第5話 香り
コトリと。
音がして。
カップが置かれた。
コーヒーの。
香ばしい匂いが。
鼻腔をくすぐった。
「ありがとう・・・」
私が言った言葉に、貴方は微笑んでくれた。
幸せな時間。
二人で作っていく。
「十秒・・二十秒・・・」
秒読みが聞こえていた。
毎日が。
追い詰められて。
そんな時。
あの人が、救い出してくれた。
(ありがとう・・・)
もう一度、私は呟いた。
心の中で。
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