第28話 アコイスさんの後輩
アコイスさんと会ってから3日が経ち、また僕はあの裏路地へと向かっていた。
アコイスさんは何を俺にしようとしているのかさっぱりだった。
ただ唯一分かるのは、アコイスさん以外の人がなにかしてくれるのだろうということだけだ。
裏路地を曲がり、3日前待ち合わせた場所に着いた時、もう既に先客がいた。
そこには白い髪を靡かせるアコイスさんともう一人───
「おー! お前がグラリスじゃな?」
そう言って、すごいスピードでこちらに突っ込んできた知らない女性だった。
「え、えっと.....そうですけど.....どなたでしょうか.....」
「ごめんねグラリス君。私の代わりにあなたを強くしてくれる人を連れてきたの。彼女はランド・ルーシャ。私が学生時代の二つ下の後輩よ。魔術だったら私と同じくらい……いや、私以上ね。申し分ない実力者よ」
そう説明を受けた俺はちょっと不安であった。それというのも
「わっはっはっはっ! ルーちゃんいつもは冷たいのに今日はなんか暖かいな! ワイは上機嫌じゃ!」
───この性格である。
語尾にじゃをつける人は生きてきた中で初めて見た。
一人称がワイなのも初めてだ。
おいおい本当にこの人がアコイスさんよりも魔術が優れていて実力者? 嘘をつかないでくれよ。
嫌な空気を感じたのかランドさんは俺に向かって話しかけてきた。
「なんじゃなんじゃ? その顔は! ワイが教えるのが嫌っていうのか?」
「嫌っていうかなんて言うか……本当にアコイスさんより凄いんですか……?」
俺がそう言うとランドさんは「ぎゃぁぁぁあ!」と叫んで膝から崩れ落ちた。
俺は驚き「あっ! ごめんなさい!」と反射的に謝ってしまった。
「グラリス君。彼女ちょっと変わってるけど.....腕は本当よ。いつもこんな感じで実力を偽ってると思われて落胆するの」
なんか面白い人連れてきたな……
でも、悪い人では無さそうだ。
色々考えていると、崩れ落ちていたランドさんが急に飛び上がり俺の顔にこれでもかと言うくらいに顔を近付けてきた。
俺はちょっと引き気味に「な、なんですか」と聞くとランドさんはにひひと笑いながらこう言った。
「ワイが変なのは昔から言われてるからもう慣れたのじゃ。だがしかーし! ワイもあんたのことまだ認めてへんからな〜?」
「と、言いますと……?」
「今からワイと勝負や。その魔剣使ってな」
「……え? 実戦って事ですか?」
「そうじゃ」
俺はアコイスさんに助けを求める視線を送った.....が、
「まぁそうなるとは思ったわ。魔力結界はもう張ってるからいくら魔力の激しい戦いしてもある程度は怒られないと思うから大丈夫よ」
……えーーー! 肯定派だったーーー!!!
「え、ちょでも.....まだ僕対人したことないですし.....ましてこの魔剣でなんて.....」
「そんなんでダンジョン潜れると思っとるんか? 甘いんじゃよ考えが」
顔を離したランドさんの目付きが一気に変わった。
このチャンスを逃せば俺はもう後がないことはわかってる。
……よし。やるしかない。
「分かりました。もし僕のことを認めてくれるのであれば」
「あぁ、もちろん責任もってワイがあんたを強くしちゃるぞ」
こうして俺とランドさんの一騎打ちが始まった。負けられない。ここで負ける訳には行かないんだ。
絶対に認めてもらって……最強を目指すんだ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます