新たな局面へ、そして…
第21話
翌日、3日ぶりに自分の
きっちり3分でシャワールームを出ると、それから20分で身支度を済ませる。ラフ・サンデルスとコンビを組んでからは
今日から〝新しい配置〟に就くことになるはずだった。
そうして、フェルタの二つの太陽から目を護るためのサングラスを掛けて部屋を出ると、アパートの正面に停車した車の脇に立つラフ・サンデルスに出迎えられたのだった。
それは思いもよらないことだった。
ベアタは、サンデルスの長身を下から見上げるようにしながら近付いて行き、訊いた。
「なんでここにいるんです」
「
先に助手席に収まったベアタは、
「――コンビは解消じゃないんですか?」
サンデルスはキーを回しながら応じた。
「PSIの対番は〝一生ものの付き合い〟……そう教わったろ」 サングラス越しの目の表情は見えない。
洒脱にそう応じる〝
〈サンデルス〉の家の者と〝一生ものの付き合い〟とは――。
幸い、そんなベアタの表情も、小さな顔の半分ほどに被さった大きめのサングラスで見えはしない。
「なら、わたしは〝当たり〟ですね」
ベアタは、感情を乗せず、
その内心では
――わたしに
が、そんな妄想は、一年半前、初対面で対番として紹介されたときに雲散霧消していた。
実際、
フェルタで最も栄えるアイブリーで政治家や実業家を輩出する名門一族の御曹司と、紛争を抱えるサローノからの避難民でしかない自分。夢の中でも釣り合える気がしない。
「……そうだよ」
そうして、そのときのベアタの心の内を知ってか知らずか、どこまでも気さくな〝
「また随分と
今日、ベアタの
彼は時おり、このような〝しようもない軽薄さ〟を装うことで
そんなとき常のベアタは付き合うことはしないのだが、このときは、
「相手が〝女〟だからですよ」
ピシャリと言って黙らせてやった。
それからしばらくサンデルスは黙ってハンドルを繰り、車を〝
「
「…………」 ベアタは、たっぷり時間を掛けて応じた。「もし
「それはそうか」
彼がそう苦笑して応じたのは、〝そういう流れ〟を予期していたからだ。余裕があるとき、それを隠して敢えて
「ま、それはさておき――」
サンデルスが〝何とは無し〟を装って言った。
「……ベアタ、〝何があっても〟君の対番は僕だ。それは忘れずにいてくれ」
ベアタは、サンデルスの声音の微妙な変化に気付いた。
――ああ、そういうことか。
出し抜けに、ベアタは、助手席から身を寄せるようにしてサンデルスの横顔を見上げた。
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