第1章 幼年期
第3話 日常
「グラリス。お父さんはね、ものすごーく強いんだよ」
そんなことを聞かされながら俺はお母さんに身体を洗われていた。
お父さんはこの世界で最強と呼ばれる2つのパーティのうちの1つ、グランディスのリーダーらしい。
まぁなんだろう。最強パーティが2つってことは最強じゃないじゃないかとも思ったが、それは置いといて。
お母さんはそれ以外にも色んなお話をお風呂に入っている時にしてくれる。
俺が言葉を理解していることを知っているかのように沢山話しかけてくれるおかげで俺も色んな知識が身についていった。
例えば、冒険者の役職には剣を使って戦う剣士、魔法を主体として戦う魔法使い、その両方を扱う魔剣士が存在するということ。ちなみにお父さんは3つの役職の中で1番珍しい魔剣士らしい。
俺も大きくなったら魔剣士ってのになってみたいな。こうスパン! って切ってババッ! と魔法攻撃。いやぁ、こんな厨二病みたいな事が現実でできるなんて夢にも思わなかったな。
そのほかに、この世界には
「それでねお父さんはしっかりしてそうに見えるけど意外とおっちょこちょいでまたそんなとこが可愛くてね。それでそれでね……」
惚気が始まったらにひひとこのベイビースマイルで上手く話を流す。
奥さん惚気けるのはいいですけど僕、一応あなた方の子どもですからね! 普通我が子に惚気ける親なんていませんからね!
そんなこんなで俺はお風呂を済ませてもらった。
──────
「いただきます。ラミリス様」
食事の時間だ。
お母さんは身体はあまり良くないが、料理だけはと言って毎日作ってくれる。
エイミーに全部任せるのもあれだからとか言っていたが、恐らく趣味の範囲内なのだろう。
ここだけの話エイミーが料理が苦手なのは本人から沢山聞いてる。良かったなエイミーよ。
「ふー、ふー、グラリス様。あーんですよ」
俺用に作ってくれたお粥のような物をエイミーからあーんしてもらった。うまい。そして苦しゅうない。
俺はにひひ、とベイビースマイルを見せつけた。
「わぁ〜グラリス様! なんとお可愛いこと〜」
俺がエイミーに笑顔を見せるとこんな感じに毎回目をキラキラさせて褒めてくれる。これは話せない俺の欠かせない日課である。
エイミーは俺の笑顔が見たいがために沢山ふーふーして沢山あーんしてくれる。
「エイミー私の子だからそろそろ子育てさせてちょうだい。エイミーのご飯が冷めてしまうわ」
優しい口調でエイミーにそう伝えると「ありがとうございます」と言ってエイミーはお母さんにスプーンを渡した。
エイミーはスプーンを渡してからすかさず自分のスプーンを掴み「いただきます!」と勢い良く2度目の挨拶をしグラタンのような物をふーっと1回息をふきかけて口の中に放り込んだ。
一口目を2、3回咀嚼をしたあと、エイミーはとても美味しそうにバクバクとグラタンを食べ進めた。
はぁ……なんと可愛らしい子なんだ。恐らく高校生だった頃の俺と同い年、いやそれよりも年下だと思う。そんな子がこんなにもしっかりしていてでも自分に素直でちょっぴりドジで。完璧なメイドだと言える。早く成長して沢山お話がしたい。
こうして俺はお母さんにご飯を食べさせてもらい無事完食することが出来た。
「ラミリス様! 今日も美味しかったです!!」
エイミーのその声が今日も家中に響き渡った。
──────
ご飯を食べお昼寝をした後、俺はまた探検を始めた。子どもの好奇心舐めるでないぞ。
俺は今、書斎にいる。絵本のようなものから、俺の元いた世界で言う、ある魔法を使う物語のような、ものすごく分厚いものまで沢山の種類の本があった。
かなり広い書斎を四つん這いで移動していると一際オーラを放っている本を見つけた。それは1番奥の本棚の一番下の段にしまわれていた。
俺はなんだろうと言う興味本位で両手を使って頑張って引っ張った。なかなか抜けなかったが1分ほど格闘してようやく抜けた……と、思ったら抜けた反動で俺は後ろにゴロゴロと2回転ほど転がってしまった。
いててと腰をさするふりをしながら、体を上手く使いゴロンと起き上がり本を見てみると抜かれた衝撃でページが開かれていた。
俺はオーラなどお構い無しに開かれたページを覗き込んだ。その時だった。
ペラペラペラペラペラペラペラペラ
本はものすごい勢いでページをめくりだし、ものすごい風が吹き上がった。それと同時に赤、青、白、紫、黄色などその他無数の色の光が現れた。
「ばぁぁ?」
俺はなんだこれとキョロキョロ見ていると、空中に待っていた光が全て俺の小さな身体目掛けてなかなかのスピードで飛んできた。
俺は反射的に目を瞑ってしまった。
なんだなんだこれは。よからぬものを見つけてしまったかもしれない。
赤子ながら割と焦った俺は、もう何の変哲もないその本を頑張って閉じ、頑張って本棚の元の場所へと戻した。
危ない危ない。今日はもうリビングに戻ってエイミーちゃんに構ってもらおう。
そう思った俺は四つん這いでとぼとぼとリビングへと向かったのであった。
後に知ることとなるが、この本の最後のページに書かれている言葉。
それは、「選ばれし者」である。
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