第43話 掌返し×2
「おお、流石はわが友だ。見事な戦いぶりだったぞ」
実践試験が終わって戻ると、どういう訳だかザケン王子が笑顔で親し気に話しかけて来た。急に友とか言い出して、頭でも狂ったのだろうか?
「時に、ミツルギ殿はフェイガル王国とは特に専属契約を結んでいないとか。我が国と契約してくれるなら、最上級の貴人対応でお迎えするとお約束しよう」
俺の能力を目の当たりして、有用だからスカウトしてやろうって魂胆の様だ。分かりやすい掌返しである。
しかし……さっきまであんな態度取ってた相手を、よくスカウト出来るとか考えるな、こいつ。待遇さえよければ
「確かに専属契約を結んでる訳じゃないが、一応フェイガル王国の市民なんでね。まあ気持ちだけ貰っておこう」
ザケンの言う通り、仕事を受けているとは言え俺の身分自体は別にフェイガル王家所属という訳ではない。なので、所属を別の国に変えたとしても文句を言われる筋合いはなかった。あくまでも俺の受けた仕事は、アカデミーに参加して魔王を倒す事だけだからな。
とは言え、答えは当然ノーだ。別にふざけた奴からの誘いだからという理由だけではない。国なんかに所属したら、色々と縛られるのは目に見えている。なので、例えこれが他からの誘いであったとしても答えは同じだ。
「ま……まあ何もすぐ決める必要はないだろう。我が国は魔法大国だ。ミツルギ殿ほどの魔法使いは、我が国でこそその真価を発揮するという物」
ザケンや奴の取り巻きは、その大半が魔法タイプだった。国がその傾向にあったのなら、それも頷ける。まあ魔法大国を名乗る割に、本人達はエイナス以下な訳だが。
「俺の魔法はあくまでも補助だ。別に魔法使いじゃないから、真価とかはどうでも言い。悪いが、優秀な奴をスカウトしたいなら他を当たるんだな」
ザケンがしつこく食い下がって来るが、時間の無駄なのでバッサリと切り捨てる。まあ言った事も別に嘘じゃないしな。俺のメインはあくまでも近接戦で、魔法はその補助に過ぎない。
「ぐぬぬぬ……私の誘いを断った事、後悔する事になるぞ」
俺の言葉に、ザケンが悔し気に歯ぎしりする。交渉は粘り強くって言葉は、彼の辞書にはない様で安心した。実践されてもひたすら迷惑なだけだからな。
「後悔はしないさ。それより、エナイス姫との約束はちゃんと守れよ」
「ぐ……ま、まだ賭けの決着はついていない!最後にどんでん返しが待っているのが賭けという物だ!平民風情が調子に乗るな!」
既に四種の内、三項目で俺が圧勝している。なので例え最後のテストを俺が受けなくても、結果がひっくり返る可能性はゼロだ。こいつの頭の中では、一体どんな計算式が出来上がっているのか?本当によく分からん男である。
これに嫁がされるとか……
エイナスもアレだが、流石にこいつよりかはマシだ。そう思うと少々哀れに思えて来る。まあやらかした事を考えたら、こいつに幸せな結婚生活を送る資格がある訳もないので、仕方ない事ではあるのだろうが。
「では、最後のテストへうつりますので。受験者は全員案内に従って別室に移動してください」
実践テストが終わり、最後のテストへと移る。最後は精神力の測定だそうだ。
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