第7話:王女様

俺は驚愕した。まさか助けた馬車が俺のあこがれだったティアナ王女様の物だったとは・・・。道理でこのお嬢さん、誰かに似ていると思った。


もう、一年分の運を使い果たしたんじゃなかろうか!


「ほ、法王の娘さんでしたか・・・。しかし、私に空位となった宮廷魔導士が務まるかどうか・・・。」


「あなたなら、きっと務まりますわ。だって、Lv5の防御魔法でさえこの猛吹雪を防げないのにそれを防いだばかりか、ドームの中を暖かくして私たちを救ったんですもの!ぜひ、ぜひ!我が国の宮廷魔導士にしたいものですわ!!」


ティアナ王女様の美しい顔がこんなに近くに・・・。俺にとっての高嶺の花と呼ばれた彼女の白くて綺麗な手が、俺の手を握るものだから心臓の鼓動が早くなっていく。


一年どころじゃない!こりゃ一生分の運を使い果たしたぞ!!


「お嬢様、はしたないですぞ。」


「ご主人、鼻の下伸びてる。」


「あっ、ご、ごめんなさい!」


「いえいえ!こちらこそ・・・。」


馬車の中は、しばらく静かで熱い空気に包まれた。


静寂を破ったのは俺だ。このままだと、恥ずかしさで押しつぶされそうだったからだ。


「あの!宮廷魔導士になるには条件が必要だったりしませんか?」


「あ、はい・・・条件としては、闇属性をのぞく6つの属性の内3つ以上の魔法を使えるか、たとえ一つしか使えなかったとしても誰も使えない強力な魔法を放てればオッケーです!」


「なるほど・・・でも、俺はその・・・無魔人ですよ。」


「確かにそうですが、スキルであのような魔法とよく似た・・・いえ、それ以上の何かを放てるのは正直に言ってすごいです!もっと自分に自信を持ってください!!」


「お嬢様、お嬢様!」


「・・・また、近づいておりますです。」


彼女は、俺の体に乗っかるような姿勢になっていることに気づいてまた顔を赤らめた。


「・・・はっ!ご、ごめんなさーい!!」


いつの間にか丸くなっていたソーニャは、俺のそばでやれやれと言わんばかりにあくびを一つした。


・・・・・・・


王都につくと、高そうな服屋で馬車が止まった。


「あの、お嬢様・・・ここは?」


「王族行きつけの服屋です。ここで、あなたの服を新調します。」


「ありがとうございます。さすがにこのまま王城はまずいですものね。」


「うーん・・・。」


「お、ちょうどいいタイミングで起きたな。ソーニャ、一緒に服屋に行くぞ。」


「ご主人・・・臭いのです。」


「あー、確かにこれじゃまるで奴隷だな。あの店に入るのはちょっと抵抗感あるな。」


「でしたら、いい考えがありますわ。ハロルドさんとソーニャさんさえよければ。」


「・・・え?」


・・・・・・


「いらっしゃいませ。おー、これはティアナ王女様!いつもおひいきにさせてもらっています。」


「久しぶりですね店長。」


「・・・で、本日はどのような服を?」


「私ではなくてこの奴隷の服を見繕ってくれないかしら?」


俺は少し前に出た。


「ずいぶんボロボロですね。」


「奴隷商人の方にひどくこき使われていましてね。かわいそうだったからちょうど抜けた掃除担当の穴埋めとして雇い入れたの。」


「お優しいですね。・・・よかったな奴隷、王族に買われるなんてこと滅多にないぜ。うらやましいぜコノヤロー。」


「おっしゃる通りです。」


俺は、いつも着ていたものより比較的高そうな服を買わせてもらった。


「悪いですよこんな高いの。」


「いえいえ、それ、あの店で一番安い奴ですよ。」


「え?そうなんですか!?」


「ハイ。」


「・・・でも、君がプレゼントしてくれたものだ。大事に着させてもらうよ。」


「ふぇ?!そ、そんないいですよー。」


容姿だけじゃなく性格も可愛い!憧れの子にご奉仕されるなんて夢のようだ!


「ほ、ほら!馬車に戻らないと!爺やとソーニャさんが待ってますよ!」


半ば強引に押される形で馬車に押し戻された。

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