第4話:俺にも分けて!

 俺はこのとき心に決めていた。


 そいつがどんなやつなのか、俺の義父にふさわしいかどうか、品定めしてやろうと。


 だって、心配じゃん。離婚してすぐに結婚するとか。もしそれでまた離婚することになったら母さんがかわいそうじゃん。


 だから、その声が聞こえたとき、俺はバッと勢いよく振り返った。

 



 そいつの第一印象は、「かっこいい」だった。


 なんかほんとにかっこよかった。こんな奴がこの世にいるのかってぐらい。


 知的で柔和な瞳を見ても、頭がいいことや、優しいことがうかがえる。


 …あの母さんが言ったとおりの人だな、と思う。母さんにも人を見る目はあったのか。


 そして、その後ろに目をやった瞬間、俺はまた驚くことになった。

 


 そこには少女がいた。しかもかなりの美少女が。


 髪型は黒髪のショート、服はパーカーにジーパンとかなりボーイッシュだ。


 母さんから聞いた話なら、彼女が妹となるんだろう。


 だが、彼女は明らかに俺と同い年、もしくはそれ以上だ。


 妹と聞いたから、中2ぐらいの子を想像していたのだけど。


 …同じ生物なのになんでこうも見た目が違うんだよ!?あれか!?DNAから違うってか!?そうかそうだなそうだよなぁ!俺は恨むぞ母さん父さんご先祖様!


 …俺の知り合いの親族全員美形なのは気のせいだろうか。母さんも父さんも、じいちゃんばあちゃんも、いとこも、みんな美男美女ばかりだったのは気のせいだろうか。


 ああ、気のせいだ気のせい。記憶違いだ記憶違い。だってほら、正月に親族が全員集まった時に、1人だけナンパされたことない奴がいたじゃないか。




 …俺か。




 …………………………もう、いっか。



 だが最後に一つ、これだけは神様に言わせてもらいたい。




 もうやめましょうよ!!!命がも゛ったいだいっ!!!!※泣いてない




 ……俺ごときがこんなこと言っちゃってスンマセン、ハイ。





 2人が俺たちの向かいの席に座る。


「綾子さん、早いね。いつ来たの?」

「それが、時間間違えちゃって…」

「あはは…さすが綾子さんだね。」

「それ、褒めてる?」


 2人のそんな会話を聞きながら、俺はスマホにご執心の美少女を見つめていた。


 美しいっていうよりも、かわいいっていう感じだ。


 でも、こんな人見たことないな。引っ越してきたのか?


 と、そこで、スマホから顔を上げた彼女と目が合ってしまった。


「顔、何かついてる?」

「え?あ、いや、そういうわけじゃないけど…」

「そ。」


そう一言だけ言うと、またスマホに戻ってしまった。


「あ、君が聡太くんだね。僕は白石 寛太かんたって言います。よろしくね。」

「…どうも。」

「そんなに固くならないでいいよ。あ、陸も、スマホばっか見てないで自己紹介ぐらいしなさい。」


 陸と呼ばれた少女は、


「白石陸。15歳で高校1年生。」


 とだけ言うと、またスマホに戻ってしまった。


「全くこの子は…ごめんね聡太くん。一応自己紹介してくれる?」

「はあ…ええと、石村聡太で15歳です。」

「へえ、同い年だったんだね。誕生日は?」

「2月14日です。」

「へぇ~ちょうどバレンタインなんだね。」


 あまりそれを言わないでほしい。


 誕生日なのにチョコを一個も貰えないことが虚しくなってしまうから。


 …親族全員最低100個はもらってるのにね。(中2含む)


 でも、同い年ってことは、俺、義弟になるんじゃないか?俺、誕生日遅いし。


「あの、陸さんは誕生日いつなんですか?」

「陸でいい。あと、敬語やめて」

「あ、ごめん」

「陸、スマホやめなさい」


 そう言われてスマホから顔を上げた陸はこう答えた。


「2月15日。」

「…へ〜」


 まじかよ。誕生日1日しか変わんないじゃん。


 俺の誕生日の次の日にこの人の誕生日か。連日パーティだな。


 …母さんだけケーキ無しでいいかな。あ、でも、そんなことしたら殺されるか。


 やっぱ母さんのだけわさび入れてやろう。うん、それがいいや。


 …どっちにしたって殺される未来しか見えん。

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