第48話 「亡命者」

教会を破門されたドレファスは、弾劾裁判を思い出していた。


「何故だ!!あの証拠があるだろ!!鑑定結果も間違いない」


教会に戻った俺は、弾劾裁判にかけられた。


「可哀想に、ニセ聖女に騙されるなんて、証拠の鑑定結果は、黒と出ている」


「なんだと?」


「あなたはニセ聖女の魔力にやられたのです」


「そんなはずはない!!」


「#自壊__・__#が使えないのではないですか?」


「うっ!!」


「つまり、あなたはニセ聖女の#魔力__ドク__#に侵されたのです」


「なんだと?」


「ニセ聖女の#魔力__ドク__#によって、#自壊__・__#が使えなくなった。しかも、聖なる儀式でも自壊は復活しなかった。それは、今回の戦闘に参加した騎士団全てに共通している。もちろん、例外なくドレファス、君もだ」


「それで聖なる誓いを受けさせたのか?」


「そうだ。結果は失敗した。つまり、君は神を信じていないのだ」


聖なる誓いが#自壊__・__#をできるようにする為のものだったとは



すると木槌を大きく2回打つ音が鳴った。


「ドレファスに判決を言い渡す。ニセ聖女の#魔力__ドク__#にかかり、回復の見込みのない。よって、本来であれば、死刑となるところを破門とし、国外追放とする。今日より7日後までに出国するように」


この判決に不服を申し立てたが、即時却下だった。このことを妻に話をすると


「わかったわ」


その一言だった。こうして俺、そして、妻と息子は慣れ親しんだこの国を離れることになった。もちろん、行き先はエターナル王国だった。


***


聖騎士団との戦いから一か月


私はいつものように治療に専念していた。すると、王子様が駆け込んできた。


「フリージア様、すぐに来てください」


「はい?」


有無を言わせずに治療室から連れ出された私


「あの~何処へいくのですか?」


「教会領との国境にドレファスが現れたんだ。今すぐ国境へ行く」


教会領との国境って、ここから半日はかかる場所じゃない。


「でしたらテレポーテーションしましょう」


「え?」


私は王子様の手をとったら、顔を赤くしている。あっ、かわいい。今はそれどころじゃないんだった。


「では、行きます」


「え?」


戸惑っている王子様を無視して呪文を唱えた。


『テレポーテーション』


一瞬で国境に到着、そのことに驚いている王子様、今はそれどころじゃない。


「王子様!早く」


「ああ」


あのドレファスが来たということはまた、一万の軍勢を引き連れているはず、慌てて国境の門の上に上がったら、どこにも軍勢がいない。


「あれ?」


すると下から王子様の声がした。


「おーい、そこで何をしている。ドレファスはここだ」


声がする所を見るとドレファス様と女性と青年の3人が立っていた。


***


結局、ドレファス様は今回の戦いの敗北の責任と異端者として破門、追放されたそうで、エターナルへ来たというのだ。


すると王子様は、私をじっと見つめた。


「何ですか?」


「これは、フリージア様の問題として、エターナル国としては関与しないことにします」


「はい?」


「つまり、フリージア様の使用人としてこの国に入国させるのであれば、見なかったことにします」


「んーと、ということは、私が勝手に連れて帰ればいいんだね」


「その通りです」


「わかりました」


こうして私がドレファス様達を連れて帰ることにした。


「ドレファス様、これから一旦、私の家に来てもらいます」


「ありがとうございます」


「それでは3人とも手を繋いで頂きますか?」


「こ…こうか?」


「はい」


奥様を中心に手を繋いでいたので、私は、ドレファス様と息子さんの手をとった。


「では、行きます」


『テレポーテーション』


こうして私は彼らを家に連れて帰ったんだけど、何が忘れているような、まあ、いいか?


丁度その頃、国境の検問所に一人残された王子様は、私が先に帰ったと聞いてこう呟いた。


「嘘だろう?」


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