第四十四話 春

春か。もうそんな時期が近づいているのね。

まだ寒いからそんな実感がないんだねどさ。

暖かくなったらひっついて寝ることなくなるじゃん。夏なんてなおさら。

って今はベッドで寝る横にはあなたはいない。

だから今年の冬はお陰ですっごく寒かったわよ。

春の暖かさにも負けないあなたの体がすごく恋しい。


※※※

「昼間は暖房あると暑いですよね」

「うんうん。でも夕方、夜はまだ寒い」

と季節の会話はキリがない。


今日は家に美容師の來くんが来てくれた。助手の分二くんも。

家に来て髪の毛切ってくれるのも本当にありがたい。面倒だもん、寒いしーお店まで行くのもね。


そしてこの二人ともしばらくお別れ。春になったら海外に行くそうだ。

來くんの元婚約者で元モデルの也夜の元に行くんだとか。

だから最後に、と来てもらった。また別日で李仁の店で送別会するけど。


「今日はどうしますか?いつものようにそろえますか」

來くんの手先の器用さは惚れ込んでいる。パートナーいなければ……と思うぐらい甘いフェイスにスタイル。

優しくて、気がきく。大きな手、長い腕で抱きしめて欲しいくらい……。


バカバカバカ!


目の保養用だったからなぁー。


「じゃあ、バッサリとボブにして」

「えっ」

「春になる前に、ね」

「わかりました、かなり切りますよ」

「そうね、そんなに短いの子供の頃ぶりかも」

「シバさんといい、ジュリさんの髪の毛ざっくり切らせてもらうの、光栄です」

來くんはハサミを持った。


でもやはりまだ来ない春、首元出てて寒かった。


さて、今夜のシバとのテレビ電話。

彼は驚くかしら。

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