ある日、弥生時代で激かわ卑弥呼と同居することになった
日菜島ニゲラ
第1話 髪飾りの魔法
目が覚めるとそこは見知らぬ土地だった。
「……ここ…どこだ……?」
さっきまで発掘作業をしていたはずだが。
「う…頭が……」
頭が締め付けるように痛い。
何故この見知らぬ土地にいるのか、痛みに耐えながら思い出していく。
……………………………………………………
ザクッ ザクッ
シャベルを使い、土を掘っていく。
ザクッ ザクッ
汗が滴り落ちても気にせずに掘っていく。
六月なのに気温が30度を超える真夏日に一生懸命掘っている人がいた。
彼の名は谷崎晴人(たにさき はると)。谷崎は小さい頃に親から弥生時代のことを聞き、魅了され、大学では考古学を専攻した。その後絶え間ない努力で調査員になり、今、弥生時代のころと考えられている遺跡を発掘調査しているところだ。
その遺跡はかつて卑弥呼が治めていたとされる邪馬台国の中心部と考えられている。
「……全然出てこないな……」
谷崎はここの発掘現場で採掘を続けてかれこれ半年ほど経ったがまだ弥生時代に関するものはまだ出ていない。
まだ出ていないからと言って焦りながら発掘作業をしていると発掘品の状態が悪化する可能性があるため、ゆっくりしていく。
今日も朝からずっと発掘調査をしていた。
「おーい、谷崎!」
「ん?どうした春樹」
作業を続けながら応える。
「どうしたって昼休憩の時間だぞ、……まさか時計も見ずに作業をしていたのか?」
ため息ながら話す彼は宮川春樹(みやかわはるき)。大学では谷崎と同じく考古学を専攻し、趣味が共通な事も相まって仲が良くなり現在では頼もしい親友だ。
「すまん、作業に熱中してた」
「お前の熱中っぷりにはいつも驚かせるよ」
感心半分呆れ半分で話す。
「なんか出たか?」
「ぜんぜん」
谷崎は肩を落としながら応えた。
「…そうか、じゃあキリがいいところでお前も休憩しろよ!」
「ああ」
宮川は他の調査員がいる近くのテントに行き発掘現場にいる人は谷崎だけになった。
「…ふぅ」
水を飲み、軽くストレッチをする。
「あと少し掘ったら、自分も休憩しよう」
ザクッ ザクッ
(…そういえば卑弥呼ってどういう人なんだろう)
卑弥呼。それは三世紀の初め頃いたとされる人物。古代中国の史書、<魏志倭人伝>にはその存在が記されていたがその頃の日本にはまだ文字がなかったため、日本には卑弥呼に関する書物は一切ない。資料が限りなく少ないことからその存在を否定している人もいる。
発掘作業をしている時、谷崎はふと思った。
「…卑弥呼ってかわいいのかな」
(まぁ、ずっと昔にいた人だしその容姿を知っている人はもういないし、でも気になるなぁ……)
「はぁ…俺もそろそろ休憩する……」
ガッ
「ん?」
シャベルに硬いものがあたったのを感じた。
「石か?…いやこれはもしかして!」
小さめのスコップに変え少しずつ掘っていく。その際竹べらも使っていく。それが半分くらい顔を出した頃、休憩時間は半分以上経ってしまった。
「これは…石の箱?」
(人骨でも入っているのか?いやこの箱はそんなに大きくないぞ)
それは縦横十センチほどの大きさだ。
「何か入っているのかな?」
谷崎は興味本位で箱の蓋を開けた。
「何だこれ髪飾りか?」
それは様々な装飾が施された、髪飾りだった。
「すごいぞこれ!しかもかなり状態がいい…急いで宮川たちに知らせないと!」
谷崎はみんなに知らせるべく、立ったとき。
ピカァ ピカァ
「えっ!?何で光ってるの!?」
何故か眩しくて光の在り処を探すと髪飾りの装飾部分が光っていたのだ。
「おーい!もうすぐ休憩時間終わるぞ!だから早く…」
谷崎を呼ぶために春樹がテントから出た時、
ゴゴゴゴゴッ
「揺れてる?地震か?」
その直後谷崎が立っていた地面が消えた。
「嘘!?崩落!?」
谷崎はすぐにに受け身の姿勢をとった。
「おい!谷崎!!」
宮川は急いで駆け寄る。
「返事をしろ!!」
いくら呼びかけても返事はない。
「クソ……」
穴の中を覗くが谷崎は見えない。
宮川は急いで他の調査員たちに伝える。
「発掘調査をしていた所が崩落した!谷崎が巻き込まれたかもしれない!早く110番を!!」
宮川は崩落現場を睨んで言う。
「大丈夫だからな。谷崎」
……………………………………………………
そして、今、見知らぬ土地にいる。
崩落に巻き込まれてあと、何故ここにいるのか考えてみたが物凄く頭が痛くなり、ここから考えるのはやめた。
遠くを見てみると発掘現場の近くになかったはずの森林があり、近くを見てみるとたて穴住居があった。
「何でたて穴住居が……?」
ますます混乱する。
「発掘現場じゃない。だとしたらここはどこなんだ?」
谷崎は呆然としていると、
「お前は昔に来たのじゃ」
誰かに声を掛けられ、後ろを振り向くと、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます