第17話

あの時から数百年が過ぎた頃。

ようやく私は諦めがついた。

もうどうでも良くなった。

このまま死んでも後悔はないし、生き続けていてもそれはそれでいいのかもしれないと。


そこからは自分が魔女だと思い出し、やるべき事をやろうと思った。首だけではやはり魔力は十分の一にも満たないけれど、知識や技術、時間は永遠と思えるほどある。


そこからの私は研究に打ち込む事にした。気づけば千年以上の時は経っていた。


ある時、ふと気づいた。首だけでは魔力量は少なくすぐ枯渇してしまう。

ある一定量を越えても魔力は使う事が出来るの。けれどその一定量を越して使い続けると途端に眠気に襲われて何日も時には何年も眠り続けてしまうようだった。

きっと切り離された胴体から魔力を無理やり持ってきているのかもしれない。無理して魔力を使う反動で眠りにつくのだと思う。何度も眠気に襲われる度に私の身体はまだ何処かで存在しているのだと思うと少し安心する。そう思いながら時を重ねていく。


ずっと一人だった私。


ある日、突然自分の子孫が訪ねて来た事に驚きを隠せないでいた。何故自分の子孫だと分かったのかと言えば魔力の質と言えばいいのかしら。

千年以上も経って正直分からない物だと思っていたのだけれど、微かに魔力の元となるものが王家の形と似ていたのだ。国が変われば血筋も絶えるものだと思っていたけれど、一族の誰かがずっと王族となっていたようだ。


小さな子は魔法に興味があると言って毎回塔に遊びに来た。最初こそは追い払っておしまいにしようと思っていたけれど、彼は私に恐怖する事も無く、ラナ、ラナと親し気に話し掛けてきた。


遠い昔、私が兄に付いて回った事を思い出した。

ツィリル王子は歴史書を持ってきてここ数百年の国の話を教えてくれた。そうして近況を知ることが出来たわ。


そして驚くことに皆魔法が使えなくなっていた。

王子を視ると魔力を持っている。

きっと何処かの時点で意図的に誰かが魔法使いの師弟制度を無くし、魔法を廃らせたのだと思う。何故そう思うのかといえば、あくまでも想像でしかないのだけれど、豊富な魔力を持っているのは貴族ばかり。


貴族が魔獣を倒すために命がけで働くのを嫌がったのだと思う。それこそ平民にやらせればいいと。これは諸外国も例外ではない。

魔力はあくまでも自分たちのステータスの一種。使用するものではないと。ギャランのような貴族ばかりだと有り得るわ。


魔法使いの師弟制度が無くなれば魔法が廃れてしまうのも仕方がない。もう一つ考えるとするなら過去に途轍もなく強い魔獣が現れて人間自体が数を減らしたのかもしれない。

そうなれば魔力を持つ人間とそうでない人間は入り乱れてツィリル王子のように魔力が豊富な者は激減するのだと思う。


乳母達の話しぶりから人間の数が激減したと聞かないし、貴族同士の婚姻が続いている事も変わらないようなので前者かもしれないわね。


そうしてツィリル王子は沢山の事を覚えたわ。

今後、彼は魔法が使える人達を増やしていくだろう。

もう塔に来ることはないけれど、暇さえあれば塔の中の魔法書を書き写していたわ彼等。


彼等のおかげで絶滅した魔法も復活したし、後はもう大丈夫だと思いたいわ。

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