その97 実になじむ
「うわあ、これはいい眺めね」
「町が小さいよー!」
「ぴゅいー♪」
さて、衝撃の研究成果から一夜明けた今日、俺達は空に居た。
どうしてもパティが空を飛びたいというので飛んでみたというところである。
命綱を括り付けて、俺・セリカ・パティ・グレリア・フォルス・フラメというメンツで乗っている。
「重くないか?」
【うっへっへ、このくらい屁でもありまへん! 馬二頭を持ってもいけるでー!】
「おお、頼もしい。フラメより小さいのにね」
【フレイムドラゴンと一緒にしたらあきまへんて……フィジカルの時点で、一対一をして勝てる要素がありまへん】
「その口ぶりだと、数がいれば勝てるのか?」
一対一というのを強調していたので尋ねてみると、
【最低でも十体は居ないと勝てまへん。通常のドラゴンと違って、わしらには毒や麻痺の攻撃があるさかい、それらを駆使すればまあ……って感じやなあ】
「そこは人間も同じだもんね。昨日のヒュージって奴は一人でラッヘさんには勝てないし」
「さすがに大勢を相手にはできないぞ?」
【それはお前が優しいからだろう。戦う必要がない相手には意識しないで手加減をしていると思うぞ】
そこでフラメがそんなことを言う。買い被りすぎだと思うけどなあ。打たれ強いのは確かだけど、鎧のおかげでもある。
【単独でフレイムドラゴン様を倒せる人間が弱いわけあらへんねん……】
「おにいちゃんはとても強いんだよ! ねー?」
「ぴゅー♪」
パティが俺に抱きつきながらフォルスに同意を求めていた。昨日の夜、パティと一緒に遊んだのでかなり緊張はほぐれたようである。
「それで、これからどうするんだい?」
「一度、フォルゲイト国の王都にある屋敷に戻ろうかと。その、研究の情報を教えてもいいのか?」
「ん? まあ構わないよ。全世界での脅威となっているドラゴンを止められるなら安いものだ。報酬はラッヘにもらっているし。一応、こちらの陛下にも報告はするけどね」
グレリアは微笑みながらそう言ってくれた。倒す方向にシフトするよりは、といったところだ。生け捕りは難しいので、俺がその場に居なかったら討伐も視野にいれるとのこと。
「そうか……助かる」
「ならアイラさんに会ってから、黒いドラゴン探しね。今までも手を抜いていたわけじゃないけど、折角だし陛下にも協力してもらいましょう」
「そうだな……国を挙げて調査をしてもらった方が精度はあがるか」
調査だけでも危険が伴うものの、早期発見、早期解決と考えればいいかもしれない。報酬は俺から出してもいいしな。
「ならエムーン国にも、研究成果報告ついでに依頼を出しておこう」
「いいのか?」
「問題ないさ。
それは助かるな。他国にも伝手を作っておいて正解だったというわけだ。
師匠の身内だけど。
「今後、急ぎの案件があったら、パライズに任せればいいわね」
「パライズ?」
「この子の名前よ!」
「お前また勝手に考えていたのか……」
セリカが
すると――
【ダサっ!? わしが麻痺針もっているからパライズは安直やで!?】
「ダサイ!? なによ! 一生懸命考えたんじゃない!」
【あいた!? ラッヘさんやめさせてえな!?】
「落ち着けセリカ、俺もその名前はよくないと思う」
「うう……」
流石に三回目なのでその辺は理解してくれたようだ。なので今回は俺がつけることにする。
「そうだな……シュネルなんてどうだ? 『速い』という意味を持つ言葉だ」
【お! ええやん! わしは速いで! そこはフレイムドラゴン様にも負ける気はせえへんからな!】
【ふむ、いいのではないか? どうだセリカ?】
「いいです……うう……」
「いじけるなって。あ、でも子供の名前は一緒に考えたいな」
「子供……!!」
「おう!?」
なんとなくそんな言葉が出てしまった。と、思っているとセリカは顔を輝かせて詰め寄って来た。
「一緒に考えようね! うん、ちゃんといい名前を考えるわ!」
【二人の子ならしっかり面倒を見ないとな】
「ぴゅーい♪」
「お前は面倒を見られる側だろ。生意気な」
「ぴゅい!」
フラメならともかく、フォルスはまだまだ赤ちゃんである。俺が鼻の先を指でぐりぐりしてやると、抗議するかのように俺の指をぺちぺちと叩いて来た。
「お前も大きくなるといいな」
「なるわよ! ウチの子だもの」
【ええ話やで……。よっしゃ、不肖このシュネル、どこまでもついていくで!】
「おー! たまには遊びに来てね」
【もちろんやでパティ】
なんかパティに気に入られたシュネルがそんな約束をしていた。
そんな感じで遊覧は終わり、降りてくる時に町が一時騒然としたがシュネルの上に俺が乗っているのを確認した時点で解散となった。
子供たちは乗りたそうだったが、身内以外に乗せるわけにはと断っておいたが。
そして俺達はグレリアの下を離れ、再びフォルゲイト国へと戻ることにした。
そういえばまた一頭増えたけど、町中に入れて大丈夫だろうか?
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