番外編 バルコット家のメイド エイミー

 私はバルコット家のメイドのエイミーです。

 この家にはある時ダンジョンで拾ったという子どもを引き取り、グラリス様と名付け、家族として一緒に暮らしてきました。


 私はなんだかグラリス様が本当に子どもには見えないのです。なんか私より大人っぽいというか……まぁ私が子どもっぽいだけですかね?


 不安の吐け口はいつもグラリス様。いつも私の言葉を理解しているかのような顔をして聞いてくださいます。


 グラリス様と一緒に暮らし、成長して、あーんしてあげたり、初めてのおねしょを掃除したり、一緒に散歩したりと私はグラリス様が大好きなのです!


 そして今日もグラリス様とお散歩に来ています。


「エイミー、はっぱ、ある」


 そう言ったグラリス様は走って葉っぱの方へ行ってしまいました。そんなところも可愛くて好きなのです。


 でも私の今の使命はグラリス様を危険からお守りすること! 直ぐについて行きますよ!

 なんて思った矢先、


 ドテッ


 グラリス様が転んでしまいました! すぐに向かわなければ!


「グラリス様! 大丈夫ですか!」

 と、私は走って追いかけたのですが……


 ドテッ!


 グラリス様よりも盛大に転んでしまいました……。恥ずかしい……。これじゃぁ守れるものも守れませんよ……。


「いてててて……グラリス様はご無事でしょうか……」


 自分の心配なんかよりグラリス様の安否を確認しなければ! と思い聞いたのですが、


「だいじょうぶ! えいみぃ、だいじょうぶ?」


 思ったよりも大丈夫そうで私を心配する余裕もあるみたいですぅ〜……。


「……は、はい! 私は大丈夫です!」


 私は負けじとすぐに立ち上がり、スカートに付いた砂を払ってグラリス様の所へと向かいました。

 恐らくですが膝擦りむいて出血もしてそうです……でも我慢我慢です!


 何故かわかりませんが、スカートを覗かれてる気持ちになりましたが、多分気のせいでしょう。

 私はグラリス様の手を取り、立ち上がらせました。


「えいみぃ、けが、してる」


 バレてしまいました〜……。どこまで出来た子なんですかグラリス様! そんなとこも好きです!


 私は「大丈夫です!」と言いながらグラリス様の頭をくしゃくしゃと撫でました。


 するとびっくりです! 私がなにか話してましたがそんなのはもうどうでも良くて! グラリス様が! 私の怪我を! 治癒魔法で! 治してくれたのです!


「……グラリス様……。やっぱりあなたは天才です!! 帰ったらすぐ報告しましょう!!」


 なんだか嫌な思い出が蘇っちゃ居そうになりましたが今はグラリス様のことで頭がいっぱいなのでそんなことどうでも良くなりました。


──────


 家に帰り、さっきあったことをラミリス様とグラディウス様にご報告をして、後日グラディウス様が魔法をお見せになってくれることになりました!

 実はこれは私も少しばかり楽しみなのです。


 そしてグラディウス様の休日の日。その日がやってきました!


 グラディウス様は大きな火の玉を作ってみてくださり、私はずっとそれに見とれていました。


 私は思わず拍手をしてしまっていました。それに合わせてグラリス様もぺちぺちと可愛い拍手をしていました。


「ちゆ、ぞくせい、なに?」


 そんなことをグラリス様が聞き始めたのです。こればかりは本当に天才だと思いました。賢いとかのレベルじゃありません! 天才です!


 でも私は無属性魔法は使えません。もうグラリス様に抜かれてしまいそうです。

 そんなときグラディウス様は私の方に話題振ってくださいました。


「ちなみにだがエイミーはA級魔法使いなんだぞ。な、エイミー」


 そうなんです。実は私A級魔法使いなんです。S級じゃないのかよ! って言うツッコミはお断りです。A級でも凄いんですよ? 魔法使いの上位5パーセントくらいしかいないって噂ですからね!


 ……まぁ、でも私は無属性魔法使えないので……。


「私……A級ですけど……無属性魔法何も使えないんです……」


 私は素直にお教えしました。でも少し恥ずかしいかったのでグラリス様の目線まで状態を落としました。

 お2人は「そうだったのか!?」と驚いた様子で。まぁ無理もありません。


「無属性魔法を使えないA級なんてただのお荷物ですよ。だから冒険者じゃなくてメイドになったんです」


 なんでか分かりませんが次から次へと言葉が出てきます。それと一緒に魔法学生だった頃の嫌な思い出も出てきました。


「脳筋お荷物なんかと誰がペア組むかよ」「なんかエイミーさんって……少し変わってますよね」「エイミー。そろそろ無属性魔法は使えるようになったのか? ははははは」


 自然と目線が下に向きます。もうやめてください。思い出したくありません。


 その時でした。2つの小さな何かが私のほっぺたをロックしました。そうしてその2つの何かは私の顔をグラリス様の方へと向かせてきました。


 その時に気が付きました。2つの小さな何かはグラリス様の手だったのだと。その瞬間、小さかった何かはとても大きく、優しい手に感じました。


 グラリス様は私と目を合わせてにひひと可愛く笑って見せてくれました。


 全ての感情が溢れだしそうになりました。泣きそう。でも泣いちゃダメ。


 ーー惜しくも一滴涙はこぼれてしまいました。


 グラリス様は気が付いたでしょうか。私は誤魔化すようににひひと笑い返して上げました。


「なんかすみません! 暗くしてしまって! では私は掃除の時間ですので」


 涙が溢れ出てしまう前に私はバルコット家に背を向けて逃げるように家の中へと向かいました。


「エイミー! これからもよろしく頼むぞ!」「エイミー。いつもありがとね!」


 やめてください……もっと涙が溢れてきちゃいますから……。


 涙で視界が悪くなって転けた話は恥ずかしいので割愛します。


 グラリス様。あなたはやっぱり私よりも大人っぽく見えます。そんなグラリス様が私は好きです。


 この好きは人としてか、それとも異性としてか。

 そんなこと分かりません。まだ幼い彼がとっても大きく見えるのです。まるで同い年の青年とお話してるみたいです。


 でも、ひとつ言えるのは今私はとても幸せです。


 バルコット家の皆さん私は皆さんが大好きです!!

 転んだ後私たちは4人顔を合わせて大爆笑しました。

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