113 リンとアニスの様子
まえがき
今回はアニスとリンに焦点をあてた3人称です。
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血が嫌いだった
人を殺すのが嫌いだった
赤いナイフを買った
血の色が紛れると思ったから
血を吸い続けたウチの手みたいに
新しいナイフは赤く光った
汚れた手で女の子の髪を梳く
嘘吐きの口で女の子の唇をなぞる
汚れた身体で女の子と身体を重ねる
血が嫌いだった
人を殺すのが嫌いだった
返り血を浴び続けたウチの髪の毛みたいに
赤いナイフは手に馴染んでいた
「死ぬときは――カワイイ女の子に刺されて死にたいな」
***
シドが《
戦場から少し離れた森林地帯にて。
「う、うう……ここは……痛た……っ!?」
「目を覚ましたっスか? リンリンちゃん?」
「あなたは……アニス様……っ!」
リンリンは目を覚ますが、まだ頭がはっきりとせず、記憶も混濁している。
だが、脇腹を走る痛みで全てを思い出した。
「(ご主人様の気を引くために、私は
シドを結界の場所まで誘導するために、リンを誘拐したアニス。
作戦通りシドを結界に閉じ込めることに成功したアニスは、毒で気を失ったリンを森林地帯まで連れ込んだ。
ヨハンナからはリンを殺すように指示されている。
リンはシドの悪行に一切加担していない、ただの無害な少女に過ぎない――今はまだ。
彼女を生かすことで禍根を残し、後々いらぬトラブルに発展することを避けたいがために、アニスにリンの殺害を指示したのであった。
だがアニスは1つ、ヨハンナに条件を出した。
『ヨハンナばあちゃん、その代わり――殺す前にリンちゃんの身体を好きにしていいっスか?』
『はぁ、いいでしょう……好きになさい』
アニスの女癖の悪さはヨハンナにも知られている。
汚れ役を押し付けた見返りとして、アニスの条件を飲んだのであった。
「ごめんねアニスちゃん、初めての友達って言ってくれたのに、こんなことして」
「い、いえ……聖教会の方々がご主人様の命を狙っていることは承知の上です。ですので、仕方ないことだと、理解していました」
「ふーん、それじゃあ、これからウチがリンリンちゃんを辱めても、それも〝仕方ないこと〟で済ませてもらっていいっスよね?」
「がッ!?」
アニスはリンの細い首に手をかける。
気道が締まり、呼吸が阻まれ、リンは苦痛に顔を歪めた。
「リンリンちゃんの大好きなご主人様の命運はここまでっス――せめてもの償いに、同じ墓の下に埋めることを約束するっス」
「か……かは……ッ!?」
「シドお兄さんが死んじゃうのは、リンリンちゃんのせいっスよ? リンリンちゃんが弱いから、シドお兄さんがリンリンちゃんのことが大好きだから。リンリンちゃんはシドお兄さんにとっての、1番大きな弱点なんス」
呼吸困難で喘ぐ間も、アニスの言葉はしっかりと耳に入ってくる。
「(私は……ずっとご主人様の隣にいたい……でも、私はいつも足手まといで……ご主人様にご迷惑をかけてしまう……)」
自分が足手まといであり、シドの弱点になっていることなど――リンは重々承知していた。
王都の屋敷に王宮騎士団が乗り込んで人質にされたこともあったし、ゴブリンの森に作った隠れ家にアニスが尋ねに来た時も――今思えば、あれも自覚がないだけで人質だったのだろう。
だからリングランド村跡地で、奴隷の所有権を飲食店を営むロゥロゥに移さないかと提案された時――一瞬だけ、その提案に揺らいでしまった。
――私のせいで、ご主人様に迷惑がかかるなら、いっそ私はいない方が……。
しかし、その直後に言われた言葉で、リンは考えを改め――己の決意を固めた。
『お前が選べ、好きに生きろ』
『分かりました――私は、好きに生きることにします』
自分はもう、庇護されるだけの奴隷ではない。
自分の意思で、シドの隣に立つことを選んだ。
ただ守られ、愛玩され、寵愛を受けるだけの奴隷でもペットでも人形でもなく、シドを支えることの出来る家族になろうと決心した。
修羅の道を歩むシドと共に――己もまた、同じ場所に堕ちる覚悟は――既に決まっている。
「ッ!」
――ズルッ!
リンは脇腹に刺さったままの短剣を掴み、激痛を堪えながら引き抜いた!
「【サンダーエンチャント】――【
――突ッ!
狙うは急所――心臓。
盗賊クラスが習得する短剣スキルの補正もあり、切っ先が吸い込まれるようにアニスの胸部へと向かい――
そして――
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あとがき
今回のAIイラストは、決戦前夜の夜に、どうすればいいのか分からず祈りを捧げるフロウです。
https://kakuyomu.jp/users/nasubi163183/news/16818093074071897515
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