『竜の巣(ドラゴンズ・ネスト)』のメンバー、自キャラのステータスと共に異世界へと転移させられました
@cloudy2022
プロローグ/曲者たちの集い『竜の巣(ドラゴンズ・ネスト)』
『さぁさぁ! "F.F.O.ギルドバトル"も最終決戦! ギルドマスターである互いの残りHPもあとわずか! 最後まで立っているのはどちらだろうか!?』
「オラァアアアアアアア!!!」
「ゼァアアアアアアアアアアアア!!」
現代の世の中で最も人気といっても過言ではないVRMMORPG――"ファンタジー・フロンティア・オンライン"、通称「F.F.O.」。
それは広大な異世界――"フロンティア"を舞台とした王道のゲームである。
「『"
「『"
どこまでも広がるファンタジーな世界を、複数の基本ジョブとそれに付属するスキルで冒険し、それらを成長させながら組み合わせることで上位ジョブ、または混成ジョブに昇格できるゲームシステムが人気を博し、凄まじいプレイ人口を誇っている。
「いいぞギルマス!! そのまんま削り切れ!!」
「お兄ちゃん頑張れー!」
「押されてんぞ大将!! いつものガッツはどうしたぁ!?」
「すっげぇ……! これが1ゲームの熱量かよ……!」
更にF.F.O.内では、『ギルド』と呼ばれるグループを組むことにより、生産と商売を主に行っているギルドではそれだけでゲーム内の物資の流通を構築でき、ダンジョン攻略を主に行っているギルドでは大勢で巨大なボスに挑めるなどマルチプレイ的な要素も充実している。
そして、それらギルドが星の数ほど存在する規模であるため、F.F.O.では定期的なイベント及びアップデートが施され、プレイヤーを飽きさせないような工夫がされている。
そして今、F.F.O.の中でも1番のビッグイベント――『全ギルド対抗戦』の最終戦が行われていた。
円形の巨大なコロシアムの中心では、2人の戦士がしのぎを削り合っている。
「ハァアアアアアアアアアアッ!!」
1人は片手に無骨な棒を持ち、もう片方の手には装飾の凝った直剣を握る軽装備の戦士。
彼は多角的な跳躍を織り交ぜ、相手の防御を削り取るまるで『嵐』のような猛攻を仕掛けており、相手を着実に追い詰めていっている。
「くっ……!」
もう一人の戦士は要塞のような体格と城壁のような大盾を構え、軽装の戦士の猛攻を耐えながら隙を窺っていた。
その構えには一切の揺るぎがなく、例えるなら『山』のようである。
軽装の戦士優勢の拮抗状態が続いていたが、勝負は重装備の戦士が動き出したことで変わりだす。
「『"地心の構え・解"』ッッ!!!!」
「ガッ!?」
相手の攻撃を受け続け、受けた力を渾身の一撃へと変えて相手に放つスキル――『"地心の構え"』によって放たれた拳が、攻撃を放とうと無防備になっていた軽装の戦士へと直撃する。
その一撃が繰り出される前から行われていた2人の戦いの影響でコロシアムの地面がめくれあがっていたが、その一撃によって吹き飛ばされた軽装の戦士は瓦礫を粉砕するほどの勢いで叩きつけられてしまう。
「カッ、カハッ……!?」
「好機! ぬぅん!!」
「まっ、ずっ……!」
地面を何度も転がりやっと勢いが止まった軽装の戦士に追い打ちをかけるように、重装備の戦士はその巨体に似合わぬ速度で駆け出した。
軽装の戦士は起き上がろうと棒を支えに立ち上がろうとするが、ダメージが大きいのか体勢が崩れてしまう。
"絶体絶命"……その言葉が似合う状況だった――
「キュアアアアアアアッ!!!」
――2人の間に乱入者が現れるまでは。
「ぬぅっ!? き、貴様は!?」
「ッ! ウォオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
「ぬぉおおおおおおおおおおお!?」
「キュイアアアアアアアアアア!!」
乱入者――黒い鱗を纏う『ワイバーン』に一瞬気を取られた重装備の戦士の隙を突き、最後の力を振り絞って駆け出した軽装の戦士は直剣と棒を繋ぎ合わせ、一本の『槍』を作り出し、流星のように重装備の戦士を貫こうとする。
その一撃は重装備の戦士であってもただでは済まない、それどころか一撃で墜とされるほどの威力を秘めているという確信があった。
重装備の戦士は慌てて接近するのをやめ、回避をしようとするのだが、そこをワイバーンが妨害する。
「終わりだぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
そうして出来上がった好機を逃さず、軽装の戦士は重装備の戦士を貫いた。
~~~~~~~~~~
「えー……オホンッ! それでは! 第12回! 全ギルド対抗戦! 全部門総なめ優勝を祝して! 乾杯!」
「「「「「「「「「「カンパーイ!!!」」」」」」」」」」
ここはF.F.O.内に存在するギルドが多数集まって構成されている都市――"大都市『ユグドラシル』"。
その一角に存在するギルド――『
「いやぁ~! まさかまさかの全ギルド対抗戦バトル部門4連勝目とか! よっ! 流石は『
「うへへへ……あの試合を見たF.F.O.未プレイ勢が始めれば新規プレイヤーになって、新規プレイヤーが増えれば仕事が増えて、仕事が増えれば収益がっぽり……うへへへ……ビールが旨くなるぅ……」
「うふふ、サキちゃんは飲み過ぎよ。ゲームとはいえあんまり飲みすぎてマニーを使いすぎないようにね」
「おうギルマス! 明日はどうせ休みなんだろ? ならまた修行でもしようじゃあないか!」
「あっははは……皆酔ってますねこれ……あ、ミユキちゃん、そこのコカトリスの丸焼きちょうだい」
「はい! ユーリさんどうぞ!」
「あ、私は仙桃パフェちょうだい。もちろん支払いはギルマスで」
「
「俺、どっちも食う! ミユキちゃんが作るスイーツめちゃくちゃうめぇからな!」
「あ、あはは……あんまり使いすぎないであげてくださいね?」
「考えとく! しっかしまぁ、よくやるよギルマス。4連勝目とか期待も重かったんだろ?」
「まぁまぁ、そういうのも乗り越えてこそのルークちゃんじゃない? ま、私の活躍もあったんだけどね~♪」
「うむ。流石はギルマスでござるな。拙者もまだまだ精進せねば」
ある程度は綺麗にされている外見のギルドの内部の奥にはそれなりの大きさの空間が広がっており、そこでは様々な年齢の男女が集まって各々好きな食材で彩られた食事をとっている。
そんな彼らが口々に呟く『ギルマス』という言葉、それを向けられている青年――"ルーク"は額に青筋を浮かべながら口を開いた。
「おう、お前ら。自分の金じゃないからってなーに飲みまくり食いまくりしてんねん。特にそこのござる丸。お前はなーに初手でボッコボコされとるんじゃい」
ギルマスことルークからそんな恨みがましい言葉を向けられながらも、このギルドのメンバー達は一瞬キョトンとしたものの、すぐに噴き出すかのように笑い出した。
「え~? 俺は鍛冶部門で優勝したんだけど、な?」
「そうだよギルマス~。私だって魔道具部門で優勝したんだよ~?」
「うふふ、私もよルークちゃん? 少しくらい労ってくれてもいいんじゃないかしら?」
「そうだよお兄ちゃん! 私だって料理部門で優勝できたんだし! もうちょっと褒めてもらえると!」
「俺はイベント中の売り上げで1位取れたから、かな?」
「私は売り子としてベイトの補佐やってたんだよ~?」
「俺は戦闘部門で一番槍の先鋒だったんだぜ? 俺のおかげで皆の負担が軽くなったと言っても過言ではない、だろ?」
「
「ぬはははは! 儂は貴様を勝利に導いた副将だからな!」
「次鋒の拙者もでござるよ。決勝のあれは……相手方が数段上だっただけでござる」
口々にからかいの言葉をルークにかけていくギルドメンバー達。
そんな彼らの言葉を(主にござる口調の男に対して盛大な怒りをにじませながら)聞き、ルークは爆発した。
「じゃあさぁ! なぁんで俺は椅子にグルグル巻きにされて動けなくなってんだぁ!!?? 俺今回の主役だろぉ!?」
「「「「「「「「「「あれだけ全身ボロボロになっても精神だけで動いてるような奴は早く休め」」」」」」」」」」
「ごもっともッ! ごもっとも、だけどッ! 俺の優勝賞金どんだけ使ってるんだよ!?」
「「「「「「「「「「ギルドの金だから」」」」」」」」」」
「ちくしょう! そしてござる丸! てめぇのそれは誇れねぇからなぁ!?」
爆発するルークを肴に、各々楽しんでいく。
個性の集合体ともいえるこのギルドだが、彼らの団結力はすさまじいもの。
そのことは、今回の第12回全ギルド対抗戦全部門優勝という功績からうかがえる。
それが彼ら――『"
そんなギルドを取りまとめる若きギルドマスターの名前こそ"ルーク"。
全ギルド対抗戦の目玉――バトル部門の大将を務めた男であり、現在進行形で手に入れた賞金をギルドメンバーに湯水のごとく使われている苦労人でもある。
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