生け贄ダンジョンマスター
ことはゆう(元藤咲一弥)
聖女からダンジョンマスターに強制ジョブチェンジしました
「きゃああああああ!」
落ちる。
落ちる。
どこまでも?
ぼふん!
柔らかな衝撃を受けて私は気を失った。
「ん……」
「漸く目を覚ましたか、我が主」
「え?」
私は自分の目の前に美しい銀髪に褐色、青い目に、角の生えた人物がいるのを理解した。
「わ、私、目が見えてる……⁈」
その事実に驚いた。
そう私は目が生まれつき全く見えなかったのだ。
なのに見えている、世界が明るくて眩しい。
「生け贄として其方が落とされたのは覚えているか?」
「あ……」
その方に言われて私は思い出す。
今日は突然教会からの仕事で浄化の依頼が来たと言われて仲間達とでかけた。
しかし、それらしい気配がない。
急に馬が暴れて私は落下すると、仲間達が引きずり、谷らしきところに突き落とそうとして、抵抗したが突き落とされた。
「聖女をこの地に生け贄として落とすことでダンジョンを封印しようとしたが、甘かったな」
「ダンジョンの封印?」
私は問いかける。
「其方はこの世界がダンジョンで出来ていることは知っているな?」
「はい、多くのダンジョンがあり、魔物が住み着いていて危険だと……」
「余がいるから危険なのだ、魔王クライノートがいるからな。その余を封印し弱体化したダンジョンをあさり尽くそうというのが人間共の考えなのだ」
「酷い……」
「それに其方も許せぬであろう? 今まで尽くした仲間の裏切りを」
私はこくりと頷いた。
「ならば、ダンジョンマスターとして、様々なダンジョンを作り人間共に思い知らせてやろう!」
「でも、どうやって?」
「ダンジョンマスターならステータスが確認できるはずだ」
「すてーたす?」
「こう言う画面だ」
魔王──クライノートさんは指を鳴らすと何か空中に表示が浮き出た。
魔王クライノート
レベル2000
主:ソフィア
私もまねて指を鳴らす。
表示が浮き出た。
ダンジョンマスターソフィア
聖女レベル78
ダンジョンマスターレベル1
使い魔:魔王クライノート
「あの、あまり私の役目ないんじゃ……?」
「阿呆、其方にはダンジョンを作り人間共を餌食にするという重要な役目があるんだ、ほれそこに何かあるぞ」
「ちゅーとりある?」
チュートリアル?
あれ、どこかで聞いた覚えが……
私は混乱しながら其処を押すとテーブルのようなものがあらわれた。
トラップ、魔物配置、宝箱など色々あり──
思い出した。
「なんかこれゲームで見たことあるー!」
「げーむ?」
私はクライノートに話し始めた。
そう、私には前世があった。
この世界とは異なる世界の住人だった。
名前
死因は過労死。
「其方……とことん運がないな」
「ほっといて下さい!」
私はテーブルに向かう。
「通路はなるべく低く、細く……コウモリを一杯だして毒持ちにして……」
指でなぞりいいながらいうとモニターが表示された。
その通りになっていた。
「ここは水場と思わせておいて、通ると下のさらに深い水場に落ちてアクアレディ達の餌食に……」
「で、ここはガスを吹き出させておいてコウモリをたくさんと……」
「でフロアボスはこのこ、ミノタウロス」
「ふむ、なかなか様になっているな」
クライノートさんがのぞき込みながら言う。
するとピコンと表示があった。
「なんだろう……」
『冒険者が来ました、動画配信しますか?』
「どうがはいしん?」
「試しだし、やってみよう」
私ははいの部分を押す。
某有名動画サイトの画像に切り替わる。
タイトルを見ると──
「それゆけダンジョンマスター!~冒険者達をやっつけろ!~」
「……もっとなんかいいタイトルなかったん、なかったん?」
それでも物好きが現れる。
『おお、なんだこれ冒険者がダンジョン探索してるぞ』
『コウモリの群れに襲われてるけど、狭いから剣とか魔法が使えないみたい』
『このダンジョン作った奴性格悪いな』
『このダンジョンを作った人が配信してるんだろう』
『リアルみたい、すげー』
『お、分かれ道だどっちにいく?』
『体力に余裕がある奴らが先に左に行くみたいだ、余裕ない連中は待機してから右行くみたいだな』
『水場か……お、ずり落ちたぞ!』
『うわ綺麗な水で出来たねーちゃん達一杯、それに取り込まれて溺死してく!』
『えげつねー!』
『こっちのパーティ全滅か……お、切り替わったぞ』
『右にいった連中は、なんか靄というか埃っぽい感じ場所にでたぞ』
『お、さっきのコウモリ軍団に襲われてる』
『って爆発した⁈』
『粉塵爆発? それともガス爆発?』
『どっちにしろ、全滅だな』
『なかなか面白い動画じゃん』
『次回もみよっと』
……
「おお、やるではないかソフィア」
「はい!」
どうやらチュートリアルは成功のようだ。
ピコーン!
『ダンジョンマスターレベルが3になりました!』
「3かぁ、道は遠いなぁ……」
「うむ、次はこのダンジョンへくる連中が多くなるだろう」
「へ?」
「封印が失敗したのが向こうに分かってる状態だからな」
「えー!」
「その為にダンジョンを作り直し、モンスターを様々配置して妨害するのだ! まぁ、最終手段で余が出るが、ダンジョンの一部が吹っ飛ぶからダンジョン内でなるべく倒すように」
「はーい……」
前世日本人、今世元聖女で生け贄にされて救われたダンジョンマスターになった私。
前途多難だ……。
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