第20話ユアンside
クソ兄貴が!!!
いい加減にしろよ!!!
頭の中は兄への罵倒で一杯だ。
よりにもよって……エンリコ第一王子を調教するな!!!
幾ら庶子とはいえ腐っても王族だ!
「何をそんなこの世の終わりのような顔をしてるんだ?」
「兄貴のせいだろ……」
「ん?何のことだ?」
「王族を辱めて……不敬罪で打ち首だぞ……」
「ユアンは心配性だな」
何を暢気な!!
兄貴は事の重大さを理解していないのか!?
ローゼンバルク公爵家も此処までか……。
俺も連座で死刑確定だな。
「何を心配しているのか分からないが“彼”の事なら大丈夫だ。陛下の許可は取ってある」
「…………は?」
「エンリコは随分と
「……」
兄貴が言うには、エンリコ第一王子は王位簒奪を計画し実行する寸前だった。それを事前に防いだのが兄貴という訳だ。しかもこの王位簒奪事件を表沙汰にしないように手を打ったのも兄貴。
「王家は公爵家に借りがあるからな」
だから大丈夫だと言いたいらしい。…………それは兄貴に借りがあるのであって公爵家は別と考えるべきでは?そもそもの問題はソコじゃねぇ!
エンリコ第一王子は、外交官として国を出た。暫く帰ってこないそうだ。逃げたな。王子自身は、
はぁ……公爵家は兄貴の代で終わりかもしれない。
兄貴と俺は結婚していないし、子供もいない。
そうなると当然、次の当主は誰になるんだ?って話が親族の中でも出てくる。というかもう既に問題になっていやがる。
筆頭候補は従兄弟たちだ。
だが兄貴が「従兄弟の子供達は皆優秀だ」とか言っちまったもんだから更に後継者問題が悪化した。
潰し合いが加速しているのは絶対に兄貴のせいだろう。
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