エアー・ウォーリアーズ:外れスキル『空気操作』を授かった魔法を使えない俺は、前世の記憶が甦ったので魔法第一主義の国で『無双』する。
小林ミメト
第1話:マホウスキー男爵家の日常
俺は、雪が降る人っ子一人いない未舗装の街道に場違いともいえる豪華な服を着てたたずんでいた。
頭を岩にぶつけたのか、近くの岩に血がついていてそれが俺の方へ点々と続いていた。
血がにじみ出てくる頭をさすりながら俺はつぶやいた。
「俺は捨てられたのか・・・。」
・・・・・・・
魔法第一主義の大国「マーゴニア法国」、この国で魔法が使えない者は、無魔人と呼ばれその家族も末代まで蔑まれる。
世間体を気にする貴族であるならば、これ以上の責め苦はないだろう。
そんな国の中でも名門と謳われていたマホウスキー男爵家に15年前、待望の長男が生まれた。
両親からハロルドという名をつけられた彼は、誕生と同時に家族みんなから祝福された。
だが、祝福モードは私の発言のせいで彼の誕生からわずか数時間で終わった。
なぜなら、鑑定のスキルを持っている私が、代々この家に生まれ来た赤子の額に手をかざして、その結果を両親に伝えるのだが・・・。
「い、今何と言ったのかね?フレー・・・。」
「申し訳ありません旦那様、未だに自分でも信じられないことなのですが・・・。彼は魔法が一生使えない特異体質なのです。」
私は彼の父バーモント男爵の威圧に押しつぶされそうになりながらも頭を下げた。
「ああ・・・。」
彼の母親は出産での体力消耗と、先程のショックが重なって気絶してしまった。
「畜生!なぜだ・・・なぜだ!!」
怒りのあまり、男爵様はあろうことか腰の短剣を抜いて乳母が抱いている赤ん坊を刺そうとした。恐らく、証拠隠滅を図ろうとしたのであろう。
慌てた私は男爵様の凶行を体で止めた。
「キャー!」
乳母は目の前で起きた惨劇に悲鳴を上げた。
男爵様の短剣が私の右脇腹に深く突き刺さっていた。
「どけ!邪魔するならたとえこの家に長年使えた貴様でもこのまま・・・。」
血反吐を吐きながらも私は必死で弁明した。
「グフ・・・お待ちください・・・確か、魔法が使えなかった場合にのみユニークスキルが神から授かるはずです。」
「誕生から12年たった子供に義務付けられている神殿でのスキルギフトの話だな。」
「は、ハイ・・・もしかしたら魔法と見間違うほどの奇跡を起こせるスキルが現れるかもしれません!その時まで待てばよいのです・・・。」
それを聞いた男爵様は、怒りを何とか沈めて、短剣を彼女の脇腹から抜いて胸ポケットのハンカチで拭って鞘に納めた。
ハンカチはそのままそばにいたメイドに渡した。
「それもそうだな・・・妻にもそう伝えておいてくれ。」
そう言ってこの家の主は部屋の戸を開けてメイドたちとともに出ていった。
「か、かしこまりました。」
血まみれの脇腹を抑えつつも、私は扉に向かってお辞儀をした。
それから3年後に次男が生まれ、彼は問題なく魔法が使える子供だったために家族からの寵愛を受けて育った。
・・・・・・・
私、ハロルドは齢10歳にしてこの世界を呪った。
私は、魔法が使えないせいで食事を一日に一回しか与えてもらえず、体が横にも縦にも広い弟には魔法の練習だとして、地面に突き刺した丸太に縛られて弟が得意とする火属性魔法の的にされた。
メイドたちは止めるどころかケラケラと笑って誰も助けようとはしなかった。
「うぐあ・・・あ・・・。」
「はーっ、気持ちがいいぜ!おい、無魔人。練習に付き合ってくれたお礼にいいことを教えてやるよ。」
「・・・な、んだ。」
「魔法には5段階の強さがあるんだ。そして今の僕はレベル2の火属性魔法しか打てないが、もうすぐでレベル3の魔法も打てそうだ。今回の練習でそう確信したぜ。」
「それが・・・どうした?」
「火属性魔法は練習時の危険性から、Lv3に達した魔法使いは貴重戦力ゆえに近衛騎士団に引っ張りだこだという話だ。」
「・・・。」
「光栄に思え、お前は将来の近衛騎士団長になる僕の練習台にしてもらえているんだからな!ワハハハハハ!!」
高笑いしながら弟は、メイドたちとともに屋敷へ戻っていった。
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