その99 今後の計画
「陛下、あまりウロウロしない方がいいのではないでしょうか……」
「あれ!? あまり歓迎されていないムード!?」
「いえ、国のトップである陛下が城からホイホイでるのは大丈夫なのかと」
そろそろ言っておいた方がいいのではと思い、進言する。周囲にいる騎士達は俺の言葉に深く頷いていた。進言してくれ。
「ラッヘさんの言う通りだよね。あ、フォルスー」
「ぴゅーい!」
「エリード、裏切るのか!?」
「いや、別にそういうわけじゃないよ父上。ほら、外交を僕に任せるとか」
「ええっと、そのあたりは俺達の居ないところでやっていただければ……それで、どうされましたか?
とりあえず親子で言い合いが始まりそうだったので話を変えることにした。
すると陛下は手をポンと打ってから口を開く。
「うむ。ラクペインからの報告でここへ来たのだ。新しいドラゴンを連れて帰ったと聞いてな」
【わし?】
「お、やっぱり喋るんだ。大きいなあ、これで空を飛べるんだろう? それはともかく、一応この目で確認すべきだと思って父上と来たという訳さ」
「やはり脅威かどうか自分の目で確かめねば」
要約すると『新しいドラゴンを見たかった』ということのようだ。
なので少し脅かしておくとしよう。
「ですが、やはりドラゴンは危険なので自重していただけると幸いです。この
「毒……!」
「なんと……!」
これには流石に驚いたようで、顔が引きつっていた。次回以降、一考してくれるとやりやすい。
「かっこいいなお前! いや、フラメもドラゴンって感じだったけど、毒を持っているなんてドラゴンらしい」
【お、わかるか兄ちゃん! せや、毒持ちドラゴンはポイズンドラゴン様以外だとわしら
「あれ!?」
エリード王子は目を輝かせてシュネルに近づき興奮気味にそんなことを言う。シュネルも乗るんじゃあない。
「あはは……」
「まあ、恐ろしい生き物であるというのはアースドラゴンで承知している。それでもお主達が連れているという時点で危険度はかなり低いと判断した次第だ」
「今後どうなっても知りませんよ?」
【よっしゃ、気分がいいから空の散歩や! 乗ってええで!】
「行くな!!」
【ぐは!?】
「ちぇー」
また調子に乗って飛ぼうとしたシュネルの頭をはたいておいた。王子は残念そうだが、今は違う話をしないといけない。
「それで、用件はなんです?」
「いや、このシュネルというドラゴンについてだな。経緯を聞いておこうと思ってきた」
「そうでしたか。ご足労痛み入ります。後で謁見を申し入れようと思ったのですが」
「そしたら新しいドラゴンを見れないじゃないか」
正直だった。
ひとまずアイラとセリカ、それとドラゴン達に陛下の相手をしてもらい、俺は庭用のテーブルセットを用意する。
テーブルにフォルスとフラメを置いて、再度話し合いが始まった。
経緯をさっと話したところで、陛下が顎に手を当てて唸る。
「ふうむ……黒いドラゴンか。その者が病を撒いていると」
「可能性の話ですが、俺の知る研究者はそのように語っていました。これはグレリア夫婦が確認した病原体のサンプルだそうです。そちらの研究者へお渡しください」
「任されたよ。それで、国を挙げて情報が欲しいということだね」
フォルスの頭を撫でながらエリード王子も事情を承知したと口にする。それに陛下が続けた。
「承知したぞラッヘ殿。フォルゲイト国は黒い竜の捜索に協力すると約束しよう。エムーン国はその研究者たちが伝えるとして……他国にも打診をしておこうか」
「ありがとうございます」
こういうところは話が早くて助かる。
今後はギルドや商人達にお触れを出して、ドラゴンの情報がさらに集まるようにしてくれるとのこと。
今までもそれなりにあったが、たまたま目撃したパターンばかりだった。
これからは冒険者達から「探す」ことも増えるかもしれない。
【……ひとつ忠告だ。病が治っても性格の悪いドラゴンは一定数いる。オレ達のように接するのは難しい者もいることは理解しておいた方がいいぞ人間の王よ】
「む、なるほど。フラメ殿のように話が分かるドラゴンばかりではない、と」
「人間もそういう人が居るしね。この前のヒュージってやつみたいに」
「ぴゅい!!」
「お、なんか怒ってる? なにかあったのかなセリカさん?」
「それが――」
と、ちょっと脱線してヒュージの話をした。すると王子は肩を竦めて鼻で笑う。
「人間にもロクでも無い奴がいるからねえ。ドラゴンさらに意思疎通ができる知恵があって力も強いとなると面倒くさいことこの上ないね」
【うむ。シュネルのようにいいやつも居るが、見極めは重要だ】
「フラメは賢いからねえ」
なんかいいことを言っているフラメの背中をアイラが笑顔で撫でてやっていた。
食料問題とかもありそうだが、ドラゴンは意外と共存できそうな気がする。
「そういえば王妃様は?」
「……」
「……」
「え!? な、なにかあったんですか!?」
話がひと段落ついたところで、セリカがいつもなら一緒に居るはずの王妃様について尋ねた。すると陛下と王子は冷や汗をかきながらそっぽを向く。
「……母上になにかあったわけじゃないけど……」
「今日は貴族とのお茶会でな。どうしても出なければならなかったのだ。今日、帰ってくるとは思っていなかったからな……」
「あー……」
これは二人が戻ったら色々と詰められそうな形になるな。一緒に来れるようになるまで我慢すべきだった……そう思いながら俺は穏やかな空を見上げるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます