ】。
混乱を回復する【アンチコンフェ】です。
こちらはそれぞれの魔法の使用者が買っていくことがほとんどですね」
「?
自分で使える状態回復の魔石を買うんですか?」
「そうです。
ほとんどの冒険者はこのような魔石は使わずに、毒消しポーションを使います。
ポーションもある程度の値段ですが、魔石を購入するよりは安いですからね。
状態回復の魔法を使える人は、ポーションを買わないかわりに、自分で補充しておくようです」
魔石を使わずに、そのまま自分で回復すればいいと思うんだけど……
「MPが切れてしまったとき用にってことですか?」
「いえ、魔石の状態回復魔法のほうがご自身の状態回復魔法よりも優秀なことが多いようです」
「えっとそれは、【アンチポイズン】などのスキルレベルが低いから、魔石に補充して使ったほうが強力ってことですか?」
「そのようですね。
状態回復魔法は、あまり使う機会がなく、スキルレベルが上がりにくいようですから」
なるほど、そういうことね。
「【補助魔法】も全てご覧になりますか?」
「はい、お願いします」
【補助魔法】の売り場では、黄色い魔石が光っている。
「こちらで扱っているのは、HPアップの【バイタルエイド】。
力がアップする【パワーストライク】。
耐久アップの【プロテクト】。
俊敏アップの【アジリティエイド】。
器用アップの【ヒットストライク】。
魔力アップの【マジックストライク】。
神聖アップの【ホーリーエイド】になります。
SPアップの【スキルエイド】とMPアップの【マナエイド】は需要がありませんので取り扱っておりません」
「なるほど、ありがとうございます」
【補助魔法】は置いてある魔石の数自体は少ないが、種類が多いな。
やっぱり【回復魔法】の需要が一番高いんだろう。
「では【攻撃魔法】をご案内しますね」
「はい、お願いします」
今度はこちらから言う前に、攻撃魔法の魔石を教えてくれる。
僕が全て聞きたいということが伝わったようだ。
「こちらで扱っている攻撃魔法は【ファイアアロー】【アイシクルランス】【ロックスマッシュ】【ウインドショット】のみになります。
火、水、風、土の四属性で全て直線的に発動する魔法です。
誰でも簡単に使えるので、この4つが最も需要が高い攻撃魔法になります」
「ありがとうございます。
【ファイアアロー】だけは補充できるな……」
「最後に生活魔法の魔石です。
こちらは使用した人間のMPを消費するため、魔法の補充は必要ありません。
部屋についている魔石と同じものになります」
「あぁなるほど。
確かに補充する必要はありませんね」
電気や水道のかわりになる魔石だ。
これは使用者のMPを消費するやつだな。
何気にこれが一番需要が高いらしい。
確かに超便利で、一度使うとやめられない。
「ありがとうございます。
大体わかりました」
「では、また魔法の補充よろしくお願いします」
その後僕はやることが無いので、部屋で久しぶりに【魔力操作】の修行をした。
今や超高速で魔素を循環させられるし、手に集めることもできる。
その後夕方にイヴォンさんの前で【ヒール】を30回ほど補充した。
これで今日の収入は9000セパタだ。
かつて無いほど暇だったが、それでこんなに稼いでしまった。
装備を買い替える日は近そうだ。
狭間圏はざまけん
【聖職者:Lv20】
HP:246/246
MP:2/515【聖職者:+50】
SP:0/99(↑+4)
力:21
耐久:58
俊敏:37【聖職者:-1】
器用:14
魔力:37【聖職者:+40】
神聖:73【聖職者:+50】
【回復魔法:Lv41(↑+1)ヒール:Lv46(↑+2)】
【毒薬生成:Lv5(↑+1) ポーション生成:Lv4(↑+1)】
【etc.(35)】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます