第22話 『モンスター退治へ行こう!』

ギルドでNo.1の冒険者パーティに見習いとして加入することになった俺は、最強の冒険者として教育される。




著者:ピラフドリア




第22話

『モンスター退治へ行こう!』





 再び、修行の日々が続いた。

 ウィンクの修行ては学問と魔法が半々になる。




「ではレジーヌ。ここの問題について答えなさい」




 ウィンクは黒板に描かれた文字を杖で示す。レジーヌは立ち上がると、




「はい。ここはですね…………」




 レジーヌが回答する。






 セルゲイの修行では今まで通りに、筋トレが中心だ。

 ドミニクの修行では実戦形式が多いが、剣の稽古を行う。

 クロエの修行では魔道具の作り方を学んだ。








 そうして修行の日々が続いていき、一ヶ月が経過した。




 修行が終わり、夕飯を食べた後、ウィンクは全員を集合させる。




「今日で今回の地図作成は終わった。それで明日から移動することになる」




 皆を集合させたウィンクは説明を開始する。内容はいつも通りだ。地図制作が終わり、また別の拠点へ移動する。




「次の目的地はベリル山脈だ」




 移動するということは、一旦修行が休みになる。しかし、その代わりに……




 俺は手を上げる。




「もしかして今回もあれ……ですか?」




 俺が嫌な予感を感じ取り、確認を取る。すると、ウィンクは頷いた。




「もちろんだ。今回もお前達、見習いには移動中馬車を引っ張ってもらう」




「やっぱりかァァァァァ!!!!」




 また辛い辛い移動の旅が始まるのだった。









 その頃、騎士団は捕縛した山賊を輸送していた。




「もうすぐで目的地だな」




「ああ、輸送しているのが大物だけに緊張したな〜」




 目的地が近づいてきて、気が抜けていた騎士達。そんな彼らの通り道、何者かが立ち塞がっていた。




「おーい、そこで立ち止まってないでくれよ。通れないじゃないか」




 先頭の騎士は道を塞ぐ人物に声をかける。しかし、その人物は退く気配がない。




「おい、聞いてるのか?」




 騎士がその人物を退かそうと手を伸ばした瞬間。人物に向けて伸ばした手が……。




「え……」




 切り落とされた。誰一人動いていない。動いていないはずなのだが……。




「うぎやぁぁぁぁ、俺の腕がァァァ!!!!」




 騎士の手が斬られて、護衛の騎士達も集まり出す。

 誰も動いていなかったが、どう考えても道を塞ぐ人物が怪しい。騎士達は剣を取り、警戒する。




「貴様、何者だ!!」




 そんな中、道を塞いでいた人物はゆっくりと振り返った。




「……お、お前は…………」









 現在、俺達は馬車を引っ張り次の目的地を目指して移動していた。




「はぁはぁ、疲れてきた……」




 山を越えて俺はボヤく。そんな俺達の隣を魔法で宙に浮いているウィンクが、




「まぁ最初より体力がついてきたんじゃないか。ここまできてまだ誰もダウンしてないからな」




 確かにウィンクの言う通り、まだ誰も倒れていない。一番体力のないエイコイもまだ元気に馬車を引っ張っている。




「それはそうですけど……もう限界ですよ…………」




「限界か。ならちょうど良い、着いたぞ!!」




 ウィンクがそう言って馬車の前に移動して馬車を止める。

 そこは紅葉の綺麗な真っ赤な森。最初はこの世界に秋があるのかとも思ったが、エイコイの話では季節で色が変わっているのではなく、この森全体がそういう植物らしい。




「ここが真っ赤に燃える山脈。ベリル山脈だ!!」




 俺達は馬車で移動してベリル山脈という、赤と黄色の葉っぱが彩る森へ到着した。




 馬車を止めると、早速拠点作りを開始する。拠点を作れそうな広い場所を探し、テントを立てて拠点とする。

 拠点を作り終えると、ウィンクは皆を集合させた。




「今回は前回よりも範囲がでかいため、地図の制作も時間がかかる。皆も頑張ってくれ」




 ウィンクの説明にパーティメンバーの三人は頷く。そんな中、見習いの俺は手を上げた。




「どれくらいいるんですか?」




 聞くかどうか迷ったが、修行が一旦終わるタイミングを知っておきたい。ゴールのないものよりもゴールのあるものの方がまだ頑張れる。




「だいたい二ヶ月ってところだ。その間お前達の修行もしっかりとつけてやる、安心しろ」




 そうなるとは分かっていた。まぁ、やるしかない。




 セルゲイは俺の隣に立つと俺の肩を叩く。




「今回もビシビシ鍛えてやるからなァ。楽しみにしておけよ」




「……はい」




 そしてまた修行の日々が始まるのだった。






 ウィンクの修行では魔法を使う訓練を行う。




「よし、あそこにある的を狙って炎を飛ばしてみろ」




「「「はい!!」」」




 森にある木を加工して作った的。それに目掛けて魔法で炎を飛ばす練習だ。まずは俺が前に出る。




「じゃあ、俺からやるよ」




 俺は両手に力を込める。魔力を手の先に集めて熱を帯びさせることで、炎の玉を作り出した。




「いけぇぇぇ!!」




 掛け声で気合いを出しながら炎の玉を飛ばそうとする。しかし、炎は空気が抜けたようにプシュ〜と萎んでいき、飛ぶことはなく消滅した。




「また……失敗か……」




 俺が魔法をうまく使えず落ち込んでいると、隣にいたレジーヌがニヤリと俺に突き飛ばして前に出る。




「なっさけないわねぇ〜。ここは私の本気ってやつを見せてあげようじゃない!!」




 次はレジーヌが両手を前に突き出し炎を生成しようとする。しかし、レジーヌは魔力を注ぐ力を間違えたのだろう。炎が完成する前に爆発を起こした。




「がぶあっ!?」




 爆発の影響でレジーヌは真っ黒焦げになる。真っ黒になったレジーヌを俺とエイコイが笑うと、レジーヌは目元をキリキリさせながら剣を抜いた。




「ぶった斬る!!」




「「レジーヌ!? やめろーー!!!!」」







 セルゲイの修行は今まで通りの筋トレだ。今回は、




「よし、今回はこの斧でここからあそこまでの木を切り倒す修行だァ」




 セルゲイはそう言ってずっと向こうを指差す。



「あそこまで……ですか」




「ああ、遅れた奴はァ……」




 セルゲイは両拳を握ると、指を鳴らす。




「どうなるかァ、分かるよな」




「「「はい!!」」」









 ドミニクの修行は剣の稽古だ。




「よし、今日も三人同時にワタシに切り掛かって来い」




「はい!!」




 俺とエイコイ、レジーヌの三人は同時に剣を振り上げてドミニクに攻撃を仕掛ける。しかし、ドミニクはあっさりと攻撃を躱すと、




「遅い!!」




 カウンターで三人に一撃、ゲンコツを喰らわせた。




「ちょ!? 反撃してくるんですか!?」




「そうしないと訓練にならないだろ」






 クロエの修行では魔道具の開発を行う。




「ということで、これが魔石の性質だ。理解したか?」




 長々と魔石について説明していたクロエは見習いの方を見る。しかし、エイコイは真面目に聞いているが、残りの二人は俯いて寝かけていた。




 クロエはニヤリと笑うと、とあるボタンを押す。すると、俺とレジーヌに電撃が流れる。




「「アギギギギギギ」」




「そこ寝ない!!」



「「な、なんで……痺れるゥゥゥ」」




「アタシが作った装備だからね。サボったら電気が流れるようにしてある」




「「そ、そんなああああああ」」




 こうして紅葉の土地で一ヶ月の時を過ごした。






 そしてとある日の朝。俺達見習い三人はウィンクに呼び出された。

 このタイミングで俺達だけが呼び出される。そのパターンで今回も何かあることが容易に想像できた。

 呼び出された俺達が並ぶと、ウィンクはマントの中から一枚の紙を取り出した。




「今回はお前達の修行として一つのクエストを用意した」




「クエストですか」




 前も同じようにクエストに行かされたことがあった。今回はどんなクエストなのか。

 真ん中にいた俺がクエストの紙を受け取る。




「ゴゴリン退治ぃ?」




 クエストの内容に俺は首を傾げる。ゴゴリンとはなんなのか?




 ゴゴリンという名前を聞き、エイコイとレジーヌは肩をビクッとさせた。




「ご、ゴゴリン!?」




「エイコイ、知ってる?」



 俺がエイコイに尋ねると、エイコイは頷く。そしてゴゴリンについて説明してくれた。




「ゴゴリンは人型のモンスターだよ。人と豚の細胞が影響して発生するんだ」




「子供ドラゴンよりも強いの?」




 モンスターといえば、俺が出会ったのはドラゴンだけだった。比べる対象としてドラゴンを出すと、エイコイは首を横に振った。




「戦闘力自体は弱い。だけど、厄介なのは人間の知性を持っているところだ」




 人間の知性と聞き、俺は唾を飲む。




「それってヤバいの?」




「ああ、武器を使えて、集団行動ができる。それだけで一気に脅威になる。油断をすれば、中堅の冒険者でもやられるんだ」




「えぇっ!?」




 俺はエイコイの話からゴゴリンのヤバさが分かり、一歩退く。そんな中、レジーヌは腕を組むと、




「何怯えてるのよ。この程度、私がいれば余裕……そう、余裕なのよ!!」




 そう言いながら、足はガクガクと震えている。

 レジーヌもゴゴリンは怖いのか……。




 怯える俺達にウィンクはやれやれと言うと、




「安心しろ。今回もお前達に見張りをつける。危険な場面があれば、助けに行ってやる」




「「「おぉ!!」」」




「今回付いていくのは……」




 ウィンクがそこまで言うと、ウィンクの後ろからクロエがひょっこり顔を出した。




「アタシがついていってあげるよ!!」




「今回はクロエに頼むことにした。何かあれば、助けには行く。だが、助けてもらえるからと油断はダメだぞ」




「そうだぞ〜。分かったかい、君達」




 クロエはウィンクの後ろから全身を出すと、腰に手を当てる。

 俺達は姿勢良く立ち、頭を下げた。




「「「はい、よろしくお願いします!!」」」




 こうして俺達はゴゴリン退治を行うことになった。








 ゴゴリンの居場所はクエストの概要に記載されていた。ベリル山脈の西にある洞窟。その洞窟にいるらしい。

 ゴゴリンの居場所を目指して、三人で歩いて向かう。道中で俺は歩きながらエイコイに尋ねる。




「なぁ、モンスターって周囲の動物の特徴に影響受けるんだよな?」




「そうだね。狼の生息地なら狼に近いモンスターが発生するよ」




「なら、ゴゴリンは人間と豚なんだろ? 近くに集落はないし、豚もいなさそうなんだけど」




 俺の疑問に俺とエイコイの間に、レジーヌが後ろから割り込んでくると、




「きっと山賊がその辺の洞窟を拠点にしてたのよ。その時に家畜も連れてたんじゃない?」




「家畜かよ」











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