第15話 ハギシリー

厩舎のホワイトボードに〇〇時 退厩 と書いてあった。思わずガッツポーズがでた。彼はクセのある一族で、みんなに怒られてる。飼い葉台の掃除のときは必ずちょっかいだしてくる。だから、対抗して箒で顔を撫でてやる。必死で箒を噛もうとする。それでも噛まれないように顔を撫でる。毎日の日課だ。

水やりの時は絶対噛んでくる。腹がたったから、ホースの水を顔にかけてやった。そんなのは一瞬おさまるだけで噛んでくる。ある時、気持ちいいかなぁと思って、口の横のところを撫でてみた。というより、指を伸ばすと噛まれそうなので、グーでグリグリするようにマッサージのようにしてやった。前歯をむき出しにして、音が聞こえるくらい奥歯で歯ぎしりをしていた。噛みついてくるタイミングを探してるようだ。嫌がりはしないが、究極に我慢してる感じだ。毎日、水やりの時ホースの先をバケツに突っ込み、あいた両手でグリグリしてやる、必ず前歯むき出し、奥歯歯ぎしり。バケツからホースを抜く時が勝負。噛まれるか、逃れられるか。明日からはもういない。淋しいが、嬉しさのほうが勝ってる。それは、彼に関わった人たちはそう思ってるに違いない。元気でな!

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